「大相場の様相呈す東京株式」
あまたの好材料が優勢/当面はなお上値追い賛成か
経済ジャーナリスト 尾関 通允・世界日報掲載許可
リストラの成果で明るい展望
東京株式市場が大相場展開の様相を帯び始めている。株式は、いうまでもなく不確定利
付で元本保証のない有価証券だから、好悪さまざまな諸要因―材料―に対して、ときに
は敏感に反応する。予測外の事件の突発で下げ場面に突入することも、ないではない。
それだけに、断定的な見方は慎まなければならず、先行きは不確実との留保条件を付け
ざるを得ないが、現況から考える限りは、強気優勢・上げ賛成の情勢と判断していいだ
ろう。
株価押し上げの要因が、とにかく、いくつも目につく。市場を取り巻く環境条件は、明
らかに買い方に有利なものが多い。主なものを拾うと
第一は、なんといっても日本経済の将来展望が明るくなってきていることで、これが、
市場での強気優位の基盤になっていることは、全く疑いない。換言すれば、証券取引所
上場企業の収益確保を脅かすほどの経済情勢がやってくるとの不安の予感は、とりあえ
ずは小さくなっている。すなわち、企業収益は少なくも当面は順調との期待感が強い。
第二に、その企業収益は、リストラの成果で著しく改善したのに加え、これからは、い
わゆる守りの経営から攻めの経営に軸足を移す企業が増えて、そうなれば配当支払い能
力もさらに増大しようとの希望が底流として存在する。常にそうだということではない
のだが、株価は企業収益状況の変化を先取りして変動することが、必ずしもまれではな
い。それが、先のバブル破裂後の長期低迷から日本経済が立ち直り企業収益の改善が進
む過程では、企業収益の好転に対し株価の回復は少なくも一年以上は立ち遅れた――そ
ういっていい。近況は、その遅れを取り戻しつつある段階だろうから、収益がさらに伸
びるなら株価も上伸していくとみるのが、順当なところだろう。
外人投資家の積極買いが契機
第三に、外人投資家――もちろん機関投資家も含む――の果たした役割が大きい。単に
大きいだけではない。日本経済の長期低迷からの基調的な脱出・企業収益の顕著な好転
・それに対する株価の立ち遅れ――この関係に、いち早く着目し、日本の株価に出遅れ
感ありとして、積極的に買いを仕掛けたのが、実は外人投資家だった。
それには、有力な支援材料があったことも見逃せない。周知の通りの異例中の異例のゼ
ロ金利の異常極まる長期化と、対照的な米国の金利上昇、それに伴う内外金利差の拡大、
これが、本邦投資資金の対外流出を加速して、大方のエコノミストらの予告とはまさに
裏腹に、円の対ドル交換レートが目にみえて低落した。外人投資家には、ただでさえ出
遅れ感のある日本の株価が、そのため、一段と割安に映ることになった。
しかも、予感としては、日本の景気はまだ若いというべきなのと対比して米国の経済成
長のテンポはいずれ鈍り、金利差の縮小から円安修正の局面も少なからずあり得よう。
そうなれば、株と外貨売買の双方で利益を手にできる。外人投資家が対日株式投資でな
おしばらくは強気で臨める理由の一つになっていることは、疑いあるまい。
これらに加え、発行企業の側としても、株価上昇賛成の立場だというべきだろう。株価
の上昇と高値の維持が敵対的買収への対抗力になること、銀行借り入れへの依存度を低
くとどめたい傾向が広がっていること――などを、指摘できよう。高収益を背景に株主
への配当支払い能力ないし支払い余力にゆとりができてきたことも、もとより、株高を
側面から促す役割を演じている。配当増の企業は、現実に増加している。
熱狂場面に突入したなら売り
以上、ここ数カ月来の株高刺激促進要因の主なものを拾い上げてみた。無論、光り輝い
てみえる経済現象が何がしかの影と道連れになっている事例は、決して希有(けう)で
はない。目下のところ、東京株式は強気優勢・上げ賛成の情勢ながら、状況いかんでそ
れを阻む力になりかねない要因も、他方には厳存する。例示すれば、米国の景況足踏み
とドル安、エネルギーコストの増勢がもたらす国際経済への抑圧効果、日本の国内では
政府の増税と財政支出抑制による景況へのマイナスなど、いずれも軽視しかねる。
しかし、それらをひっくるめての総合判断では、東京株式の上値追いの余地を渋く見積
もるべき理由は乏しいのではないか――筆者は、現況をそう認識している。ただし、相
場は一本調子で動くものではなく、むしろ何回も調整を経由する方が健全なのは経験則
からしていえることで、一本調子の棒上げなら、ひとまず売って様子をみる冷静さが肝
要、大衆買い殺到の熱狂相場なら、そこでは、売って出たい。
大手金融機関は、改めて投資機関の性格を濃くしようとしてもいる。それもあって、現
時点では強気でいいのではないだろうか。
Kenzo Yamaoka