川端康成のエッセイ集である。彼の創作や文芸に対する考え方、自然や社会に対する考え方が垣間見れて面白いのだが、俳句については門外漢であるというニュアンスの彼自身のコメントがありつつ、しかし、なぜか不思議に何度か興味を持って俳句や俳人は触れられている。「短歌や俳句を読んで私が痛切に感じることの一つは、歌人や俳人の方が小説家よりも自然をよく見て書いていることである」とし、自作の中で比較的自然の写生につとめたのは『雪国』であると言う。その上で、「写生につとめていると、一見空想のような自然描写で実景の写生である、思わぬ天恵が得られる。その逆に、実景の写生のようでいて、想像の自然描写は死にものである場合が多い」とコメントするのだが、この言葉はしかし、写生というものに対するなんと正確な理解であろうか。写生というものに真剣に向き合い、その中で長い期間試行錯誤した経験がないと、このコメントは出てこない。
創作にはジャンルを越えて普遍のものがあるのだと言ってしまえばそれまでだが、川端康成のエッセイを読んでいると、その考え方が俳句や短歌的なものに不思議に近い気がする。別の本で、川端の小説を評して島田雅彦が「冥界で俳句を詠んだような」と言っていたのが、鮮やかに記憶に残っている。この評も、川端の小説を評するのにあまりにも適格だ。川端とは不思議な小説家で、その存在は小説家というよりは歌人や俳人に近いところがある。少なくとも、このエッセイ集を読んでいると、そのようなことをひしひしと感じる。例えば土地に対する関心や、天恵的もしくは遭遇的なものの重視などの考え方は、小説家的と言うよりもむしろ俳人的な印象を持った。

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