2011/8/5

『「ペトカウ効果」は低線量被曝が健康に大きな影響を与える根拠となるのか?』という記事を読んで  原爆・原発問題

*ある方に、以下のブログの記事を紹介して頂き、たいへん、参考になりました。
 なるほどと思うところと、これはちょっと違うのではないかと思うところと両方、あるのですが、自分の考えをまとめてみました。

ぷろどおむ えあらいん
「ペトカウ効果」は低線量被曝が健康に大きな影響を与える根拠となるのか?
http://preudhomme.blog108.fc2.com/blog-entry-158.html

この記事で指摘されているように、ペトカウが実験した値を考えてみたのですが、改めて考えてみると、低線量とは言っても、0.00001シーベルト/分ですから、今、福島原発事故で首都圏で問題にしている放射線計測値の千倍以上のものなんですね。実は低線量というわけではないんですね。なので、上のブログの方が言う、ペトカウ自身は低線量被曝の危険性を本当に言っていたのか、低線量被曝の恐ろしさを強調し出したのはペトカウの理論から発展して論を築いたスターングラスらではないかというのも一理あるのかもしれないなと思いました。

でも、以下に書いていきますが、疑問も沸きました。

6月末に翻訳が出たラルフ・グロイブ、アーネスト・スターングラス共著『人間と環境への低レベル放射能の脅威』を肥田舜太郎先生と一緒に翻訳した竹野内真理氏が、アブラム・ペトカウ博士は92の論文を発表したと書いていますので、その研究の全貌がまだ分かっていないので、本当にペトカウは低線量被曝の危険性について言っていなかったのか、判断がつかないところはあります。しかし、肥田先生も紹介されているペトカウの実験はたしかに低線量と言っても、福島原発事故で問題にしている放射線計測値の千倍以上のものだし、また、ペトカウはSOD(スーパーオキシド・ディスムターゼ)を加えると活性酸素の効果が観察されなくなることも研究していて、このことからペトカウは試験管内と生体内ではペトカウ効果の働きが異なることも示しているとも言えるので(SODは人体の中にありますので)、低線量被曝ならSOD酵素などの働きで防げるのではないかとペトカウ自身は考えていたのではないかという推測は出来るかもしれないですね。(ペトカウ効果は人ではたしかめられていないので慎重にという研究者の人の意見はこうした見解から言っているのかもしれません。)もしかしたら、ペトカウとスターングラスや肥田先生とでは、低線量被曝の危険性について、認識が異なるところがあるのかもしれませんね。

たがしかし、『人間と環境への低レベル放射能の脅威』では、ペトカウが研究していたSODなどの抗酸化物、ラジカル・スカベンチャーについてもかなり触れられています。むしろ、スターングラスらが言う酸化ストレスの考え方は、SODなどのラジカル・スカベンチャーがあって成り立つものだと思います。その意味で、スターングラスらはやはりペトカウの研究を発展させて論をつくっているのは間違いないと思います。

酸化ストレスというのは以下のようなことです。普段、酵素系と非酵素系の2つの防御組織によって活性酸素が正常にコントロールされているのですが、活性酸素の生産が防御組織の非活性化能力を超えると酸化ストレスが起こるというのです。つまり、放射線に被曝すると、いわゆるペトカウ効果、フリーラジカルの機能によって活性酸素が細胞の内外に作られ過ぎて(注・「作られ過ぎて」というより「作られ活性化しすぎて」と書くほうがいいのかもしれません。活性酸素の数が少なくてもかえって活性化するというのがスターングラスの考え方のようですので。)しまって、酸化ストレスが起こり、これが様々な症状を起こすということです。こうした活性酸素に対する防御システム(ラジカル・スカベンチャーと呼ばれている)に、酵素系のものと非酵素系のものとがあり、酵素系のものの代表的なものがSOD酵素ということなんですね。

一部でEM菌が放射能に効果があると言われているけど、これはどうもこのラジカル・スカベンチャーの機能として効くのではないかと考えられます(もし、本当に効果があるとしてですが)。

で、たしかに、ペトカウは、低線量の被曝ならば、SODなどの抗酸化物、ラジカル・スカベンチャーが働いてある程度は防げるのではないかともしかしたら考えていたのかもしれないけれども、問題は、SODなどが働かないとか、あまりにも活性酸素が多すぎて(注・「多すぎて」というより「活性化しすぎて」と書くほうがいいのかもしれません。活性酸素の数が少なくてもかえって活性化するというのがスターングラスの考え方のようですので。)とても防ぎ切れないとか、そういうケースもあるんじゃないかということではないでしょうか。
『人間と環境への低レベル放射能の脅威』259頁から260頁の記述を引用します。

「ペトカウは、放射線に被曝した労働者の白血球へのスーパーオキシド・ディスムターゼの影響に関する研究では、被曝労働者の酵素の活動(誘導能)は対照群より一般的に高いことを発見した。職業被曝においては、現在許容レベルの放射線により、酵素の誘導能が増大していたのである。これらの結果については、放射線が引き金となって酵素の生産が増加したと説明がつけられるだろう。この防御活動の研究は、ペトカウの研究所が閉鎖された時にあった大規模で何年かにわたる研究企画の一部だった。
 特に脅威を受けているのは、胎児と新生児である。ペトカウによれば、胎盤の重量当たりのスーパーオキシド・ディスムターゼの活動量は、正常妊娠では妊娠期間の36週にいたるまで増加している。これとは対照的に、自然流産した胎盤のスーパーオキシド・ディスムターゼの誘導能のレベルは不足していた。このことは、放射線被曝した妊婦の流産の根底にある原因の一つかもしれない。なぜなら、放射線起因の過酸素脂質は、流産のリスクの増加で知られる化学物質を誘導するからである。
 脳に関してはリン脂質が非常に多く、それについては逆線量曲線が当てはまることをペトカウは指摘してきた。」

つまり、被曝してもSODなどのラジカル・スカベンチャーが働いて防げる面はあると思うし、実験室で確認されたからと言ってそれがそのまま人体で起こるとは言えないのではないかという点は注意して考える必要がたしかにあると思います。
しかし、それでは防ぎ切れないケースがあり、それが個人差となって現われてきていて、たとえば妊婦の場合はどうかとか、あるいは同じ人の中でも人体のどこが影響を受けるかによって、人体のほかの箇所は快復してもたとえば脳に対してはどうかとか、そういうことがそれぞれ違って現われてきているということに繋がっているのかもしれないのではないでしょうか。

そして、『人間と環境への低レベル放射能の脅威』の223頁の、ペトカウがこの本の著者に当てた手紙の引用という以下の箇所が重要な提起をしていると思われます。

「トリチウムを含む水を使って、これらの細胞膜に照射を行なった時、私は線量関係を自然放射線レベルまでひき下げられることを発見した。それにより、初めて妥当な生物学的環境中の自然放射線の線量率で、具体的に放射線起因の化学反応を立証することができたのである。トリチウムをふくむ水は、現実的にも放射線の内部被曝源である。そして、セシウム137での研究とは対照的に、逆線量率効果はスーパーオキシド・ディスムターゼによって修正されるが、全面的には排除されないことを発見した。これらの研究により、細胞膜の外部被曝時と内部被曝時の反応に基本的な相違があることが明らかになった。」

ここで「セシウム137での研究」とあるのは、今、引用した文章の前に書かれているセシウム137の外部照射の研究のことです。つまり、セシウム137の外部照射はスーパーオキシド・ディスムターゼで保護されて逆線量率効果が起こるのに至らなかったが、トリチウムを含む水を使って照射を行なった時は逆線量率効果は全面的には排除されなかったということのようです。これが、つまり、外部被曝と異なる内部被曝の影響ということではないでしょうか。

なお、日本より自然放射線の値がはるかに高い地域があるが健康被害に有意差はないのではないかと言われますが、これは、たしかに自然放射線であっても活性酸素が増えるなどの影響はあるが、SODなどのラジカル・スカベンチャーも同時に働くように、その地域では何世代にもわたる進化の過程でなっていて(人だけでなくたとえば植物とかもそういう対応をするようになっていて)、それで酸化ストレスが起こらないようになっているとも考えられます。しかし、日本で原発事故が起こるというように突発的に放射線量が増えると対応できなくなるということも考えられるのではないかと思います。


(追記)
結局、ペトカウが低線量被曝の危険性をどのように考えていたのか、混乱しているところもあるのですが、基本的には、以下のように考えているのですが、どうでしょうか?

・ペトカウは活性酸素の作用はSODである程度、防げると考え、低線量被曝は防げると考えていたのかも知れない。
・しかし、ペトカウの研究から発展して、スターングラスらが考えて行き、低線量被曝を見い出し、主張した。
・ただし、ペトカウも自然放射線レベルで逆線量率効果がSODで排除されなかったという実験もしていたようだ。なので、低線量被曝に対してペトカウも疑いがあったのかもしれない。
14



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ