後期高齢者医療費の抑制は日本経済にマイナス

2008年3月26日、東京のアルカディア市ヶ谷(元の私学会館)で行われた宍戸駿太郎先生の講演で配布された資料の写真。先生は官庁エコノミストとして活躍され、ロシアで生まれアメリカで活躍したレオンチェフを記念する国際レオンチェフ賞を受賞されるなど、計量経済学の権威。
2006年6月、小泉内閣の構造改革の総仕上げとして「高齢者の医療の確保に関する法律」が与党単独による強行採決で成立した。
2008年4月からスタートした後期高齢者医療制度は、この法律の医療費適正化計画の一環として位置づけられ、財政支出を抑えるために医療費の伸びを削減しようとするものだ。
1980年代から叫ばれてきた構造改革は海外依存型から内需主体の経済構造に転換することであった。しかし、小泉内閣の構造改革は目標をすり替えて規制緩和を前面に押し出すことに専念しただけの経済無策の結果、経済構造は海外依存型に戻ってしまった。
この結果、日本の国民総生産は世界から立ち遅れ、国も地方も歳入不足という事態に陥っている。しかも、デフレ状態から脱却できないにもかかわらず収支均衡財政を目指してきたため、何年経っても財政事情は好転していない。
このような悲惨な事態を招いた原因は小泉内閣が金科玉条にしてきた内閣府の計量経済モデルにある。このモデルは、方程式数が貧弱で数年先しか予測ができないうえに、財政出動をすると金利が暴騰して国民総生産が伸びないという結論が出るように工夫されている。
常識では、医療費が増大すれば国民総生産を押し上げ、財政収入も増大するはずなのに、このモデルによれば財政赤字が膨らむという結論が導き出されてしまうのであろう。
この結果、高齢化が進むと医療費が増大する。それに伴って財政負担が増大するから、今のうちに医療費の伸びを抑えておくという発想で作られたのが、2005年の医療費適正化計画であり、その中心となるのが後期高齢者医療制度にほかならない。
ところが、宍戸駿太郎先生が構築してきた DEMIOS という計量経済モデルは方程式数が4000本(アメリカ政府のモデルと同程度の信頼度の方程式数)の日米共同型モデルで長期予測ができる。
このモデルによれば、政府医療保険支出の増大は GDP を引き上げる効果が大きく、財政支出の7年後には公共投資よりも大きな効果が出ると試算されている。
宍戸駿太郎先生は、
2008年3月26日、東京で行った講演で、今の日本は集団催眠にかかっている。すなわち、
@人口の減少により投資が過剰になる、
A生産能力の限界がありインフレ加熱の恐れが高い、
B赤字財政の累積で財政出動は金利の暴騰が必至、
という3つの催眠現象である。
人口の減少も人口問題研究所の思い込みで、出生率は雇用環境・住宅事情と医療・福祉・育児政策次第で好転するのは世界が経験している歴史だと指摘。
後期高齢者医療制度は小泉内閣の時代に催眠術にかかった情況で作られたもので、今こそ目を覚まして考え直す時期ではないでしょうか。
滝まこと