イタコもオシラサマも、東北地方に伝わる霊的風習だが、どちらもそれぞれにおどろおどろしく、そしてどこかほのぼのともしていて、非常に興味深い。イタコは、注文する客の求めに応じた「霊」の言葉をイタコが代弁する(憑依)というわけだが、考えてみればそのような「秘儀」めいたことが、恐山の広場に並べられたテントの中で「一霊三千円也」(!)という相場の中で行われているというのは、驚き以外の何物でもない。イタコは、当然若い頃からそれなりの修行を何年も続けなくてはならないので、日本における他の伝統技能(?)と同じように、後継者不足という問題もあるようだ。
一方、オシラサマは家々の守り神なので、もう少し民俗的なニュアンスがある。しかし、これとてもやや「秘儀」めいた部分があって、それぞれの家の奥義めいたものとして非公開だったりもするらしいから、なかなかに奥が深い。
ところで、この著者はもともと報道写真家だったらしく、この本もイタコやオシラサマを追いかけている写真が面白い。「冥婚」の人形がずらりと並ぶ写真などは、鬼気迫るものもある。東北という土地は、どこかこのような「冥界」めいたものが日常的に顔を覗かせている場所のようにも思う。都から離れていたという「鄙」的なものとも関係しているのだろう。九州にはこのような「秘儀」的な部分はあまりないように思うが、沖縄に行くとやはりこのような「秘儀」的なものが顔を覗かせる。ただ、沖縄の場合は恐山のような荒涼とした冥界のイメージではなく、ニライカナイ的というか、どこか「極楽」めいた、賑やかなイメージがある。

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