東京の吉祥寺で見たこの映画は、気取らず、気負わず、実に品のいい映画だった。
地味なのにスト−リーの展開の面白さは、先をめくりたくなるコミックや絵本のようだ。
小説はとてもいいのだろうな、と思う。でも原作を知らずとも、このお話の面白さはじゅうぶん伝わって来る。
役者がこんなに自然に不思議な空気感を醸し出すのに驚いた。けっこうキャラの設定は奇をてらってるようなカンジなのに。
美しい風景や人物の気持ちも良いけれど、もう忘れ去られたような耽美という言葉が似合う情景がある。浅丘ルリ子の義姉の役である。
日本の大正浪漫の絵のムードを持つ彼女のたたずまい、台詞のないところの演技に、かえって秘めた情炎を感じた。
数学という、私にはおよそ縁のない世界、と思っていたものが原作と監督の演出でとても美しく神秘的な世界のように感じた。
久しぶりに、清々しく、気持ちのよい映画だった。
見た場所も吉祥寺で、なんとなくムードに適したような気もする。
帰りに飲んだハーブティに、いい気分が上乗せされたようだった。