(※日本経済復活の会 会長 小野盛司氏の記事、第十四弾です)
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かつて昭和恐慌の際、デフレ脱却のために高橋是清蔵相は国債を日本銀行に直接買わせる替わりに資金を手に入れ、それで景気対策を行い大成功を収めた。なぜ再びその方法でデフレ脱却を行わないのかというと、一度それを行うと、歯止めが掛からないようになり、悪性のインフレに陥るだろうと考えているからである。そのために、国会の承認が無い限り国債の日銀引き受けは財政法で禁止されている。しかし、日銀が国債を市中から買い、それと同額の国債を国が売り、それによって手に入れた資金で景気対策をやれば、日銀の国債引き受けと同じ事になる。しかし、その方法も日銀の定めた自主ルールによって不可能となっている。自主ルールとは日銀の保有する長期国債は日銀券発行残高を上限とするというもの。何の意味もない自主規制であり、この自主規制によって日本経済の大停滞が引き起こされていると言っても過言ではない。
日銀のホームページから引用する2008年1月5日現在の日銀券発行残高は79.8兆円だから、これだけしか通貨発行は許しませんという自主規制だ。現在日銀が保有している長期国債は51.5兆円だから、この自主規制を尊重すると通貨発行の余裕は28.3兆円しかない。資産デフレで土地だけで1200兆円以上が失われた日本で、その穴埋めをするには余りにも少ない額だ。政治家に景気対策を提案すると、もうこれ以上受け入れるところがないから、国債は発行できないと必ず言う。この自主規制を撤廃させることができれば、いくらでも発行できるのだから何とかできないものかと探りを入れてみる。滝実衆議院議員と相談し、質問主意書でこれに関して質問してみた。
その質問に対する平成十九年十二月十四日の福田総理の答弁書(内閣衆質一六八第二九四号)には、以下のように書かれていた。
「日本銀行の長期国債保有の在り方は、日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄である。なお、日本銀行による長期国債の保有は、日本銀行の負債である日本銀行券の発行残高の範囲内で、安全確実な資産の保有として実施されているものであると承知している。」
福田首相には、窮地の日本経済を救おうという意気込みは全く見られない。デフレを脱却させ経済を発展するためには、どの程度の成長通貨が必要かを議論する気持ちは全くないということである。このことを全く他人事のように「安全確実な資産の保有として実施されているものであると承知している。」などと述べている。自分には関係ないよと言いたいのだろう。しかし、日本経済を一流でなくしてしまい、デフレ脱却を不可能にしたこの自主規制を正当化するに十分な説明が、これでなされていると感じる人がいるだろうか。そもそも「日本銀行の長期国債保有の在り方」というものは、成長通貨をどの程度市中に流せばよいかを判断して決めるべきであり、「日本銀行がその資産及び負債の状況等を踏まえて決定すべき事柄」ではないはずだ。福田首相の答弁では、日本銀行が十分儲かれば、それでよいのであり、国の経済などどうなってもよいと述べているのだから、無責任極まりない。この問題に関する徹底追求は今後も続けるので、今後の国との質疑応答に関しては、日本経済復活の会のホームページを参照いただきたい。
ところで政府がこの問題に責任逃れをするのであれば、日本経済の復活の責任を持つのは誰なのか。日銀を追求すればよいのか。日銀はこの問題をどのように捉えているのかを知るために日銀に電話して聞いてみた。しかし、最初からつまずいた。なんと電話で聞いても、受付ではこの自主規制について日銀は知らないという。詳しい人に電話を回してくれた。しかしその「詳しい人」も、そんな自主規制を聞いたことがないという。そういうわけで、時間をかけて私がこの自主規制に関して説明する羽目になった。「そういうことでしたら、調べてみます」というのが「詳しい人」からの」回答であった。3日後、その人から電話が掛かってきた。理事会等の議事録も片っ端から調べたが、その自主規制に関しては何も書いてありませんでしたとのこと。20年近くの間、日本経済の大停滞を引き起こしている諸悪の根源であるこの自主規制が、いかに知られていないかを表す象徴的な出来事だった。経済成長に不可欠な成長通貨のつくりかたを、日銀が理解していないとは、日本とは何という国なのだろう。アメリカの経済学者は日本のこの仕組みを詳しく研究しているというのに。
しかし、この自主規制をつくった張本人に話すことができれば、言うことは分かっている。その本人に話すことができたら、「通貨発行に歯止めが掛からなくなったら、円の信用が落ちるから経済が成り立たなくなる。」ときっと言うだろう。ハイパーインフレになると言うかもしれない。しかし、先進国でハイパーインフレになっている国などどこにも無い。ハイパーインフレを防ぐには均衡財政と金利引き上げという強力なブレーキがあり簡単だ。円の信用というものは、日本経済の信用に等しい。適切な景気対策を行わないから、日本経済が一流でなくなり、そのお陰で、日本に投資する魅力が無くなり、お金が海外に流れて行ってしまっている。いわゆる円キャリートレードだ。これこそ円の信用低下である。円の信用を取り戻すには、十分な景気対策を行い、経済に活力を取り戻し、成長を加速し、投資家にとって日本が魅力的な市場にすることである。(小野盛司)