第二回映画紹介
「
アヒルと鴨のコインロッカー」(2006、日本)
少し前に予告編をちらっと見て少し興味を持ったのですが、
それからだいぶ経ってそんなことを忘れていたころ、
たまたまTSUTAYAでDVDを見かけたのでレンタルしてみました。
DVDの特典に収録されていた予告編を見て
改めて思ったのですが、予告編が非常に面白い。
予告編がつまらん映画っていうのも滅多にないけど、
この予告編は僕の心にズドキューンな仕上がり。
で、そういう場合は十中八九、
本編が予告編に負けてしまってるわけですが、
この作品はしっかりと両者が均衡に対峙できていたというか、
(僕の中で)予告編から予想される内容とは
かけ離れた本編になっていて、
しかしその本編はその本編ですごく楽しめました。
ストーリーが面白さの要となっているので
ストーリーの詳細についてはあえて割愛します。
原作を読んでストーリーを知っている人なんかは
もしかしたらこの映画を見ても
それほど楽しめないのかもしれない。
それほどストーリーに力があります。
予告編でわかるのは、
ある男の子(実は大学1年生)が
ある大人(実は男の子が越してきたアパートの隣人)に
本屋の強盗の手伝いをさせられてしまう、
っていうことと、
その男の子が主人公であるということと、
その事件によって
その男の子がどうのこうのなる的なプロット。
実際、そういう概要の映画だとも言えるけど、
違うと言えばまったく違う。
まず、その男の子だけが主人公ではないということ。
その男の子は
ドラえもんでいうドラえもんであって、
男の子の隣人が
ドラえもんでいうのび太なのです。
(性格での類似じゃなくて、重要性の類似)
そして、映画で語られているのは、
その事件によってどうなったかではなくて
どちらかというと
その事件が起きることとなった動機について。
男の子がどうなっていくか、
みたいな心理描写を中心とした重苦しい映画では
決してない。
むしろ心理描写のようなチマチマとしたものは
極力省いてある感じで、
もっとストーリーを語ることに重点が置いてある。
とりあえず、
予告編で少しドロッとした青春映画を期待した人は
その期待を裏切られること間違いなし。
まず青春映画ですらない。
普通に考えると、ストーリーはやや複雑。
男の子や隣人が実際に生きている現実と、
男の子が隣人やペットショップの店長から聞いた
彼らの過去の話のイメージと、
隣人が実際に回想する実際の過去と
描かれる世界が3つもあって、
その3つがそれぞれ交差している。
つまり、頭の中でわざわざその3つを
リンクさせなければ話が把握できない。
そのうえ、現実を生きている主要なキャラ3人のうち
隣人と店長の2人は
ミステリアスでしょっちゅう意味不明な発言をする。
しかも、娯楽大作っていう趣ではなくて
どことなくスノッブというか、
わかりやすいプロットすらをわかりにくく描こうとする
ミニシアター系の香りが漂う作品。
普通なら難解な映画になってしまう。
なのに、冒頭に書いたように、
ものすごくストーリーに力がある映画に仕上がっていて、
すなわち、ものすごくストーリーがわかりやすい。
わかりにくいストーリーを
わかりにくそうに描きながらも
実はとってもわかりやすい。
(僕が何を書いているのかはわかりにくいですが)
でも、それって一番、技術のいることだと思う。
それをやってのけているだけで
この映画はとてつもない傑作だと思う。
面白い映画です。
正直、この映画で泣ける人はそうそういないと思う。
そんな美しい話ではないし、
そもそもそんな仰々しい演出もなされていない。
メッセージ性もこじつけなければ皆無と言える。
と書けば、
インディージョーンズとか
バックトゥーザフューチャーみたいな、
観ている間の2時間のみ最高の楽しみが味わえるけど、
それを見たからといって
心に何かが残るわけではない薄っぺらい映画だと
(もちろんインディー〜とかは薄っぺらいから成り立っている傑作なのですよ)
勘違いされるかもしれません。
しかし、実際は、
見た後に確実に心に何かが残る。
その何かが何なのか、わからない。
その何かを探すために
また何度も映画を見直すと思う。
そんな作品でした。
オススメです。