1. Blackest Eyes
2. Trains
3. Lips Of Ashes
4. The Sound Of Muzak
5. Gravity Eyelids
6. Wedding Nails
7. Prodigal
8. .3
9. The Creator Has A Mastertape
10. Heartattack In A Layby
11. Strip The Soul
12. Collapse The Light Into Earth
label / Cat. No.: WHD Entertainment (Lava/Atlantic) / IECP-10068
Lava/Atlanticという初のメジャー契約を得て2002年に発表された、
「DEADWING」の前作にあたるアルバム。「RECORDINGS」をカウントしなければオリジナルのスタジオ・フルレンスとしては通算7枚目(でいいのかな?)。先日、
DVD「ARRIVING SOMEWHERE...」と同日に日本盤が発売されました。なお、本作よりドラムがクリス・メイトランドから現メンバーのギャヴィン・ハリソンに交替しています。
初期はサイケデリックな色合いが強く、往年のPINK FLOYD、ロックのフィールドからはみ出したトリップ・ミュージックなどの音楽とも関連づけが可能なユニットだったPTは、4作目「SIGNIFY」よりロック・バンドとしての体裁を強く意識し始め、楽曲も比較的短めでカッチリした作りのものを志向するようになりました(もっとも1st「ON THE SUNDAY OF LIFE...」にはコンパクトでぶっ飛んだポップ曲がいくつか収録されていますが)。その「SIGNIFY」の次にリリースされた
「STUPID DREAM」は、初期から「SIGNIFY」までの特徴を保持しつつも、より普遍的なポップ/ロックのフィールドを明確に意識して作られた印象が見受けられます。それはその次の
「LIGHTBULB SUN」も同様です。
この「IN ABSENTIA」も普遍的なポップ/ロックのフィールドを意識したという点で確実に「STUPID DREAM」、「LIGHTBULB SUN」の延長線上にあると思います。ただし、その前2作にあったポップさがどこか牧歌的で温かみのあるものだったのに対し、本作のポップさは「洗練」が強く感じられるものに変化しています。この洗練されたポップさは"Blackest Eyes"、"The Sound Of Muzak"あたりの楽曲に特に顕著に現れているのではないかと思います。
また、スティーヴン・ウィルソン本人は「初めてバンド・サウンドとメタルを組み合わせた」と語っていますが、ここまでのPTにおいて(「DEADWING」を含めても?)もっともヘヴィなギター・サウンドが取り入れられています。ただし、「メタル」といっても、歪みのトーン、リフの作り方などは完全に'90年代以降のそれで、伝統的なヘヴィ・メタルよりもTOOLなど、オルタナティヴなヘヴィ・ロックのリフの方が近いと言えるようなものです。これは"Blackest Eyes"、"Gravity Eyelids"、"Wedding Nails"、"The Creator Has A Mastertape"、"Strip The Soul"あたりに顕著な部分でしょうか。
さらに、アルバム全体の色合いを決定づけているのが、アートワークの色調そのままの人工的で冷たい手触り。本作は音響派などと称されるいわゆるポスト・ロックとの類似性で語られることも多いみたいなんですが(RADIOHEAD、TORTOISE、MOGWAI、SIGUR ROS...から果てはMASSIVE ATTACKのようなアーティストまで引き合いに出されているようですね)、それはこの感触によるところが大きいのではないか?と思います。この人工的で冷たい手触りは"Lips Of Ashes"、"Gravity Eyelids"、".3"、"The Creator Has A Mastertape"、"Heartattack In A Layby"、"Strip The Soul"あたりに強く感じることができます。
もちろん、前2作に通ずるノスタルジックで牧歌的なポップ性も健在で、"Trains"、"Prodigal"にはその色合いが出ていますよね。
というわけで、強い洗練と人工的で冷たい手触りという点で非常に統一感のあるアルバムだと思いますが、アルバムを構成する楽曲のスタイルは多岐に至っていることから、やはりこのバンドのキーワードである「多様性」は本作にも強く感じられます。しかも、向いている方向は「DEADWING」とは明らかに違うし、その点でもバンドの多様性を理解するにはもってこいでしょう。また、リスナーの嗜好によっては「DEADWING」よりも強くアピールするケースもあるのではないかと考えます(メタラーにはやはり「DEADWING」でしょうが、いわゆる「ロキノン系な人」には確実にコッチでしょう)。なので、単純に「名作『DEADWING』へ繋がるヘヴィ志向のきっかけとなったアルバム」みたいに、適当に片付けてしまうような捉え方は絶対にすべきではないでしょう。
最後に、本作収録の楽曲と同時期に制作されたアウトテイクを集めたEPとして「FUTILE」が存在し、長らく入手困難な状態にあったのですが、
Burning Shedでダウンロード販売が開始されています。タイトル・トラックの"Futile"は「ARRIVING SOMEWHERE...」ですっかりお馴染みになったと思いますが、個人的には"Trains"よりも良いと思う透明感あふれる"Drown With Me"、超ヘヴィなインスト"Orchidia"などなど、「なんでこれがアウトテイクに?」と思ってしまう良質な楽曲ばかりなので興味のある方は是非購入されてみてください。MP3だけでなくLossless(可逆圧縮形式)のFLACフォーマットでも販売されていますので。