toki の映画・読書ノート
映画と読書の感想と日常雑記
【 今週の巻頭言 】
Happiness. Simple as a glass of chocolate or tortuous as the heart. Bitter. Sweet. Alive.
幸福。グラス一杯のチョコレートのようにシンプルで、人の心のように複雑。苦くて、甘くて、生き生きとして。
「
Chocolat ショコラ
」/ジョアン・ハリス
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2007/3/10
「蹴りたい背中、インストール など」
国内作家
最近読んだ本を備忘録的にブログに記しておくことにしました(3月分第2回)。
○蹴りたい背中(2003)/綿矢りさ
さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。
第2作目のこの作品でりささんは史上最年少(19歳)で芥川賞を受賞したわけだけど、この冒頭の文章を考えつくのに1年近くかかったそうだ。冒頭に限らず、推敲を重ねた文章の完成度は高く、潔(いさぎよ)く胸の底に落ちて留まる。
私が孤独にプリントを千切っているのは実験室での生物の授業中のことだ。高校に入学して2ヶ月が経ち、いまだにどこのグループにも属していない余り者は、私とにな川のふたりだけだった。
私は、余り者も嫌だけど、グループはもっと嫌だ。できた瞬間から繕わなければいけない、不毛なものだから。
私が蹴りたい背中は、ファッションモデル、オリちゃんの熱狂的ファン(おたく)のにな川の背中だった。
この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい。いきなり咲いたまっさらな欲望は、閃光のようで、一瞬目が眩んだ。
(参考)
・
蹴りたい背中(amazon.co.jp)
・
綿矢りさ 出版リスト(amazon.co.jp)
○インストール(2001)/綿矢りさ
りささんが高校在学中の17歳の時に発表した処女作で、史上最年少での文藝賞受賞作品です。
自称変わり者の高校3年生、朝子は受験戦争から自ら脱落し学校へ行かなくなった。発作的に猛然とマンションの自分の部屋の掃除を始め、すべての家具や物をゴミ捨て場に運び、地べたに寝転び朝子は物思う。まるで女子高生版漱石のよう。
まだお酒も飲めない車も乗れない、ついでにセックスも体験していない処女の17歳の心に巣食う、この何者にもなれないという枯れた悟りは何だというのだろう。歌手になりたい訳じゃない作家になりたい訳じゃない、でも中学生の頃には確実に両手に握り締めることができていた私のあらゆる可能性の芽が、気づいたらごぞっと減っていて、このまま小さくまとまった人生を送るのかもしれないと思うとどうにも苦しい。
朝子のパソコンを拾った小学生の男の子から、一緒に組んで仕事をしないかと持ちかけられ、アダルトサイトのチャットでHな会話をするバイトを始めた。
文章の力は「蹴りたい背中」ほどではないにしても非凡です。
調子の悪いパソコンはインストールし直せば、あるいはリセットすれば、うまく再立ち上げできるかもしれないけど、人間はそううまくいかないだろうな。いやインストール次第(生きがいとか)では案外うまくいったりするのかも。
映画化もされているので、今度レンタルしてみようか、やっぱりよしておこうか。
(参考)
・
インストール(amazon.co.jp)
・
映画「インストール」公式サイト
○ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法(2001)/福田和也
先月紹介した「福田和也の文章教室」では、読ませる文章を書くには、まず読む力をつけることが前提だということで、著名作家の文章を例に読み方を学んだはずだけど、いまいち即効性に欠けるということで、福田さんの指南本をもう1冊読んでみました。
2000年に発刊した福田さんの著作が12冊だったというからすごい。大学で教え、週に3日は友人と飲み、睡眠はきちんと1日8時間とり、なおかつあまたの原稿を書きながら、1日平均3冊あまりの本を読むなんて、まさに超人的な技というほかはありません。
この本の第T部「どう読むか」と第U部「どう書くか」のポイントをピックアップしてみました。
第T部 どう読むか
・より効率的に読む方法:本を読む目的をはっきりさせる。役に立つ本を選ぶ。自分にとって信用できる評者を見つける。立ち読みによって「あたり」をつける。ページを折る。手書きで抜書きをする。
・テレビに情報価値はなく、時間の無駄。テレビで暇をつぶしているには、人生はあまりに短い。
第U部 どう書くか
・情報を集め、整理し、表現する
・文章上達の「近道」とは
必要なのは技術より認識;
@書く文章についての認識:自分が上手い、あるいは好きだと思う文章の構造を認識するためにコピーし、分析する
A自分が、何を書くということの認識:目的を十分に見定める。
・書いているものが行き詰った時にどうするか:散歩で発想など
・「スランプ」の管理の仕方:フォームを崩さない(執筆の時間帯の設定、机周りの整え方、あるいは本をどういうふうに読んでいくか。そうした自分なりのやり方を、しっかり確立しておく。一応机に座っていること)など
やはり文章上達にはそれなりの努力が必要なようで、一朝一夕にはうまくならないのだということがよ〜くわかりました。
(参考)
・
ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法(amazon.co.jp)
・
福田和也 出版リスト(amazon.co.jp)
綿矢りさ
蹴りたい背中
福田和也
投稿者: toki
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