(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第三十四弾です)
http://tek.jp/p/
日本人の「国の借金」に対する考えは異常そのものだ。いつでも、そしていくらでも日銀が国の借金を買い取ることができるのに、その事実をマスコミは隠し続ける。
昨日(2月26日)も朝日新聞に載った。「国の借金最高更新」なのだそうで昨年末で838.05兆円になったという。おまけに国民一人当たりに換算すると655万円余りになるという馬鹿なことも書いてある。
838兆円が多すぎるというなら、100円を1円(1新円)とするデノミをするとよい。そうすれば、838兆円は一夜にして8.38兆円に減り、655万円は、たった6.55万円になる。GDPも同時に減るから借金のGDP比は変わらないと言うかもしれない。
だったら、借金が多いというのでなく、始めから借金のGDP比が多いのだと言うべきだろうし、借金のGDP比が増えたかどうかを、まず見出しに書くべきだろう。昨年末の借金は832.26兆円だったから、増加率は0.72%で、GDPの増加率は0.8%だから、GDPのほうが増加率は大きい。ということは、借金のGDP比は0.08%だけ減っている。当然、借金のGDP比が減ったということを、見出しに書くべきだ。
借金のGDP比が減らないのは、経済政策の大失敗のためGDPが増えないためだ。OECD30カ国の中で日本が最低だが、その次に低いのがスイスの3.5%だ。もしも経済政策が大失敗ではなく、普通程度の失敗にまで改善し、日本がビリから2番目になるまで成長が加速したら、約2.7%だけ借金のGDP比を減らす事ができたはずである。あるいは、内閣府の試算(進路と戦略)に従えば、もし公共投資を5兆円増やしていたら、GDPが増加するために借金のGDP比は1.6%減っていたことになる。
経済モデルを使った計算が理解できないため、「国の借金」を、まるで魔物のように恐れている。私は朝日新聞に、記事が明らかに間違えていると何度も抗議しているが、昨年11月23日付朝刊の「国の借金」に関する間違えた記事に抗議したときは、朝日新聞部長代理の金光という人から手紙が来て、「ご指摘の内容については、編集局の担当部署に伝えました。貴重なご意見として、今後の取材や紙面づくりの参考にさせていただきます。」と書いてあったのに、間違いを繰り返している。
日銀が国債の一部を買い取れば、日本経済の没落を食い止めることができる。買い取ったお金は、国民に流れ、それが経済を活性化するからだ。しかしそれを阻んでいるのが日銀の自主規制だ。
日銀には「長期国債の保有は日銀券発行残高まで」という自主規制がある。一般の人で知っている人はほとんどいないし、マスコミの報道でも聞いたことがない。日銀に電話してこの自主規制について聞いたら、一般窓口の人は知らないと言い、もっと「詳しい人」に電話を回してくれたが、その人も知らなかった。その詳しい人が、議事録等を調べて数日かけて調べてくれたが、見つからなかったと電話をくれた。日本経済を衰退させている根本原因は日本人全員が知っておくべきだ。日銀の中の「詳しい人」までが知らないようでは、日本経済の将来が思いやられる。
なぜ日銀はそのような自主規制を行っているのか、昨年、質問主意書で滝議員が質問したときの安倍総理の答弁を引用しよう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
安倍総理:日本銀行の長期国債保有の在り方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄である。なお、日本銀行による長期国債の保有は、日本銀行の負債である日本銀行券の発行残高の範囲内で、安全確実な資産の保有として実施されているものであると承知している。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
残念ながら、逃げの答弁でこれでは何のことか分からない。最重要課題から逃げようとする姿勢はいただけない。
政府がこのような態度であれば、日本は貧乏になる一方だ。本音は、過去の「苦い経験」だ。つまり戦前戦費調達で国債を大量発行し日銀に引き受けさせ、それが悪性インフレを招いたという経験だ。それを繰り返さないという意味で財政法第5条は、日銀による直接の国債の引き受けを禁止している。
確かに度を超せば悪性インフレになるが、適度であれば、デフレ脱却の救世主になる。「適度」とは何かと言えば、計量経済学を駆使したシミュレーションが教えてくれる。直接の国債引き受けの必要はない。市場から適量の買い入れをすればよいだけである。
図で日銀券発行残高を示した。デフレ下では、お金はタンスにしまっておくだけで価値を増す。お金は流通しなくなってタンス預金がどんどん増える。そのため、日銀はお金を必要以上に発行しなければならなくなっている。日銀は保有する長期国債は、日銀券発行残高以下に抑えるという自主規制は全く意味がない。その自主規制のために日銀は、長期国債の保有が厳しく制限されていて、結果としてこれが財政を悪化させている。この自主規制が無くて、もっと多くの国債を日銀が保有すれば、国の借金の利払いは日銀を通して国庫に返るから、財政は大きく改善する。
2008年2月20日現在、日銀の保有長期国債は48.8兆円であるのに対し、日銀券発行残高は75.1兆円である。自主規制に従うと、あと26.3兆円しか長期国債を買うことができないし、これでは全く足りない。90年代に入ってから日銀券発行残高が増えたのは、デフレだったからである。景気が良くなれば、再び減ってくる。しかも最近は電子マネーが普及し始めているから、日銀券の必要性がどんどん薄れてくる。そうなるとこの自主規制の縛りはきつくなる一方であり、それを継続すると日銀は国債を売らなければならなくなり、国の利払いの回収率も下がり、国はどんどん貧乏になっていく。この問題を避けていたら、日本経済の復活はあり得ない。(小野盛司)
神州の泉