||| コソボ独立で再燃する民族抗争のデジャヴ |||
「コソボは誰のもの」アルバニア人とセルビア人、永遠の民族抗争
終わっていなかったコソボ紛争の火に油を注いだ、コソボ独立宣言
90年代後半ビル・クリントン大統領時代に、ユーゴスラビアのスロボダン・ミロスビッチ軍事独裁政権を解体し、一度は解決したかに見えたコソボ戦争の終結。しかしユーゴスラビア解体後スロベニア、クロアチア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、セルビア、コソボ自治州と7つの国家体制に分立したものの、古来仇敵のセルビア人とアルバニア人の間の民族抗争は、その後も深く静かに潜行していたようである。
今月17日のアルバニア人の独立宣言で、セルビア南部のコソボ自治州がセルビアから分立。独立国家コソボとして、米国を始め主要EU国家から国際的にも独立国家としての認証を受けた。しかしセルビアとしては、この急激な分立に激しく抵抗。それまではセルビアのEU加盟をゴールに、斬り捨て部分としてのコソボ独立もやむを得ないと腹をくくっていたセルビアのタディッチ大統領の親欧米派。もう一方で、セルビアの多数を占めるコソボ分立反対派を代表するコスチュニカ首相率いるナショナリストの右派政党。コソボの独立によって、セルビア自体がさらに真っ向から対立する親米・親露の2派に分裂してしまった。
今回のコソボ独立とその後のセルビアでの猛烈な反対運動に関しては、今後ますます米露関係を冷却化し「新冷戦体制」の最前線になるのではないかという危惧。またEUとロシアの経済戦争にもつながってゆくピボタルな変節点になるものと予測されるので、『米流時評』でも今後も継続して特集で紹介する予定である。他にも緊急のニュースが常時突発して上がってくるので、錯綜しながらではあるが連載していきたい。
【米国時間 2008年2月22日 『米流時評』ysbee 記】
トップ写真:21日夜コソボ独立に抗議して首都ベルグラードのギリシャ正教カテドラル周辺に集まったセルビア人
【追記】私が毎日トラックバックを交換しているブログの編集者諸氏もコソボ独立に関しては一筆書き下しており、どれも一読に値する気合いの入った記事ばかりです。特に藤田氏の中国・台湾観との比較論は非常にユニークで、視点を変えることでバルカン半島と東アジアの民族抗争の歴史と地政のダイナミズムが重なって面白かったです。この他にも多々参考になるエントリーがあったと思いますが、とりあえず相互リンクのネットワークから抜粋で、リンクと共に紹介する次第です。
▶藤田達男さんのブログ『賭人の独り言』
2/18 コソボ独立と“民族浄化”考
2/22 旧ユーゴと“中華”の悲惨な共通性
2/24 台湾を見捨てたコソボの悲哀
http://tafu.iza.ne.jp/blog/entry/492153/
▶茶絽主さんの『陸奥月旦抄』
2/15 コソボ自治州の独立宣言が迫る
2/17 コソボ独立の前夜
2/18 コソボ自治州は独立宣言を採択:念願の新共和国発足へ
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/1f0e59d6d8cea4e4b264b9f9ff434f84
▶三四郎さんの『三四郎の日々』
2/18 誇りの代償は
http://blog.goo.ne.jp/sugata346/e/040082ac0c93a5b93e3aa783f0ef778b
▶ヴォルフ少佐さんの『国際情勢評議会』
2/18 ミサイル防衛について意見を求む
http://wolf66.blog106.fc2.com/blog-entry-92.html
▶ろろさんの『日々是勉強』(TBをいただきました)
2/20 21世紀の「コソボの戦い」勝者は誰か?(1)アメリカか・ロシアか
2/25 21世紀の「コソボの戦い」勝者は誰か?(2)戦略論・地政学
http://roronotokoro.blog113.fc2.com/blog-entry-96.html
コソボ独立で再燃するセルビア人とアルバニア人の民族対立抗争
大使館職員を帰国させた米国
【前号「米国大使館襲撃事件でセルビア人デモ隊死亡」
http://beiryu2.exblog.jp/7345907
からの続き】セルビア・ベオグラード発
現地時間で21日木曜深夜の襲撃があって以来、セルビアの首都ベオグラードの米国大使館は門戸を難く閉ざしている。米国国務省のショーン・マコーミック広報官は、現在米国大使館に常駐しているのは保安要員と警備にあたる米海兵隊だけだと語った。同広報官の説明では、コンドリーザ・ライス国務長官も、ブッシュ大統領とともに6日間のアフリカ各国親善旅行を終えて米国へ戻る途中で、今回の米大使館襲撃事件の報せを受けたそうである。マコーミック広報官は「米国はセルビア政府に対して、現地の米国政府関係施設を厳重警護するよう要請した」と記者発表で語った。
17日独立宣言直後、米国大使館を警護するセルビア警察 しかし21日夜の群衆の襲撃にはひとたまりもなかった
10. セルビア在住米人に警告発令
国務省では、駐セルビア米国大使館の現地在留米人対応部門を、金曜から月曜まで閉鎖すると通知するとともに、現地在住のアメリカ人及び米人旅行者に対して、さらなる抗議活動が予測されるので、攻撃対象となる危険を避けるためにベオグラードの都心には近づかないように警告を発した。また米国とカナダ在住の米国人で、セルビア滞在中の米国市民の安否を気遣う家族は、フリーダイヤル888-407-4747まで問い合わせるよう呼びかけた。米国・カナダ以外からは、通常の担当窓口202-501-4444へ問い合わせるようにと警告している。
ベオグラード市内に繰り出した20万人のセルビア人デモ隊 各所で警察や軍の機動隊とのにらみ合いが発生した
11. 古代からの民族抗争の戦場コソボ
17日の独立宣言以前のコソボは人口の90%以上がアルバニア人で構成された自治区であり、99年のコソボ戦争終結以来ベオグラードのセルビア政府の統治下にはなかった。コソボ戦争では、アルバニア人に対するセルビア人の民族粛清を阻止しようと、NATO連合軍がコソボ地区のセルビア軍を44日間空襲したのは記憶に新しい。その掃討作戦が集結して以来、同地区に1万6千のNATO軍とKFOR連合軍が投下されて治安警護体制を敷き、国連がコソボを自治区として管理していた。
ギリシャ正教を国教とするセルビア人はイスラム教徒のアルバニア人とは民族的にも宗教的にも相容れない歴史をもつ
12.
コソボはセルビア建国の地
しかしセルビアは(旧コソボ自治区=新生コソボ共和国内では、セルビア人は全人口の10%にも満たない少数民族であるが)、コソボがセルビアから分岐して独立することを拒絶している。コソボは、古代からセルビア人が建国してこの地域を統治してきた、国家揺籃の祖国と看做されてきた特殊な思い入れのある土地だからである。

21日木曜、コソボ独立を支持する国家に抗議して首都ベオグラード中央の広場に集結した20万人のセルビア人大群衆
13. ベオグラードで20万人の抗議デモ
21日木曜の午前中の段階では、コソボ独立に抗議するためセルビアの首都ベオグラードに終結した群衆の数は警察側の観測でおよそ15万人と発表された。群衆は、赤・青・白に紋章の入ったセルビア国旗を打ち振り「Stop USA Terror/米国のテロ阻止」と大書されたバナーやプラカードを掲げて行進した。群衆の一部には、赤地に黒い鷲のマークのアルバニアの旗を燃やすグループもいた。
14. 文字数制限のため英文省略
平和的デモ行進から暴動へとエスカレート
米国大使館襲撃に加担した暴徒は主にセルビア人の若者で、その中の数人はスキーマスクやスカーフで顔を隠した者もいた。暴徒の一群は棒切れや金属の棒で大使館前のふたつのガードマンのチェックポイントを破壊した。デモ隊の先頭に立つ者が、大使館入口や窓から引き抜いた鉄柵や金属製の手すりで、メインドアをたたき壊して内部へと乱入した。
日中は平和的デモだったが夜になって一部の過激派が暴走、米国大使館ほか欧米関連施設を襲撃し焼き討ちした
15. 独立宣言以来連日のセルビア人デモ
17日の独立宣言以来、コソボ地区もまた不穏な状況が続いている。数百人のセルビア人が国境の検問所を襲撃したため、NATO軍はコソボ北部のセルビア国境に近いセルビア人居住区に対して警備の軍隊を増強し、国境部分を制圧せざるをえなかった。国境地帯でのセルビア人の暴動は、今後も長く尾を引くと危惧されているが、セルビア政府側では今回の一連の襲撃事件を、
コソボ分割を企てる一派の謀略だと非難している。
独立宣言の17日早朝コソボ戦争で死亡したと推測される行方不明者の写真が並ぶ「嘆きの壁」を訪れたアルバニア人
16. コソボ独立で急浮上するセルビア人のナショナリズム
アルバニア人の独立主義者は、98年から99年にかけてセルビアからの分離独立戦争を闘ったが、その際に1万人のアルバニア人が戦死している。コソボ人口の大部分を占めるアルバニア人に取り巻かれてコソボ国内に住んでいるセルビア人居住区では、この地区の指導者がセルビア政府に対して、コソボ独立の実績を帳消しにしないと、この地区のセルビア人の生活を危機におとしいれる、と圧力をかけている。
セルビアの4分の1の北部を占めるコソボ自治区には1万6千のNATO軍が常駐 セルビアとの国境を警護する
17. 文字数制限のため英文省略
コソボ戦争再発への危惧

「北から南下して暴動を起こしたセルビア国民のセルビア人は、コソボ国内に住むセルビア人の子弟や生活を危機に陥れた。これは非常に悲痛な経験である。なぜなら我々の同胞がそうした恐怖の種をばらまいたのだから」コソボ国内のセルビア人居住区の指導者ラダ・トラジコビッチ氏は、一連の襲撃事件が起きた21日木曜、民営のセルビアのニュースエージェンシー「FoNet」のサイト上でこう語った。 [了]
【米国時間 2008年2月22日 『米流時評』ysbee 訳】
独立宣言後のセルビア人の暴動で焼き討ちにあったコソボ・セルビア間の国境検問所 国連軍の警察もお手上げ
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http://beiryu2.exblog.jp/7351428
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