今回ご紹介するのは
Guilt Show(The Get Up Kids,2004)
試聴
客観的…A(?)
主観的…B
必聴…"How Long is Too Long"初期の彼らを彷彿させる名曲。
ゲットアップキッズは1994年に
アメリカはカンザスにて結成されたロックバンド。
1997年には1stアルバム「Four Minute Mile」を発表、
当時は新手のパンクジャンルであった
エモを専攻した彼らのサウンドは
一部で大きな注目を集めました。
翌年、メンバーにキーボードが加わり5人編成に。
1999年には、今ではエモのバイブルとなっている
2nd「Something to write home about」をリリース。
こちらは商業的な意味も含めて
(インディーズとしては)大成功を収めます。
そして2002年に満を持して今回紹介する3rdアルバム
「On a wire」をドロップ。
前作の延長線上の作品を発表すれば
第2のグリーンデイや
第2のウィーザーになれたであろう彼らですが、
その3rdアルバムは
そんな世間の期待を裏切る
パンク色の薄いこじんまりとした雰囲気に仕上げられ、
新たなファン層を獲得した一方で
大ブレイクへの道を自ら閉ざしてしまうことにも。
それから2年を経てリリースされた4thアルバムが
今回紹介する「Guilt Show」です。
プロデューサーには初期から彼らの作品に携わっている
エド・ローズを起用し、
録音はバンド名義で購入したスタジオで行われたそうで、
おそらく彼らがやりたいことをやって
作り上げた1枚なのでしょう。
大幅な路線変更によって
賛否両論が分かれていた前作に対して、
今作も初期とは明らかに異なった趣向の作品ながらも
大方、好評で迎え入れられています。
残念ながらゲットアップキッズは
このアルバムを最後に解散してしまいましたが
今なお彼らは根強い人気を誇っています。
何度か書いていますが、
彼らの2nd「Something to write home about」は
僕にとって5本の指に入るほどの名盤です。
別にエモというジャンルが特別に好きなわけではないけど、
あのアルバム全編に漂う雰囲気(つまりエモの世界)は
他に例えようがないほど切なくて心地良い。
3rd「On a Wire」はメンバー自身が
あえて2ndとの差別化を図ったかのような作品で、
どことなく違和感を感じさせはしましたが、
しかし、あれはあれで、
2ndには敵わなくとも恐ろしいほどの傑作でした。
そして今回紹介する4thアルバム「Guilt Show」ですが、
まず感じるのは、わけのわからん表現になりますが、
非常に音質がポップ。
これまでは(おそらく意図的に)
ローファイっぽい少し粗めの音質でしたが、
今作はシンプルプランとかオールアメリカンリジェクツとか
そこらへんを感じさせる、
無難な程度にラウドなギターの音を主軸とした
非常にクリアな音質になっています。
というわけで、楽曲自体も
今までになくポップな印象。
もちろんこれまでもポップだったわけですが、
なんていうのか、この作品のそれは
非常に通俗的なポップさ。
(まぁ最初から通俗的なバンドだとは思うけど)
前作では2ndの大成功への世間の反応に対する
反抗心が見え隠れしていましたが、
今作ではそういうつまらない意地は捨てて
純粋に良い曲を作ることに専念した、
という感じでしょうか。
つまり、このアルバムでのゲットアップキッズは
巷に氾濫している若者向けのポップロックバンドたちと
同じ土俵に立っているわけです。
ただ、ポップセンスは突出しているし、
ありきたりなことをやっていながらも
決してありきたりに感じさせない強さがあります。
だから、この手のバンドを毛嫌いしている方でも
嫌いにはならないはず。
で、申し訳程度に
こまっしゃくれたアレンジも施されているのですが、
正直、あれは逆効果だったと思う。
変な武器を使わずとも
十分な名曲を作りあげられるのに、
どうしてわざわざ―、っていう感じ。
ジュディマリみたいに
その「こまっしゃくれ」感覚を
徹底したならそれもそれで面白かったと思うけど、
この作品においては、
ものすごく通俗的な曲が作りたいのか
ものすごく意地悪な曲が作りたいのか
スタンスがはっきりしなくて
聞いていてすごくもどかしくなる箇所がちらほら。
その極め付けがラスト2曲。
ポストロック的なアプローチがみられる
少し実験的な長尺で
曲としては悪くないのですが、
明らかにアルバムの雰囲気からは浮いてるし
これをラストに持ってくるのはどうなんでしょう。
「Sympathy」で迎える素晴らしいクライマックスも
台なしになっています。
ラスト2曲さえなければ主観評価もAにしていました。
とりあえず全曲紹介に移ります。
1.Man of Conviction
前作ではありえなかったようなアップチューン。同じメロディーを反復しているだけですが、1分半という短さもあって、飽きさせない。やはりこのバンドの醍醐味はこういう曲なのかなぁと思います。
2.The One You Want
どっかで聴いたことあるなぁ、とも受け取れるけど、でもすごく魅力的。この人たちのポップセンスは職人的ですね。終盤のギターソロも聴きどころ。
3.Never Be Alone
こじんまりとしたナンバーで前作を彷彿させます。終盤でしっかりとドラマチックに盛り上げてくれるところが嬉しいです。
4.Wouldn't Believe It
シングル。とにかくサビが強力。彼らの数ある名曲の中でもキャッチャーさは随一ではないでしょうか。息もつかせない、と表現するのは似合わないかもしれませんが、そういう無駄のない仕上がり。ラスト30秒のインストは意味不明ですが。
5.Holy Roman
インパクトはないものの、気づけば頭の中で流れていたりするくらい何気に耳に残る1曲。「Wouldn't Believe It」のような、しらじらしいほどのシングル曲からこういう曲まで作れるセンスは希有だし、そういう意味でも彼らの解散は残念です。
6.Marty Me
シングル。垢ぬけているポップソングなのですが、しかし、どことなく青臭くて切ない。良い曲です。
7.How Long Is Too Long
名曲「Holiday」を彷彿させる疾走感と切なさ。これを聴かずに死ぬのは惜しい、とまではいかないけど、聴けてよかったなぁと思えることは確か。2分半という短さと、それに似合った気持ちよさと、そうとは思えない広がり。最高です。
8.Sick in Her Skin
今までの彼らには(おそらく)なかった実験的な曲。中盤からなんとなくプログレッシブな香りがしてきます。個人的には、さっきも書いたけど、こういう曲は省いてわかりやすいポップソングの羅列にしてほしかったわけだけど、これはこれで素敵なのも事実でしょう。
9.In Your Sea
ものすごく短く感じるけど何気に3分あるんですね。3分は短いだろ、と思う方もいるかもしれませんが、3分もオシッコが出続けたら怖いでしょ?だから3分は長いのです。まぁそういう曲です。
10.sympathy
おそらくアルバム中で最も人気の高いナンバー。アルバムのハイライトは間違いなくこの曲。決してベタベタなバラードではないくせに、感動的。是非とも聴いてほしいと思えるような、そんな曲です。
11.The Dark Night of the Soul
この曲をもっと壮大にしてアルバムを締めくくればよかったのになぁ、と思ってるのは僕だけかもしれませんが、もっと壮大にしても十分面白くなる曲なはず。このバンド、全く取りざたにされていませんが、どの曲においてもギターのフレーズが半端なく魅力的。この曲も、サビのバックのギターなんかがかなりキャッチャー。
12.Is There a Way Out
さっきも書いたけど、浮いている。純粋なポップソングを11曲(ほぼ)立て続けに聴いたあとにこういう曲を聴くと、恐ろしいほど睡魔に襲われます。この曲はこの曲で素敵な曲であるだけに、残念です。長尺でボーカルにエフェクトがかかっていて、ピアノのフレーズが反復したりエレクトロニクス寄りのサウンドであったりと、ポストロック的で実験的ではあるけど、でも何気にメロディーはドがつくほどポップというのが味噌でしょう。
13.Conversation
アルバムを締めくくるのは全曲同様、ポストロックな仕上がりかつメロディー自体は極めてポップなナンバー。やっぱりこれがアルバムのトリっていうのは…。ギターリフはParanoid Androidのリフみたいで、なかなか耳に残るし、いわいる「静と動」のメリハリもカッコいいです。
なんか否定的な評になりましたが、すごくオススメだったりもします。