2007/2/14
「何を書いてるの?」
彼女が僕のPCを覗き込んだ
「いや・・両親の思い出をね
あの二人の事をね 書きたくってさ」
「お母さんの?」
「いや、両親。母さんから聞いた話に
俺の想像だけど きっとこうだったろうなっていう
そんな思いを付け足して」
「いっつも話してくれた話は 素敵だったものね」
「うん。マザコンだって言われるかもしれないけど
やっぱり母さんは俺の最強の教科書だった気がするよ」
「あら。私、そんなこと言わないわよ。
だって、貴方のお母さん、いつもいつも
本当の娘以上に私を大事にして
そして素敵な恋物語を聞かせてくれたんだもの」
「そうなんだ。母さん、父さんの話をする時だけは
いつも遠くを見ながら幸せそうに微笑んでたもんな」
「うん、その横顔が綺麗で好きだったなぁ・・・」
「普通嫁と姑って仲悪いって言うけどな」
「嫁じゃなく娘として本気で受け止めてくれたから
それに 今こうしていられるのも
あの日 お母さんが背中を押してくれたおかげだもの」
「そっか・・・。
母さんの事って本当に「嫌い」って言われた事聞いたことないな」
「言う人いるのかしら。
いつも朗らかだったし。
優しくて 温かくて 本当に優しい人だったもの」
「俺は息子だから反抗はしたけどね」
「でも仲の良い親子だったじゃない。
ヤキモチ焼きそうなぐらい分かり合ってて」
「そう?」
「実はね。うふふ。」
そう言って 彼女が笑った
いつしか僕は 彼女への想いを歌にして
相変わらず ここで歌を唄いながら 生きていけてる
母さんが残してくれたものといえば
お金とか 名誉とか 地位とか 自由じゃなくて
「愛する事」
「信じる事」
「想い続ける事」
そんな目に見えないけど 一番大事なモノだと想う。
母さんが残した店は 僕がオーナーとして
マスターが紹介してくれた人に任せて残している。
そこにはマスターが一枚だけ持っていた
父さんと母さんが手を繋いで並んで笑ってて
俺が母さんのお腹の中に居る
たった一枚の家族写真を飾っている。
「彼女に見せたら きっと 悲しみを深くすると思って」
そう言って僕にだけ見せてくれた写真だ。
きっと母さんが見たらマスターの言うとおり
嬉しさと同じくぐらい悲しみが増えた写真だと思う。
母さん 父さんには会えた?
父さん ちゃんと母さんを抱き締められた?
もう二人は 離れちゃいけないよ
もう二人を 誰も引き離せないよ
俺を この世に送り出してくれて 本当にありがとう。
二人の子供として 生まれてこれて良かったよ。
あの写真と同じポーズで 俺らも写真撮ろうかな。
そして玄関に 母さん達の写真と並べて
家族が増えた証を 飾るんだ。
「何微笑んでるの?」
「いや 俺って文章下手だなぁ・・とか
読み返して 凹んでるんだよ」
「そんな風には見えないけど?」
「あのさ この本のタイトル何が良いと思う??」
「ん〜・・・・・・・そうね・・・・・・貴方は?」
「そうだな〜・・・・・二人の本だから・・・」
「きっと 考えているタイトルは一緒だと思うわ」
「そっか 同じかな」
「うん きっと 同じ」
「じゃぁ いっせーのぉせ!で言おうぜ」
「いいわよ じゃぁ 言うわよ」
「いっせーのぉせ!」
『MOON HEARTS』
「ほら 一緒だったでしょ?」
「うん 一緒だったね」
僕らは微笑みながら 見つめあった
二人が共に過ごせなかった 家族としての時間を
二人にいつか 聞いてもらえるように
二人の 足あとを 俺が 書きとめるよ。
母さんが 父さんと奏で続けて名づけた
あの店の名前と同じ名前。
―MOON HEARTS―
ありがとう。
父さん。
母さん。
そして君。
きっと この街で 誰かが口ずさんでるよ
二人が 与えてくれた
真実の 愛の歌。
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