バトル・ロワイアル特別篇

ネタバレ記事

追加場面の具体的な説明をすると、よりドラマを深くするために学校での日常生活としてバスケットボール大会が行われている様子を描写している。こうする事により彼らが今おかれている状況とのギャップを生み出してより切なく悲しくさせる効果を狙っている。

それともう一つ大きな追加として相馬光子(柴咲コウ)の幼少の頃の記憶が描かれている。

 両方ともに原作にはあった設定です。とはいうものの微妙にニュアンスを変えていたり表現が柔らかくなったりしていますが・・・バスケシーンは小説だと七原と三村信史(塚本高史)が活躍した球技大会というのが語られる。相馬光子の記憶は彼女の口から語られる形で小説に登場する。

さらにエンディングで、「レクイエム」と題してバスケ大会のフルバージョンを流したり、七原秋也(藤原達也)の見た夢を再度流したり、そして前回やむなくカットされたらしい中川典子(前田亜季)の観た夢、教師キタノ(ビートたけし)との河原での会話のフルバージョンを流している。

この典子の夢の場面は最初の劇場公開版では一体何を喋っているのか謎だった。今回の特別篇も劇中ではやはり音声なしなのだが、エンディングの「レクイエム」で流すフルバージョンでは音声付で観ることができるのだ。脚本家で監督の息子、深作健太によるとこの映画で本当に言いたかった事がこの夢でのビートたけしのセリフの中にあるというのだ。

私がこの特別篇を観たのがちょうど原作を読んだ直後だったので前回の劇場公開時に観たときよりもさらに面白く観る事ができた。

今回はそういう絡みもあり、原作と映画の相違点などを注意深く観ていた。小説などを原作にもつ映画の場合大抵少し質が落ちてしまったり、映像では語りきれない部分などもあるのだが、この映画はその点も上手くカバーしていると思う。

当然ながら原作のほうが優れている点なども多々あるが、逆に映画のほうが優れている部分などもあると個人的に思う。

その映画のほうが良かったと思う場面の一つがクライマックスのキタノとの対峙場面だと思う。

小説だと最後に川田章吾(山本太郎)が優勝し、優勝者専用船のなかで坂持に本当に中川と七原を殺したのかと迫られる。その直後に銃声が船外から聞こえてきて、そのどさくさにまぎれて坂持の喉を鉛筆で突き刺し逃げる川田。実はその銃声は中川と七原のものだったという展開。

アクションシークエンスとしては最高の場面だが、私は映画版のほうがまとまっていると思う。映画版もやはりラストはキタノが音声で川田、七原、中川のやりとりを聞いており最後に川田が裏切り二人を射殺したかに思えた。

キタノの待つ本部に戻ると川田にひょっとしたら首輪のはずしかたを知っていたのでは?と疑問をなげかける。そこで七原と中川が登場。キタノは二人を銃で挑発し、七原に射殺される。が、しかし実はキタノの持っていた銃は水鉄砲だった事が判明。しばらくするとキタノの携帯電話が鳴り出し、それに反応してキタノがいきなり起き出す。しばらく電話の相手と口論したのち、電話を投げ捨て銃でそれを撃ち抜く。その後、キタノが手に入れていた中川が映画冒頭で七原に渡していたクッキーの最後の一口を食べて静かにくずおれる。

なんだかこちらのほうが面白い展開である。

また映画に出てくる生徒達全員にも小説を読んだあとだと感情移入がしやすくて良い。

特別篇となり更に考えさせられる作品になったといえる。

そう、この映画は考えさせられる作品なのである。

この映画の原作はもともとはあるホラー大賞で最終選考まで残るも選考委員達に拒絶され、こういう作品は嫌い、こんな事を考える作者自体も嫌いと感情的な発言などもある審査員から出るほど。

で、結局落とされたわけだが、この噂を聞きつけた太田出版の編集者が作者となんとか連絡をとり出版された経緯を持つ。

発売されてみれば、不愉快な気分になるどころかテーマの重い作品として多くの支持者を獲得する事となり、それが更にホラー大賞選考委員バッシングに拍車をかける結果となる。

すでに多くのファンや評論家も語っている事だが、作品の登場人物たちが好んで人殺しゲームを展開しているのなら、なるほど確かに不愉快な気分になるかも知れないが、この小説の登場人物たちは皆正常な思考を保とうと必死で極力戦闘を避けよう、こんなクソゲームを強制されてたまるか!という思いで行動をしている人達が大半である。そしてそのような人たちに焦点があてられており、好んで殺戮を繰り返そうとする人たちは「悪」として描かれている。しかしその「悪」の一人である相馬光子にもそうならざるを得ない、一種脅迫観念みたいな思いが描かれている。私はただ奪われるより奪うほうにまわっただけ。そういう思いで毎日を過ごしていた彼女にとってはこのゲームでの行動も当然の結果といえよう。

唯一完全な「悪」として描かれている桐山にしても、逆に何もバックストーリーが彼にだけ描かれていない事により読者の想像力が膨らみ、きっとこの桐山にも現在の彼の人格を形勢するまでの出来事があったのだろうか?と思ってみたりもする。

原作、映画ともに奥の深い作品である。

不覚にもこの小説と映画の解説本「バトル・ロワイアル・インサイダー」を読むまで気づかなかったのですが、この物語の登場人物達は城岩中学校の生徒という設定なのだがこの城岩という地名、英語に直訳するとなんとキャッスルロックになるではないか!キャッスルロックといえばスティーヴン・キングが頻繁に使う架空の町ではないか。

更に前回「バトル・ロワイアル」の記事を書いたときに「死のロングウォーク」に似ていると書いたが、案の定、この作品をかなり意識していたらしい。

2007/04/16 投稿者:でに

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