「W山さん あのさ〜」
「あのさ〜ちょっと話し聞いてもらいたいんだけど・・」
(心臓爆発寸前)
「おれさ〜あのさ〜じつはさ〜あのさ〜おれさ〜えっとさ〜」
我々の周りは多くの人の流れが交錯している・・新宿駅の地下通路である
その中で、今 我々二人は スポットライトを浴びているドラマの主人公のようだ・・・・こういう場合ドラマでは、二人が固く抱き合うシーンでエンディングテーマが流れ・・・カメラが次第に引いて行く・・・
私もそうなったらなんて素敵だろう 幸せだろう。
このときはそんなこと考える余裕も無い、周りの人ごみなんて目に入らない、彼女を見つめるだけで精一杯なのだ・・
そして・・ついに 私は思いを打ち明けた
新宿の地下で愛を叫ぶ!
「あのさ〜おれさ〜じつはさ〜えっとね〜」
「おれ、W山さんのことが好きだーーーつきあってくれ〜」はぁ〜はぁ〜はぁ〜
この後彼女が口を開くまでの間は数十秒だっただろう、しかし僕には数時間沈黙が続いたように感じた・・
うつむき加減の彼女が・・もしかしたら震えているのか・・・この震えは喜びからなのか、それとも
オシッコデモシタイノカ
よくみると彼女は涙を流している・・・
嬉し涙なのか・・・それとも女性特有の 涙作戦なのか・・もしや
カフンショウでは
涙を流し震えながら彼女は口を少しずつ開いて言った・・
「あの・・てんちゃんくん(違うけど)あたしね」
このときが来ることは彼女は知っていたはずである。周りの雰囲気、そして今日のこの不自然な組み合わせでのデート・・おそらく彼女は心に決めていたんだろう
そしてついに 彼女の口からこんな言葉が飛び出した
「今までのように友達でいようよ!」
だいぶ前に書いたけど彼女はアナウンス学校に通っている
言葉ははっきり聞き取れる・・この言葉の意味は 私みたいなバカでもわかる。
どうだろう、ここで他の男ならなんていうんだろう・・諦めずに押し通すのだろうか・・・僕は違った
「そっか・・しょうがないか・・そうだね・・友達でいてね」
僕の顔は心にも無く笑顔であった。長く続いた緊張から解き放たれた安堵感も手伝ってなのだろうか・・笑みを浮かべてそういった
そして続けた
「ありがとう、今日はとっても楽しかったよ、気をつけて帰ってね、小田急線はあっちだね、僕はこっち・・じゃ〜また明日楽しくバイトしようね、遅刻するなよ」
「うん、あたしも楽しかった、ごめんね」
「うん・・大丈夫 ばいばい」
こうして二人は まさしく別れ別れに歩いていった・・・
一人になった私は、笑顔どころではない・・まるで夢遊病者のように
京王線にヨロヨロと向かっていった
(つづく)