IT関連の本を読んでいて時折思うのだが、独特の用語に不思議な魅力があることがある。無骨で実用的な用語が、かえって妙な想像もしくはイメージを掻き立てるのだ。例えば、よく使われる「冗長性」などという言葉も、一般的な感覚からは不思議な言葉に見えるのではないか。
この本で面白いと思ったそのような用語は、例えば「アイデンティティ管理技術」、「疎結合」と「密結合」、そして「オントロジー」といったもの。「オントロジー」なんて言葉は「存在論」として、極度に抽象的な用語として長年親しんでいただけに、なんとも実用的な言葉として再登場されると不思議な気持ちになる。「アイデンティティ」もどちらかというと哲学用語的な感覚が強かったが、哲学用語の実用的な再登場というのはIT領域のひとつの特徴であるとも言えるかも知れない。しかし、その再登場にも理由がないわけではない。IT技術とは、極度に抽象的もしくは集合的なものを、実用的な技術として噛み砕いて取り込んでいくという力が根底に横たわっている。その際に、哲学用語が奇妙に実用的な言葉として再登場してくるのは決して意味がないことではないのだと思う。
ところで、そのオントロジーとも関連するのだが、これからのネットワークでは(セキュリティや速度などその質的な向上もさることながら)さまざまなものが会話し始めるということがおそらく一番大きな変質点になるのだろう。人と人が会話するだけではない、人とモノ、モノとモノ、あるいはシステムとシステム……。その際にどういう情報がかけめぐるか(属性情報、環境情報、等)、情報のアイデンティティを何に求めるか(大勢はICチップということなのだろうが)、さらにはそのアイデンティティに紐づいた情報をどこに置くか(ローカルか、サーバーか)、など課題はいろいろあっても、共有する未来のイメージは以外に明確だ。そこでは、どのような方法によって「意味性」をやり取りするかが急速な課題となっているし(それに関わるひとつが前述の「オントロジー」)、そして急速に負荷がかかるネットワークの質、その延長として安全性と利便性をどう両立させるか、といったことも課題になってくる。
ただ思ったのは、未来像が意外に明確でぶれがない分、課題も実に明確であるということ。あとは、それを解決する技術やモデルの構築だけ、という感を強く持った。

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