北京というのはなかなかに面白い街だ。中国や支那と呼ばれるこの地域の首都が常に北京の街にあったわけではない。主に言えば元と明と清、そして中華人民共和国。その間に、金や中華民国といったものもある。面白いことに、元も清も、漢民族ではない異民族による国家であった。つまり、北京は異民族に支配された国家の首都であった時間が長かった街なのである。
しかし、それらの異民族はみな、結局のところ中華文明に則った中華帝国を作った。決して自分たちの文化を放棄したわけではないし、時には自分たちのやり方を漢民族に押しつけ、あるいは漢民族を冷遇した部分もあった。だが、しかし結局のところ、彼らは中華文明に心酔したのではなかったのか。そして、そのような複雑な異民族帝国の中心になったのが、北京という都市であった。
民族意識の複雑な優越感と劣等感の錯綜。そして、その上に花開いた、あまりにも広大で抽象的な中華帝国。皇帝の下に連なる、さまざまな儀式や風習の数々(それはときに奇怪でもある。例えば宦官など。弁髪やてん足も、今の眼から見るならまことに奇怪な風習だ)。他民族帝国の都に住む、さまざまな異民族の姿(例えば北京に隈無く見られる胡同という言葉はモンゴル語が語源とも言う)。
あるいは庭園都市・北京という見方。あるいは演劇都市・北京。それらは勿論、皇帝の庇護によって育成された面もある。いずれにせよ、北京は抽象的な帝国というものの影が、さまざまな形で落ちている都市であり、そこが北京という街の魅力でもある。

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