今回紹介するのは
Twilight Of The Innocents(Ash,2007)です。
主観的…A
客観的…B(?)
必聴…End of the world
1992年、当時15歳だったティム・ウィーラー、
マーク・ハミルトン、リック・マックマーレイという3人の少年によって
イギリスは北アイルランドで結成されたAshは
(リック・マックマーレイは1学年だけ上級生)
結成以来、飛ぶ鳥を落とす勢いで人気を獲得していき、
1996年には若干19歳にして
1stフルアルバム「1977」を100万枚売り上げ、
1997年に4人目のメンバーで
紅一点となるギタリストのシャーロット・ハザリーが加入、
その後、ちょっとした過渡期を経験しつつ
2001年の3rdアルバム「Free all angels」は
インディーズレーベルからのリリースでありながらも
同週発売のジャネット・ジャクソンの新作を抑えて
チャート1位を獲得する快挙を成し遂げ、
彼らは「国民的バンド」という称号を受け取りました。
そんな大成功から3年後の2004年、
Ashは前作にあたる4thアルバム「Meltdowm」をドロップ。
「Meltdown」は、Nirvanaが「Nevermind」を制作したスタジオにて
フーファイターズらを手がけたプロデューサーを起用して
モダンなヘヴィーメタルサウンドを展開し
露骨なまでにアメリカ進出への意欲を
感じさせる仕上がりとなりました。
しかし、結果からいうと、
彼らのアメリカ進出は失敗に終わりました。
イギリス国内においても
「Meltdown」は十分黒字なセールスは収めたものの
メンバー自身が期待していたほどの成功には及ばず、
それに関して彼らは相当のショックを受けたそうです。
更に、これに追い討ちをかけるかのように
フロントマンのティム・ウィーラーは
長年連れ添ってきた彼女との婚約を破棄されてしまい、
そして2006年の頭には
少なからずAshの人気を支えていたシャーロットが
バンドの脱退を表明。
シャーロットの脱退は「友好的なもの」だったそうですが、
しかしバンドにとっては間違いなく
(多くの面で)痛手となったことでしょう。
そのような境遇を経て生み出されることとなった
ニューアルバムは、
デビュー当初の3人体制により
アメリカはニューヨークの古びたスタジオで
ティム・ウィーラー自身をプロデューサーに迎え制作されました。
批判の目立つAshの最新作。
正直、ファンというかなり盲目的な立場である僕自身も
大方の批判意見には首を縦に振ってしまいます。
Ashというバンドの最大の魅力は
楽曲の異常なまでの質の高さに他なりませんでした。
2ndアルバム「Nuclear Sounds」を除けば
彼らのアルバムは曲の羅列に過ぎなかったにも関わらず
それでもそれらの作品群が常に高い評価を受けていたのは
単純に「ものすごく良い曲」が収録されていたからです。
しかし、この最新作「Twilight Of The Innocents」が
「ものすごく良い曲」の洪水なのかというと…。
もちろん良い曲ばかりです。
職人技としか言いようがないほど
安定した水準を見せ付けてくれています。
ただ、彼らにしては弱すぎる。
「Girl from Mards」「Burn Baby Burn」「Starcrossed」のような
(良し悪しは別として)
名曲と評しても過言ではない
圧倒的な説得力を持った楽曲が
今作には残念ながら見当たらないのです。
そこが非常に悲しいし、
だから批判意見が目立つのもわかってしまいます。
でも僕は「最高傑作」という
誇大じみた宣伝文句に納得しています。
前述したように、2ndアルバムを除く
彼らのオリジナルアルバムは
曲の寄せ集めでしかありませんでした。
巷では最高傑作と名高い「Free All Angels」にしても、
楽曲1つ1つは驚異的なまでの魅力を放っているのに
アルバムとして包括して評価すると
楽曲の高い魅力とは釣り合っていません。
逆にアルバムとしての統一感のある
2nd「Nuclear Sounds」は
作品としては非常に面白いながらも、
Ashにしては(←重要)どうも収録曲のレベルが低い。
言ってしまうならば、
Ashは優れたソングメーカーではあったものの
アルバムにおいては
決して水準の高いバンドではなかったのです。
そしてこの新作「Twilight of the Innocents」は、
アルバムとしての統一感があり、
多少竜頭蛇尾な印象も受けますが
一応のところ全体的に楽曲も充実していて、
それ故に一部始終を味わった後には感動が生まれ
完成度の高い「アルバム」となっています。
そういう意味で僕はこれが
Ashの最高傑作だとは思っていますが、
このアルバムがベストだと思っているのかというと
そういうわけでもなくて…。
まぁ扱き下ろしてしまっていますが、
やっぱりアルバムとしての完成度は高いわけだし
最終的にいきつく感想は「好き」だったりします。
ティム・ウィーラー自身が語っている通り
前作及び前々作はセールスを強く意識した作品だったのですが、
今作では「Meltdown」の商業的失敗など云々を経たことで
「セールス」というしがらみから抜け出していて、
そのため大きな変化を遂げています。
その変化を顕著に示す発言が
ライナーノーツに掲載されているので、
そのまま引用させていただきます。
「僕は純粋にロマンティックであることをやめて
(中略)もっとシリアスになった」とのこと。
本気なダサさを貫いていたAshが
ここにきてシリアスになったのです。
もちろんその変化は、Ashの魅力であったはずの
永遠の思春期とでも言うべき青臭さを
失ってしまったことを意味するのですが、
(「Twilight of the Innocents」というタイトルが意味するのもおそらくその変化のことでしょう)
決してそれは退化なんかではなく、
進化のための変化なのです。
3人の奏でる音を軸としながらも
電子音やストリングスを大々的に用いて
とにかく作りこまれたサウンドは
以前の彼らには有り得なかったし
以前の彼らには作れなかったことでしょう。
そして歌詞の変化にも要注目。
以前のアホ丸出しな歌詞とは全く違います。
(「Princess Six」みたいなスゴいのもあるけど)
それでいながらも、
ポップでありながらベタすぎない
絶妙な具合のメロディーセンスや
聴き応えのあるギターフレーズとグルーヴ感といった
残すべきものはしっかりと残していて、
本当にファンとしては嬉しい限り。
そのような意欲的な進化によって
こういうすばらしいアルバムが生まれたと同時に、
通俗性が薄れてしまったため
最初に述べたように普遍的な説得力のある楽曲が
みられなくなってしまったわけですが、
やはりファンとしてはこの変化を支持するべきなんでしょうし、
ファンなんかじゃなくても
十分に楽しめるアルバムであることを保障します。
ファンなだけに書きたいことが多すぎて
雑多なわかりにくい文章になってしまいましたが、
文字数の問題上、
↓の記事にとりあえず全曲紹介を載せてみました。