『ヴェラ・ドレイク』
これは素晴らしい。
僕はおすぎとは趣味が合わないのか、おすぎのほめる映画が自分的にはいまいちだったり(たとえば『戦場のピアニスト』『ミリオンダラー・ベイビー』)、おすぎがまるでダメという映画に感動したり(たとえば『サマリア』『ライフ・アクアティック』)することがあるのですが、今回はおすぎとともに(?)大絶賛。この映画に対してはどれだけの賛辞を重ねても足りない気がするぐらいです。
『秘密と嘘』のさらに先へ、マイク・リー監督の手法がこのような達成を見せるとは驚きました。
たしかに、人がそこにいるということ。それだけで画面を見ていて、何度も目頭が熱くならずにはいられなくなりました。
特に1950年、戦後、まもなくの時代設定であるためか、人物に戦争の影が深く落としていることに気がつかされます。僕はその時代を知りませんが、たしかにこういう時代があって、人間はこうだったのかもしれないと、当時のおばさん、夫婦、家族はこうだったのかもしれないと思わされました。
マイク・リー監督独自の、シナリオを各役者に、その役者が演じる人物に関するシーンのものしか、渡さない(物語の全体を知らせないでおく)という手法が、そのような当時の人物を再現するというキャラクターの作り込みと結び付いているところにこの作品の深みがあると思います。
特にマイク・リー監督作品というのは、どんなにドロドロしていても、家族の崩壊ではなく、家族の絆を描くところに見ていて希望が持てるものがあると思います。最近のドラマは家族の崩壊を描くものばかりが目につくので(現実の事件もそうですが)、あくまで絆のほうを描こうとするマイク・リー監督はある意味で反動的なのかもしれないとは思うのですが(もしかしたらそうした反動性が今回、1950年代を描くということに向かわせたのかもしれない)、でもその反動性も魅力です。
イメルダ・スタウントンが演じるヒロインのヴェラのキャラクターはもちろんですが、フィル・デイヴィスが演じるヴェラの夫のキャラクターも印象に残ります。自分はこんな風にパートナーの人間に対することが出来るだろうか?と思ってしまいました。
「どれだけの賛辞を重ねても足りない気がする」と書いたけど、ちょっとほめ過ぎでしょうか?