この日記でもたびたび書いているように、私は卒業プロジェクトとして、ゴールドスミスの研究本に取り組んでいる。これはもちろん英文で書くわけだが、せっかく書くなら、日本語版もどうにか発表できないかな、と思う。私のホームページや、他の映画音楽サイトのお客様に読んでもらえるような、ちょっとだけ踏み込んだ内容をできるだけわかりやすくまとめた映画音楽の本を書いてみたい。
サントラの紹介や映画音楽の歴史についての本は何冊か出ているが、「映画の中で音楽がどのように機能するのか」というテーマで書かれた研究本は、(少なくとも日本語では)ほとんど見当たらないのが現状だから、それなりに意義はあるのではないか。
読み手が満足する本になればいいな、とはもちろん思うものの、他の人がどう感じるかは正直予測できない。とりあえずは映画音楽ファンである自分自身が読みたい本を書き、それから他の人の意見を聞いていくしかないだろう。ゴールドスミスの『トゥルーナイト』やハーマンの『めまい』に惚れ込んでから10年。その10年間で私がいつも感じた「こんな本があったらいいのになぁ」を作ってみたい。それは簡単に言うなら「作曲家の視点から見た」映画音楽の本。自分自身が本当に読みたかった本を書くことができれば、それに共感してくれる映画音楽ファンもいるのではないか。
私が漠然とイメージするのは、作曲家の視点で書かれ、映画音楽に関する全要素を網羅したカーリンの『On the Track』、同じく作曲家の視点で名曲の秘密をユーモアたっぷりに解き明かした池辺晋一郎の『音符たち』シリーズ、そして映画以上に映画的な書物、山田宏一の『トリュフォー、ある映画的人生』の3冊の精神を受け継ぐもの。ただ最初の2冊は、音楽の専門的な知識と楽譜を読む力がないと苦しいが、私は映画ファン・映画音楽ファンを対象にしたいので、予備知識ゼロで理解できるように書きたい。というより、映画音楽の楽しみをアップさせるような専門知識を学べるような本になれば……と思うのだが、あまり欲張ると焦点がぼけるか。
前にも書いたように、目次とそれぞれの項目で何を書くのかはほぼ出来上がった。その構成を考える作業と同時に、自費出版や協力(共同)出版について調べてきた。しかし、調べれば調べるほど、出版に必要な費用が想像以上に高額だと分かり、「本作りは金持ちの特権」「やはり貧乏人はインターネットで公開するしかないのか」と半ば諦めかかっているところで、一冊の本に出会った。
両国の隠居さんが書かれた
『ちょっと本を作っています 38万円で本ができた 個人出版が面白い』である。自分の本を出したいすべての人にお勧めしたい一冊。
カバーもなく、文字だけの簡素な表紙の本。書名のとおり、1000部を38万円以内で作ってしまったのだという。じゃあ、私が聞かされた150万〜300万という協力出版の費用は何だったのだろう??
その疑問に対する明確な答え、自費出版業者の実態から、本を書くアドヴァイス、ゴーストライターから本が書店に並ぶ過程まで出版業界の仕組みなどを丁寧に解説しているのが、この本だ。著者は出版業界に長年関わっているだけあって、「本」について詳しいだけでなく、とても読みやすい本にまとめている。途中でつまることなく、一気に最後まで読みとおせて、これまで知らなかった多くを学ぶことができ、しかも読み終わった後に再び「本作り」を頑張る気持ちが蘇ってきたのだから、本当に素晴らしい本だと思う。
著者は
「個人と出版社の経費折半の印象を与える『協力出版』の美名のもとでの客集めです。実際は、経費のすべてどころか、自分たちの利益や宣伝費も含まれています」と書かれている。やっぱりそうだったのか、と納得。
この本の中で
「本を安く作る方法の一番の方策は、外観にお金をかけないの一言に尽きる」ことを強調されている
。「たしかに、店頭で本を手に取ってもらうためには、カバーデザインは大切です。だからといって、装丁の良し悪しだけで、お客さんは本を買っているのでしょうか。それほど読者は、軽薄ではありません。やはり中身を見て買うのです」
私が取り組んでいるゴールドスミスの本なんかは、書店で偶然手にとってレジに持っていくような本ではないと思う。買ってくれそうな映画音楽ファンは、綺麗な表紙ではなく、中をぱらぱらとめくって目次の内容で判断するのではないか。表紙に力を入れる代わりに、100円でも200円でも安い値段を付けられたら、その方が嬉しいに決まっている。
本作りには「どのような読者を想定しているか? その人たちのニーズが何なのか?」が大切だ。
「読んでもらえる本は、読者のニーズを土台にした、著者の主張のある本です」という言葉を何度も読み返して頭の中にインプットした。
この本は元々著者が自身の
ブログに書き込んだ記事から発展したそうだ。誰もが簡単に作ることのできる「ブログ」の良さについても、共感できる持論を展開している。ブログはPRの場であり、これから発売される本のプレビュー(お試し)であり、そして本のアイデアを試行錯誤しながら発展させていく執筆活動そのものでもある。
本を書くにあたっての著者のアドヴァイスもとてもためになる。私はすぐにだらだらと長い文を書く悪い癖があって、自分でも「自分の文章はなんて読みにくいのだろう」とよく思う。隠居さんも「短い文章を書くことの大切さ」について書いている。また「ひらがなを多用した方が読みやすい」「文字の多い本の場合は、小見出しとページ割を考えるべき」「強調すべき点は言葉を代えて繰り返す」などのポイントは、すぐに実行できるもの。ちょっとした意識の違いが、大切だと思う。
両国の隠居さんは
「個人でも採算のとれる自費出版=個人出版」を目指して、一人で出版活動を続けている。彼のまわりにはブログをとおして出会った人たちがたくさん集まってきている。
リボンリボンさんが書かれた『
偽ブランド屋は今日も大流行り』という本をはじめ、心のこもった本の企画もたくさん進行しているようだ。私も隠居さんのブログをのぞいてみたが、隠居さんと彼のまわりに集まった「仲間たち」のやり取りを読むだけでも、人柄と熱意が伝わってくる。
今月大阪で、
隠居さんのセミナーがあることをブログで知った。渡米前で日程的には少し苦しいが、ぜひ行ってみたい。私が書きたい本は、隠居さんが手掛けるものとは傾向がかなり違うかもしれないが、もしかしたら何かアドヴァイスをしてくださるかもしれない。ところで、隠居さんはかなりお酒がお好きな方のようだ。今回はバスの日程を考えると、どう考えても二次会には参加できないのが残念だ。いや、本音を聞きだすにはやっぱりお酒が一番でしょ。
目標は200ページ程度の簡素なペーパーバック本。はじめの計画からは少し内容を削る必要があると思うが、その分、本当に重要な部分に絞り込んで濃い内容にしよう。これを1000円ぽっきりで出せたら、と思う。
そういえば、本家ホームページの方は更新が止まったままで何とかしたいなぁと思っている。でもブログの方が楽なんだよなぁ。とりあえずホームページはそのまま置いておいて、近いうちに「ゴールドスミスの本」だけのブログを別に作りたいと思う。新しいブログでは、その時々に書きあがった内容の一部を公開したり、製作日記を書いたりしたい。こっちのブログの方は、日記と映画の感想専用にしよう。じゃあ、ホームページは?? う〜ん。

0