(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第四十弾です)
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今回は、なにやら難しそうなタイトルとなった。日銀総裁の選出で財務省出身の福井日銀副総裁をするかどうかで、与野党の一騎打ちの様相となった。ここで財政と金融の分離が争点となっている。何が問題なのかは、次のような例と比べればよく理解できる。
あるところに、母子家庭があった。母は非情であり異常であり、娘にろくに食事を与えず、娘は栄養失調になっていて、元気が無い。何をやってもうまくいかない。専門の医師が、この娘を診て、もっと食事を与えなければいけないと忠告した。しかし、この母親は言った。
どこの家でも(グローバリゼーション)娘にダイエットをやらしている。娘には食事制限をしていると主張し、ダイエット食品を買ってきたり、エアロビックスをやらせたり、ジョギングをやらせたり、医者の反対を押し切って、娘を他の家の女の子と同じよう扱っていたので、娘はいつもフラフラでやせ細っていた。
確かにどの家庭でも、可愛さからつい娘に食べ物を多く与え過ぎるので、油断するとすぐ肥満になり健康に悪いことは誰もがよく知っているから、ダイエットをさせている。
しかし、食事を満足に与えず、娘を栄養失調にしてしまったのは、この母子家庭しかいなかったのだ。非情な母親は、娘に勝手に食べさせないように、いつも冷蔵庫に鍵を掛けていて、この鍵を誰にも渡さなかった(この場合の母親の独立性=娘の食事量の裁量権)。
この例と日本経済がそっくりなのだ。
政府は非情であり、異常であり、国民にろくにお金を渡さなかったので、国民は経済活動が思うようにできずデフレ(栄養失調に相当)になり、経済に元気が無くなった。何をやってもうまくいかない。経済の専門家がアメリカからやってきて(バーナンキ、クライン、スティグリッツなど)、もっと国民にお金を与えなければいけないと忠告した。
しかし、日本政府は言った。どこの国でも財政規律や、財政と金融の独立性(ダイエットに相当)は守っていると主張し、世界を代表する経済学者の反対を押し切って国民からお金を奪い取る(増税、社会保険料値上げ、歳出削減など)ことばかり続けた。
しかもデフレ下では不適当な構造改革(エアロビックス、ジョギングなどに相当)まで強行した。その結果、日本経済はみるみるやせ細って行った。
確かに、どの国でも、つい国民のためにお金を使いすぎるので、油断するとすぐインフレが度を超してしまい、それが経済に悪いことは誰もがよく知っているから、財政規律や財政と金融の独立性を守ろうとしている。しかし、国民にお金を満足に与えず、経済をデフレ(栄養失調)にしてしまったのは、非情な日本政府だけだったのだ。
日銀は金庫に鍵を掛けていて、鍵を誰にも預けない(日銀の独立性)。日銀には巨大な金庫があり、いっぱいお金が入っている。鍵を開けて、手前にある小さな札束を持ち出すだけで、国の借金である800兆円など余裕で返せてしまうほどの、大変な金庫だ。霞ヶ関埋蔵金などとは比べものにならないほどのお金が入っている。このお金を適量に持ち出して、国民のために使えば、日本経済は現在のどん底状態から転じて、絶好調になり、ダイナミックな経済の躍進が再開する。
これでお分かりだろうか、どこの国でも、政府は国民の幸せを考える。だから、国民のためについお金を使いすぎてインフレになる傾向がある。それにストップを掛けるために、様々な工夫をしている。中央銀行をつくって、政府がお金を使いすぎるようなら、ストップをかけるようにしている。だから日本の中央銀行である日銀は政府・財務省が何と言おうと、お金の使いすぎでインフレになったときは、それを止めさせることができるような権限を持っていなければ存在価値が無いのだ。
日本政府は非情であり異常だ。できるだけ国民にお金を与えないようにすることばかり考えている。だから、デフレになる。こんな非情な政府は世界中に日本しかない。なぜ日銀は金庫にあるお金を出して(お金を刷って長期国債買い入れる)国の経済を立て直そうとしないのだろうか。日銀は言う。一度、金庫のお金を使い始めたら際限なく使い始めるから、インフレになって悪影響がでる。こんな馬鹿な話はないだろう。
娘が栄養失調で14年間も苦しんでいて、医者ももっと食べさせろと言っている。しかし、非情な母親は、一度冷蔵庫の鍵を開けて食べ始めたら、際限なく食べて、肥満になるから食べさせないと言っている。こんな母親がいたら、鬼のような残虐な母親だと誰もが思うだろう。金庫を開けたら最後、際限なくお金を使い続けてしまうような人間が政府・日銀に混じっているのであれば、彼らを追放すればよいだけだ。
デフレという怖い病気に罹っているときは、金庫の鍵を開け、適切な額のお金を国民に与えるということが、日銀に求められる絶対的な使命である。日銀がお金を直接国民に与えることはできない。そこで、一旦政府に与え、それを財政支出という形で国民に届ける。その意味で財政と金融は協調しなければならない。
14年間もデフレが続いているとき、日銀の独立性を掲げ、いつまでも金庫の鍵を閉ざしていたのでは、日本経済は破滅に向かうだけである。
それでは、次期日銀総裁に誰を推薦するかだが、それには候補者全員を、「あなたはデフレ脱却のために何をしますか」という質問に答えさせることだ。彼らがこの質問に対して、『日銀の金庫を開ける(長期国債を買う)』と言ったら、合格である。しかし、残念ながら日本では、そういう質問をすること自体がタブーになっているし、答えることもタブーになっている。
日本人は日銀の金庫を開けると神のたたりがあると99.9%までの人が信じているのだろう。私は、この迷信から人を解放し、マクロ経済モデル使用のシミュレーションで得られた結果に基づいた政策決定へと転換させるために長年活動を続けている。日本人が一刻も早く目を覚まさないと、日本は際限なく貧乏な国になってしまうからだ。
新聞を読むと、伊藤隆敏氏はインフレターゲット論が持論となっている。インフレ率を適正レベルにするということはデフレ脱却ということだから、素晴らしいことだ。しかし問題はどうやってそれを実現するのかということだ。
小泉前首相も首相在任中にデフレ脱却を実現すると約束しながら、増税や歳出削減というデフレ脱却とは逆行する政策を行い、結局デフレ脱却ができなかった。
栄養失調の娘に、栄養失調をなおすと言いながら、食事制限を厳格に行い、結局栄養失調はなおらなかったという例と同じだ。なぜ医者の指示に従わないか。
世界を代表する経済の専門家は「日銀の金庫を開けろ(お金を刷って長期国債を買え)」と主張している。例えばバーナンキ現FRB議長は2002年、日本にやって来た。
田中秀臣著の『バーナンキ 世界経済の新皇帝』の10頁から引用しよう。彼は日本銀行の政策を決める幹部たち(日銀総裁を含めた政策審議委員たち)をこう評した。「一人を除いてみんなジャンク(くず)だ!」。
さらに日本銀行の常道を逸した稚拙な経済政策を評して「日銀はデフレを退治するために(紙幣をどんどん刷って、それで)ケチャップでも買え)」と辛辣な批判をおこなったのである。
デフレ問題の世界的権威であるバーナンキ氏が激怒したのがお分かりだろうか。日本がデフレから脱却するには、日銀がお金を刷って使うしかない。それを拒否する日銀に怒りが爆発したのだ。
もちろん、国債でなくてもケチャップでも何でもよいから買えば、お金が出ていく。実際にケチャップを買えという意味では無いが、皮肉ってそういう表現になったのだろう。
栄養失調の娘を回復させるには、食事制限でもなく、ダイエットでもなく、エアロビックスでもなく、ジョギングでもない。もっと食事を食べさせればよいのだ。
デフレから脱却するには、歳出削減でもなく、消費税増税でもなく、社会保険料の値上げでもない。日銀がお金を刷って、それで国債を買い、そのお金で政府が国民のために使えばよいのだ。
神州の泉