2010/11/26

マイナスとプラス  雑感

  フルートの製作依頼があって、ようやく出来上がって、お知らせしても連絡がない、連絡がつかない。そんなことが、何度か続いたためでしょうか...。なかなか製作意欲が湧かない。今年は、そういう波が何度かあった気がします。まあ、単純に加齢のための自然現象、意欲低下かもしれません。

 製作したラブフルートが宙に浮く。それは金銭的な問題ではないのだと思います。KOCOMATSU建築や自宅内部の手直しなどが続いて、製作が遅れたこともあります。メディアが紹介してくださって、一気に注文がやってきたこともあるでしょう。

 じっくり、ちゃんと繋がりを持って、納得して取りかかる。そういうスタイルが、一時的に壊れたのだと思います。かといって、製作依頼を断るわけにはいきませんから、製作するのですが、その後がちょっと悲しくもあり、厳しくもある。

 精魂こめて製作して、応答もなく、無言で時が流れる。こういうことは、全くなかったわけではありませんが、10数年で一人か二人程度でした。それがわずか一年ほどで、何人も...。多分、経済的な状況が変化してしまったということもあるでしょうし、気持ちの変化もあるのだろうと思います。

 何か対策を取った方がという声もありましたが、具体的には考えていません。ラブレターが届いて、精一杯心をこめて返事を書いたけれど、何も返事がない。そういうこともある、そういう人もいると云ったところでしょう。

 一本のフルートを製作する時、それは単なる作業として処理されているわけではないので、依頼者との接点や相互の理解や認識が土台になっていないと形にならないのです。さらには、感じたり、理解できたことが具体的な響きになるまでの課題にも直面します。

 難しい注文では、一人のために平行して複数のフルートを手掛けながら絞り込むことも珍しくありません。或いは、樹種の特質を十分把握するためのプロセスも大切です。同じ樹種でも、産地や成長の仕方に違いがありますし、用いる部分によっても響きは随分と違ってきます。樹種によって、木が生かされる太さや長さ、本体の厚みも違ってきます。仕上げ方は当然、響きに影響します。

 そんな自問自答の末に完成したフルートが生き場をなくしてしまうのは、悲しくもありますが、せめてそれなりの事情や連絡があってほしいとは思います。

 こんな状況に対して、逆に事前にお支払いという方々もおられます。それはそれで、責任を果たすことと信頼されている事が一つになって流れていくのですが、不思議なものです。

 受け取っても支払いがあいまいになる方もいれば、受け取る前からお支払いくださる方もおられる。まるで、空から誰かが見ているようです。あんまり弱って作れなくならないように...減っていた製作依頼もちょっぴり回復傾向のようです。

 工房の壁面にいっぱいになっていた注文書がなくなりかけた頃、そういえばあいつにも餌をあげなくてはと餌台にヒマワリを置くように、だれかがヒマワリや脂身を運んでくれるようです。小鳥も自分も何とか冬を乗り切れるようになっているようです。
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2010/11/20

小鳥たちが飛んできた  雑感

 またバードテーブルに小鳥たちの食べ物を用意する時期がやってきました。いつものことながら、よくぞ食べ物のありかを見つけるものだと感心させられます。手のひらに収まるほどの大きさで、地味だけど美しい色彩のシジュウカラたちが来ています。さらに地味なカワラヒワも姿を見せています。

 それぞれに食べ方が違います。カワラヒワは嘴にくわえたまま器用に割って、中身を食べます。シジュウカラは、両足に挟んで、嘴でガンガン突いて中身を取り出します。分かり切った流れなのに、やってくるとつい見入ってしまいます。

 パソコンと向き合う作業の合間に、すぐ脇の窓から眺めます。ぼーっと眺めていると、色んな思いが湧いてきます。ひたむきに食べ続ける姿。そこにあるエネルギーは凄い。どこでどうやって厳しい寒さの中を生き抜いているのだろう....。

 シジュウカラの食べ方を見ていると、瞬間的に餌を選らんでいることに気づきます。なかなかのグルメなのか、気まぐれなのか分かりませんが、これはダメ、これはいいといった感じです。嘴に咥えただけで中身がわかるのでしょう。無駄なエネルギーを使わない知恵でもあるのでしょう。

 単純に飛べるだけでも尊敬しちゃうのに、瞬時に食べ物を選別できる能力もなかなかのものだと思います。カキやミカンやナシなど、季節の果物が出回る季節、手にしただけで、美味さが分かるようになれるかもしれませんが、それを自分の口に入れるか、誰かに手渡すか。そのあたりは人間ならではの選択かもしれません。

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2010/11/14

木枯らし  雑感

 札幌郊外の病院ボランティアの皆さんのレッスンに向かう途中、美しい虹が天空に力強く掛かっていました。それは二重の虹でした。くるくると天候が変化する秋の一日。その場を離れて動き出し、走り出さなければ見ることはできなかっただろう虹。

 この世界は色彩に満ちている、その源は光にある。光が存在している事自体が不思議な事ですし、光の中で、私たちは世界を見つめ、お互いの存在を見ています。虹はあたかもその事実を、改めて告げているのかも知れません。

 光は、光を受けて反射する物の存在によって、自らの存在を示す。光がなければ何も見えず、事物が存在しなければ、光が光である意味はどこにあるのだろう....。

 そんなことを何となく考えながらのミニドライブでした。その日の朝には、庭の美しい紅葉を目にして感動していたのに、翌朝は見事に散っていました。夜の嵐が、全ての葉を地面に落してしまったのでした。その時、ふと「木枯らし」という言葉が浮かんできました。

  「木枯らし」とはよくぞ名付けたものだとしきりに感心しながら枯れ木のように枝と幹だけになった楓を眺めていると、真下には色とりどりの落葉が惜しげもなく敷き詰められていました。木枯らしが敷き詰めてくれた五色の絨毯。

 秋は、次々と様を変え、冬に向かっています。このスピードは、おそらく自分の人生にも通じるのだと思います。紅葉の見事さが一夜にして失われ、見る影もなく立ちつくす。そんな日が、ある日突然訪れるのでしょう。

 吹き抜ける風が命の種を運び、やがてその風が命の終わり告げる使者となる。どんな巨木もやがて朽ち果て倒れる。木ほど長生きする生命体はないのかも知れないが、やはり終わりは来る。その木は、与えられた命の元を大地に返し、新しいいのちを生み出す養分となる。

 そうやって生きるのだ...。それは何と幸せなことだろう....。木々たちは、そんな歌を歌いながら過ごしているのだろう。そして、その木々の声、彼らが届けてくれるメッセージに心を寄せる人々との深い繋がりを喜んで、さらに歌声を響かせるのでしょう。

 木枯らしが吹く抜ける時、枝たちが囁くように歌っています。
さあ、この風を胸いっぱい吸い込んでごらん、受け取った息を吐きだしてごらん。
声を出し、全身に響かせてみるといい。
あなたのために作られた、木の笛に風を注いでごらん。
私たちが、あなたをどんなに愛しているか、その思いが美しい響きとなってあなたの心に届くだろう....。

ちょっぴり秋の詩を歌ってみました.....。

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                漁川の河辺
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2010/11/2

おっきなアンモナイトがやってきた  雑感

 きっと何か囁いている...。いつか聴こえてくるかもしれない...。そんな気持ちにさせてくれる、おっきなアンモナイトの化石を届けてくださったのは、ラブフルートリングのお一人Tさんでした。

 この夏、イチイの木と一緒に頂いてきたアンモナイトの化石をKOCOMATSUの入り口に並べて居たのですが、これをご覧になったTさん。たちまち若かりし頃の化石発掘の記憶がよみがえって、色んな発掘にまつわるお話を聞かせてくださいました。

 その流れから、最後に手元に残っていた化石をKOCOMATSUに置いて、皆さんに触れてもらおうと思いたち、運んで来て下さったのでした。(この話題は、KOCOMATSUブログでも少し触れています。)

 少し体調を崩されているTさんが、わざわざ届けてくださったアンモナイトは、もうそれだけで十分な存在感があります。色彩も、大きさも、形も......。しばし眺めていると、一気に時間の軸が変化し始める気がします。

 一つの時代、次々と変化する時代の価値観。それらが一粒の水滴のようなものだと気付かされます。化石はきれいに削られているのですが、発掘された時は、その数倍はあった訳です。険しい山奥から、背中に担いで身の危険を感じながら、めちゃくちゃ重たい石を運んでくる。さらに周辺の堅い石を削り取る作業が続きます。

 その日から、長い年月が過ぎて、ラブフルートとの出会いを経て、運びこむことになった化石。それは、ここから新しい旅を始めるのでしょう。この化石を囲んで、Tさんのお話を聴くもよし、化石と触れ合って心に思い浮かぶことを自由に語り合うもよしといったところです。

 化石を前にしていると、長い年月を経た巨木の根元で昨日芽を出したばかりの雑草のような気持ちになります。さらに言えば、その巨木すら化石の前では、生まれたての一本の草に過ぎないのでしょう。
 
 この想像もつかない時間をぎゅっと閉じ込めたような存在と触れ合う感覚は言葉にはならないのですが、そういうものが現実として目の前にあるのです。

 ブログを読んで、ああそうか...と流される情報に終わらず、暗がりにキャンドルの光で浮かび上がるアンモナイトを見つめながら、何事か思い浮かぶことを語り合いたい。そんな気持ちになる方が、一人でも二人でもおられたら、どうぞ声を掛けてみてください。
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