無敗の三冠馬、ディープインパクトは二着に敗れました。勝ったハーツクライとC・ルメール騎手は、とても良い競馬をしたと思います。一方、昨年のこのレースの覇者、ゼンノロブロイは惨敗しました。疲れが蓄積していたのか、それとも引退レースだったから、藤沢調教師はきっちりと仕上げ切らなかったのか、それは分かりません。ただ結果として惨敗だった。それだけであります。
競馬は何が起こるか本当に分からない。
僕は小学校高学年の頃から、競馬を観ていました。競馬観戦歴は、かれこれ約十五年になります。それでも、競馬について知っていることは、ほんの少しでしかありません。もしかしたら何も知らないのかもしれない。
それは兎も角、強い馬が敗れるときこそ、その馬の真の強さが実感として分かるという、変な持論を僕は抱いてます。そして今回の、ディープの敗戦について思うことは――まだ消化しきれていないのですが――やっぱり強いということでした。シンボリルドルフは、古馬と初対戦したジャパンカップで、カツラギエースの三着に沈みました。そして次走の有馬記念で、きっちり借りを返しました。ルドルフは本当に強かった。
たった一度の敗戦で、その馬の価値を下落させてしまうのは早計なことです。脚を余して二着に負けた(言い訳がましい?)ディープを、評価しても良いと思います(とっても寛大な意見!)。
無敗馬とは最強馬なのだろうか。それは分かりません。日本で無敗の最強馬を語るとき、必ずマルゼンスキーの名前が挙がります。確かに、マルゼンスキーは強かった。昔の映像で観たのみですが、あの同時の競走馬の中では、ずば抜けて強かったと考えます。三強世代(トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラス)と対戦したら、結果はどうなっていただろう。それは永遠に分かりませんが、少なくとも好勝負したと思います。
サラブレッドは経済動物です。勝つことが至上であり、負けは、その馬にとって死を意味します。ある意味で、人間の世界より厳しい世界であります(厳しい世界にしているのは、他ならぬ人間なのですけど……)。競馬にロマンを求める人、馬券を求める人、様々な人はいますが、そんなことはお構いなしに、競馬は続いて行きます。
僕は七年前、サイレンススズカのレースを観戦したことがあります。あの最後のレースとなった、1998年の秋の天皇賞のことです。僕はパドックで観ていました。サイレンススズカは、パドックで一頭だけぽつんと、他馬から離れて周回していました。大人しそうな馬が、ヒョコヒョコと歩いていたことを、覚えています(そういえば、此方の方をさかんに物見していました)。対照的に、オフサイドトラップは気合いに満ちていました(イレ込みとは異なるものです)。オフサイドトラップと比較して、サイレンススズカは小さな馬でした。そして僕は馬場入りを観るため、パドックから移動しました。サイレンススズカ一頭だけ、スタンド側に近付き、キャンターしていました。変な馬だなぁと、僕は思いました。
そしてレースははじまり、あの事故が起きました。それから先のことは、あまり覚えていません。完全に放心状態で、本当に覚えていないのです。勝ったのはオフサイドトラップであると知ったのは、その日の夜のことでした。
昔話をしてしまった。……ただ、僕は競馬を観ていて、よく思うことがあります。
無事是名馬
ということです。負けても死を意味しますが、レースを最後まで走り抜けることはもっと大切です(有馬記念だと、サクラスターオー・サンエイサンキューなどが、思い出されます)。ゼンノロブロイは惨敗しましたが、引退するまでにGTレースを三つも勝ちました。ディープインパクトは今回負けましたが、まだ次(来年)があります(よね?)。
ハーツクライには初のGT制覇です。昨年の日本ダービー二着、今年の宝塚記念・ジャパンカップ二着と、GTレースでは二着続きのシルバーメダルコレクターが、初のタイトルを獲得しました。それはそれで、僕には感動的でした(楽しみ方は人それぞれに異なると主張したいのではなく、ディープに対して僕は過剰な期待をしていなかったから、こんなことを言えるに過ぎないのです)。
そりゃあ、ディープインパクトが勝てば、一年の締めくくりとして、万々歳だったかもしれないさ。
でも、競馬って、本当に分からないものです。
僕は一時期、競馬から離れていたことがありました(サイレンススズカのことがあったからではありません!)。しかし、一年くらいして、なぜか舞い戻ってしまいました。競馬の何が良いのだろう。今だに謎なのですが、一つ分かることはあります。
俺は競馬が好きなのだ!
たぶん僕は死ぬまで競馬を見続け、たまに馬券も買うのでしょう(また休眠することはあるかもしれなせんけど……)。
グダグダな雑文になってしまいましたが、競馬は謎だらけだなぁと、今回の有馬記念を観ていて、再確認しました。
最後に、僕の印象に残っている有馬記念を書いておきたい。それは、1992年と1993年の両レースです。
1992年は、トウカイテイオーの大惨敗より(それはそれで大ショックでしたが)、メジロパーマーのあの粘りに感動しました。何より山田泰誠騎手とのコンビが良かったです(人馬一体とは、パーマー@山田泰誠のことです)。
1993年に関しては、田原成貴騎手のあの涙以外、何も言うことはありません。後にも先にも、競馬のレースで号泣したのは、このレースだけです(これを書いていて、レースのことを少し思い出しました。……やっぱり泣けてきます)。
勝利の美酒に酔いしれ、敗北に打ち拉がれ、再び競馬ははじまります。願わくば、ディープで競馬に興味を抱いた人たちに対して注文になりますが、今回のディープ敗戦によって、もっと競馬を好きになって欲しいと、そう思います(押し付けがましいようですが……)。
なぜなら、僕が本気で競馬のことを好きになったのは、トウカイテイオー・ミホノブルボン・メジロマックイーン・ナリタブライアンなどの敗戦を観て、実感したことなのだから……。