2010/9/17

待っていたイチイ  雑感

  ライブの打ち合わせに伺ったレストランでの面白い出会い。お客様のご夫妻が、木の笛の演奏家が来ていると云うことで会いに来てくださいました。様々な木の響きのお話をしていると、私のところにイチイの木があるから見にきませんかと云われました。

 お言葉に甘えて、ライブの打ち合わせの途中で出かけることになりました。お伺いすると、真っ先にアンモナイトの化石がいっぱいの小屋に案内されました。びっしり並んでいる削りかけの化石。珍しいものもいっぱい...。

 さらに別の小屋にも...色んな化石がいっぱいでした。最後はご自宅に、とっておきの化石が立派な棚に並んでました。その他にも、いろいろと珍しい物の発見が続きました。よかったらどうぞ..ということで大小3個の化石を頂きました。

 いよいよイチイの木があるところまで連れて行っていただき、老けてる部分はあるけれど立派なイチイとご対面できました。気に入った物を一枚選んで良いですよと言われ、素直にいただくことにしました。

 これまで使っていたイチイは、最初の出会いから随分経ちます。最初は、良かったら持って行って使ってみな..というスタートでした。ところが2度目に伺った時は、かなり高価な値段が付けられました。その材料もなくなって、3度目に訪ねた時は2度目の時の倍の価格に跳ね上がっていました。しかも切り分けると老けてる部分や日割れも多く、使える部分は少なくなっていました。

 倉庫にはまだまだ立派なイチイがありましたが、あんたには手の出せるような価格ではないからとのひとことで、終わりでした。この時、今後はここでイチイを求めることを断念しました。木をお金に換えて出来るだけたくさん儲けるという繋がりに自分を置くことはできないと感じたからです。

 生きて笛を作り続けられる間必要な最小限のものがあれば十分と考えて、笛の価格を決めて来ましたから、これ以上価格がつり上がってしまえば、イチイの笛をお渡しすることは難しいと判断したのです。時に、一般の木材の100倍とも言われるイチイですが、必要ならばその分だけどこかで出会えるだろうと感じていました。

 それからしばらくして、今回のイチイとの出会いがありました。それは、ある方からイチイのラブフルートを製作してほしいとの依頼を受けてから間もなくのことでした。待っていたかのように、イチイの木とそれを求める方との出会いが生まれたのでした。

 さらに今日の朝、ついにイチイのフルートを作ってもらうことにしますという方がやってきました。以前から、色々と考えて来たけれど、ついに決断となりました。

 どうやら、この流れからすると分けていただいたイチイの材料も、思いのほか早く全員旅立ってしまうかもしれません。成長がかなり遅く、丈夫で、美しく、気品のある深い響きは、それを必要とする方々のところへと手渡されていくことになるのでしょう。

 手を出せないような高価な価格で売り渡す人と、あっさりと手渡してくれた人。そしてイチイのラブフルートを求める人。木の価格も土地の価格も、その他もろもろの世界に見られるもとなのだと思いますが、どこか人間の行為には不可解な部分があるような気がします。
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2010/9/14

上富良野から旭川  雑感

上富良野「丘のテラス」でのライブ。美瑛の景色を楽しみながら向かった道のりは、秋空の美しさがいっぱいでした。十勝連山と起伏のある大地。目の前には、夢のようにいっぱい蝶が飛び交っていました。

 のんびりゆったりと流れる時間が心地よかった..。初めてお会いする方々と過ごした時間。笛や太鼓で繋がった全員参加の響きの交流は和やかでした。

 こんな丘で、ゆったり生きることもできるんだな..と感じている自分がいました。丁寧で心のこもった食事をいただきました。調理に現れる人柄。それがよ〜く伝わってきました。やさしい時間でした。

 それはそのままコンサートの雰囲気へと繋がり、やがて訪れた夕空の美しさと一つになって夜が来ました。

 この先はどうなっているのだろうとちょっぴり不安になるような山道を走って辿り着いた建物が今回の宿泊場所(メゾンドキミコ)でした。目覚めると木々に囲まれていました。朝もやの中に木々が浮かんで、緩やかな朝を迎えました。

 朝食のライ麦パンは絶品で、バナナを載せて、はちみつをかけていただきました。牧草の香りのする牛乳とゴーヤのサラダにコーヒー。若いご夫妻と赤ちゃんがいて、静かであったかい朝でした。

 そこから今度は当麻まで走り、さらに会場近くの素敵なお店で昼食兼打ち合わせでした。市民交流センター・木楽輪(きらりん)は木を贅沢に使った会場でした。ここでも初めてお会いする方がいっぱいでした。

 お互いを繋ぐのは木々たちとその響きでした。会場の雰囲気も顔ぶれも前日とは違い、別の風が流れました。

 旭川方面のコンサートは久しぶりでしたが、マイフルートを携えて来られた方々との交流も楽しめました。もう少しラブフルート仲間が現れたらワークショップも楽しめそうです。
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2010/9/6

見えない息で吹く  ラブフルート

 8月末は、 芦別のスターライトホテルでのコンサート。翌日は長沼の森のささやきのコンサート。次の週末は平岡公園でのコンサート。そして、この週末には上富良野、翌日は旭川とコンサートが続きます。さらに翌週も...。

 会場はそれそれ環境が違っていますから、ラブフルートはその場その場にふさわしい響きを求められます。これは、簡単なようで、なかなかデリケートなことなので、調整は微妙です。室内と屋外の違いは決定的ですが、室内でも響きの吸収度合いや反射度合いで、吹き手の感覚は随分違ってきます。

 音響機材によってある程度の調整は可能ですが、当然ながら限界があります。こういう様々な環境の中で演奏をしていくうちに、一体何が自分の響きなのか..自分は何をしているのか..立ち止まって考える必要があるのだと思います。

 そのためには、その場、その状況に相応しい呼吸の状態を感じ取る時間が大切だと思っています。自分の声や響きが違っていれば、当然話し方も、間合いも変化します。音の響きが、繊細な心の変化を生み出すことを知れば知るほど、その場で何が大切なのかを感じ取り、表現する自分の内面が問われます。

 音の響きのすべてを、呼吸で表現するのが笛ですから、吹き始めから吹き終わりまで自分のあり方が問われ続けます。手で叩いたり、つま弾いたり、擦ったりする楽器も、当然ながらその始まりや終わりには微妙な感覚が求められますから、難しさは変わらないのですが、命の中心にある呼吸そのもので表現することには独特の世界、視点があるように思います。

  呼吸は目に見えないし、身体の内部で何が起こっているのかよくわかっていないのです。肺に空気が入るとか、横隔膜が作用してという説明は可能ですが、実際問題として良く分からないことが起こっている気がするのです。そもそも、呼吸することで生きているというのが不思議でなりません。どうして、こんな風にして生きるようになっているでしょう...。

 そういうことは暇にまかせて思い巡らせるとして、呼吸は明らかに手や足のように園に見える動きとして捕らえることができません。手とり足とり伝えることが難しい世界です。自分でも見たことのない横隔膜のことなどを持ちだして理解しようとしているのです...。ラブフルートを吹くときに、毎回、真っ先に考えるのは、自分の呼吸の仕方はどこか違っていないだろうか..全身の繋がりと呼吸との関係を、どのくらい知っているのだろうか..ということです。

 これに加えて、吹き始めの呼吸、好き続けている時の呼吸、吹き終わりの呼吸。その微妙な揺らぎと自分自身の感覚との繋がりはどうなのか..。技術というより、自分は何をどう考え、感じているのかだとは思いますが...。

 吹くことと同時に、聴こえてくることや、そこに何かを感じることと自分自身との関係。さらに、その響きに触れる人たちのこともあります。こうして辿ってみると、まだまだじっくり深化させていないなと思うことがいっぱいです。この秋の夜長、どこまでこうした事柄を辿ることができるのでしょう..。ゆっくり楽しみながら過ごせますように...。

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2010/9/3

森のささやき・特設ステージ  ラブフルート

 このところの暑さで工房内の温度は軽く40度を越え47〜48度にまで上昇し、文字通り滝のように汗が流れ、1時間ちょっと作業しては外に出る。その繰り返しでした。そんなことがずっとなので、なかなか作業が進みません。とりわけ、ラブフルートのチューニング調整作業は完全にストップです。

 断熱材があるとはいえ、プレハブ作りですから夏の暑さは以前から相当厳しいのですが、今年はちょっと長引いています。結局は夕方になって涼しくなってからの深夜作業になるのですが、その頃には日中の暑さで体力が落ち気味で集中力が欠けて作業効率が悪い..。

 ライブの時も気温が高すぎてチューニングが厳しく、フルートのコンディションが今一つです。個人的に暑さは大丈夫ですが、ラブフルートの方が戸惑い気味です。本来は、チューニングして他の楽器と調和することなど考えていなかったフルートですから、いざ合わせるとなると四苦八苦です。

 つい先日の「森のささやき」ライブは、そのラブフルートの演奏のために大変な労力を払って作られた特設ステージでの演奏になりました。一頃流行ったツリーハウス風のステージは、なかなか新鮮でした。
木々に囲まれ、背後にはちょっとした沢があり、ロケーションはなかなかのものでした。

 この夏の暑さの中、厳しくつらい肉体労働をされたGさんの思いがいっぱいのステージは、それだけで心の中は感謝でいっぱいでした。なんとも心溢れるステージで演奏ができたことを嬉しく思っています。
Gさんの純粋で全力を注ぐことを惜しまない姿に触れながら幸せなライブが始まり、近隣のラブフルート仲間のゲスト演奏もあり、集まられた方々を喜ばせ、楽しませてくれました。

 ちょっと音を出すだけで精一杯ですから..と言っていたのに、皆さんそれなりにしっかりマイフルートを奏でていました。新鮮な手打ち蕎麦を頂き、美味しいコーヒーやフルーツパイも頂きました。

 ライブ中には、こちらで用意していたバードコールやカエルの声などが必要ないくらい、本物のカエルや虫や鳥たちが鳴き交わして、聴いていた方たちはちょっと戸惑うほど、ぴったり息の合った自然と混じり合う演奏になりました。

 ライブが終わって、片づけが済んだ頃には、エゾリスがやってきて好物のクルミをたっぷり食べていました。Gさんがある日昼寝をして目を覚ますと、目の前にリスがやってきた!と嬉しそうに話してくださいました。この日もかなり暑かったのですが、あったかい心に触れていると、外気の暑さをすっかり忘れていました。

 今回出来上がった特設会場は、おそらくGさんのマイフルート演奏のステージになるのだと思います。Gさんの奥さまの言葉を思い出します。吹き始めた頃は、うるさくて耐えられないのでラジオの音を大きくしてフルートが聴こえないようにしてたけれど、最近ではラジオを止めて、主人の笛の音を聴きたいな〜と思うようになりましたと、とても嬉しそうに話してくださいました。


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