奏でられたその音は、間違いなく部屋の中からしていた。
キッチンに誰かいるのだろうか?
様子を見に行くと、私の気配に気づいたのか、音はやんだ。
誰かがいるのは間違いないのだが、1Kの部屋の中、その姿を確認できずにいた。
危害を加えてくる様子はない。
しばらくほうっておこう。
突然だった。
男は姿をあらわした。
私の足にふっと触れたとき、その姿を確認した。
“こんな夜更けに、何の用?”
男は返事をしなかった。
“あなたをこの部屋に泊めるつもりはないわ。さあ、出て行ってちょうだい!!”
出て行くつもりはないらしい。
こんな時間に、部屋の外まで引っ張り出して追い払うのも面倒に思われた。
“まあ、いいわ。ベランダになら泊めてあげる”
男は礼も言わず、ベランダに落ち着くと再び音楽を奏でだした。
その夜、彼はずっと鳴き続けていた。

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