ローマ時代の西ヨーロッパは、大部分が深い森で覆われていました。森は農村生活に欠かせない様々な資源を提供し、農地における穀物生産とセットで中世農民のシステムを作り出していました。
燃料となる薪や木炭、家屋や城塞や水車などの建設に使われる木材の王・樫の木は森がもたらしました。蜂蜜や照明用の木蝋(もくろう)を生み出すのも森林で、枯れ葉とくに黄楊(つげ)の枯れ葉は、農地の地力を回復させるための肥料となりました。
この空間は、また豚の放牧にも適していました。豚の飼育の飼料なるドングリや橡(とち)の実などが森には豊富あったからです。史料には「豚××頭を養える広さ」という定式句も使われていました。豚の放牧が森の利用の形式として如何に定着していたかがわかります。
ここでピピ!とくるのが、
イベリコ豚と
トリュフの話。イベリコ豚のイベリコとは、スペインとポルトガルのあるイベリア半島のことで、イベリコ豚とは、スペイン西部地方のみで飼育されるイベリア種というスペイン原産の黒豚で、10月から翌年2月、3月まで森に放牧してドングリを食べさせ太らせるそうです。現在では、特別な飼育法とされていますが、新大陸からジャガイモやトウモロコシがもたらされるまでは、森での豚の放牧は一般的だったようです。
ウィキペディアでみると、ヨーロッパで「豚の飼育が発達したのは、古代ローマ人も豚を食べなかったわけではないが、北方森林地帯のゲルマン人やケルト人の食文化においてだった。日照時間が短く寒冷で、しかも土壌のやせたヨーロッパでは、穀物の生産性が低いため、秋になるとナラ(オーク)の森に豚を放してドングリを食べさせて太らせ、それを殺して食塩と硝石で処理して主要な保存食にしたのである。ドイツやスペイン、イタリアなどのハムやベーコン、ソーセージはこういった伝統を受け継ぐ。」とあります。イベリコ豚も飼育法は、西ヨーロッパでは昔ながらの伝統的な飼育法だったんですね。
それから、世界三大珍味とされる高級食材で、「黒いダイヤ」とも呼ばれるトリュフ。トリュフは、広葉樹の根に菌根をつくって生育するきのこで、このトリュフを掘り起こすのには、かつてはメス豚が使われたいたことはよく知られています。そもそもトリュフにはオス豚の持つフェロモンと同じ成分が含まれていて、トリュフの匂いを嗅ぎつけ興奮したメス豚が掘り返すのだそうです。でも、これ、森に豚を放牧してなければ分からないことですよね。

0