夏に引越しをしてから生活環境が変化したせいもあってか、まるで、子供が長く遊んだオモチャをある日から遊ばなくなるように、パソコンに触れる事がめっきりなくなっていた。
気がつけば、埃を被ったマウスが机の端から干し柿のようにぶらぶら、ぶら下がっていた。
季節はすっかり晩秋だ。
今朝、高知の親戚からクール宅急便で太刀魚が届いた。大阪では考えられないほどの、指七本はあろう極太の胴周りと、七色にキラキラと輝く魚体で、正に今が旬といった感じだ。
「これを網の上で塩焼きにして、すだちをギュッと絞ってビールを呑んだらほっぺたが落ちるぞ〜、よし、誰かを呼んで一緒に呑もう」、と企むも、携帯のアドレスを探る指を止めた。
皆忙しい。
友達は皆忙しい。
社会人も自由人も皆忙しい。
岬で夕日を眺めてるようなヤツはいない。
現代人は皆忙しい。
魚を焼いてる暇はない。 生喰いならいけそうか、。
そんなこんな思案しているうちにインターホンが鳴った。
モニターを覗くと褪せた色のMISFITSのTシャツの上に、豹柄のシャツを着た奇抜な格好の男が立っていた。、
彼はX-DISCOSというバンドのギタリストであり、まるで映画「デクライン」のスクリーンの中から貞子のように這い出て来たかのようなリアルの持ち主だ。
それから二人で真夜中までモッシュした。曲はルーツレゲエ。
モッシュといってもANTHRAX信者的な狂った肉体運動ではなく、コーヒーに溶けるカリブのミルクのようなまったりとしたトークのモッシュだ。
かくいう僕も彼も、かつては暇の売人と呼ばれる程、暇を持っていたのだが、いつの間にか暮らしにまみれ、タコ焼きを水で流し込むような多忙な日々を送っている。
彼とゆっくり呑むのも久しぶりだ。お互いに生活がモッシュピットそのものである。
それはオーバーか。
翌朝、話声で目が覚めると、ベランダで彼が隣家のおじさんと話込んでいた。
一体、何を話していたんだろう。
人生は無との対決だ。

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