なおとたいぞうは、昨年12月に結婚するにあたって、お互い条件を出し合っている。
その中の一つが、「子供はつくらない」だった。
別に、なおに子宮の病気があるというわけではない。「病気」といえば、心の病気の方だ。
4年近く仕事もできずに自宅療養に専念していたなおは、家事もまともにできないーーー結婚して2か月は
頑張ってやったのだが、その後、寝込んでしまった

ーーー。
よって、どうしても夫のたいぞうくんのフォローが不可欠なのだ。
そんな中で子供をつくったりしたら、家事のフォローに加えて、育児のフォロー。昼間はなお一人で子供の世話をして、精神的にもまいってしまうだろうから、夫婦共倒れになるおそれがある。
以上が、二人が子供をつくらない理由だ。
たいぞうが結婚したときに40歳をすぎていたことも理由の一つだ。彼が以前勤めていた会社は、56歳をすぎると給料がぐんと下がる。つまり、子供が成人するまでの十分な育児費用が得られないわけだ。
だが、なおは自分から夫にその条件を出したのに、結婚して2か月ほどたったとき、ぽつりと言った。
「・・・子供、つくりたいな・・・」
たいぞうは、
「あと半年間なおさんのその気持ちが変わらなかったら、子供をつくるのに協力するわ」
と、いたって冷静だった。
「女」という性の本能だろうか。自分は母親という役割にむかない。心の病気では、育児にいきづまって子供を殺しかねないことを恐れて、ピルまで毎月飲んで妊娠しないようにしていたのに、やはり愛する男性(ひと)の子供がいたら・・・と思ってしまう。
気持ちが不安定なときに、友人から「来年はママになります」というメールを受け取ったら、祝福する気持ちと、なんだか自分一人だけ置いて行かれたような孤独感を味わう。
以前、不妊治療をしていた友人がこう言っていた。
「不妊治療って、地獄だったわ。次は・・・って期待したらダメで、精神がどうにかなりそうだった」。
今、日本全国で不妊治療に取り組んでいるカップルはたくさんいるという。
なおはブログを再開するにあたって、「子供なし夫婦(夫婦二人)」というサブカテゴリーにも登録したのだが、そこにある雑誌の広告が掲載してあった。
「子供のいる生活。赤ちゃんがいても、働けます」
もしも、なおが不妊治療をしていたり、子供を真剣に欲しがっていたとしたら、この広告を見たら不愉快になってしまうだろう。
思わず、「日本ブログ村」に、「広告収入が大切といっても、どのサブカテゴリーにも同じ広告を掲載しないで下さい!!赴任治療に取り組んでいる方や、子供を望んでいる方がこの広告を見たら、きっと傷つくでしょう」と掲示板に書いてしまった。
ブログ村の村長さんからは、丁寧な回答がきた。
なおは、考えてしまう。
「自分のやったことは、間違いだったのだろうか。子供をつくらないと決めており、子供のいない生活も楽しいのに、不妊治療に取り組んでいる方や、子供を真剣に望んでいる方の代弁をするようなことをするなんて、かえってそういう方々を傷つけてしまったのだろうか」。