2018/4/22  13:05

投資家の目線668(核実験中断と「朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか」)  
 4月21日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が核とICBM発射の実験を中断すると報じられた。一方、大韓民国(韓国)では「政府は終戦宣言と恒久的な平和体制の構築に向け努力している」(「終戦宣言と恒久的な平和体制構築へ努力=韓国統一部」 2018年4月18日 聯合ニュース)と報じられた。「【中央時評】統一は望んでいなかった…20代との対話=韓国(1) 中央日報」(2018年4月13日)によれば、韓国の20代は民族意識が薄いようである。無理に統一しないで、二国が平和協定を結ぶ余地はあるのだろう。

 「日本防衛秘録」(守屋武昌著 新潮社)には、2002年の韓国出張で南北軍事境界線へ車で向かったとき、ソウル周辺地域の人口増加に伴い、以前は北朝鮮の侵攻を防ぐため居住が禁止されていた地域に、増えた住民の住む高層ビル群が立ち並んでいたことが書かれている。また、軍事境界線から40〜50KMしか離れていないソウルとその周辺地域に総人口の半分近い2500万人が暮らしていることも書かれていた。経済自由化の結果として農村での生活が難しくなったことも理由として考えられるが、ソウル周辺への人口集中により、韓国は軍事面では脆弱性を抱えていると考えられる。その観点からすると、文政権の選択は間違っていないように思う。

 2002年の資料ではあるが、米軍駐留経費に占めるホスト国の負担割合は韓国の場合40.0%と低く(日本は74.5% 「世界一の気前よさ 米軍駐留経費負担 他の米同盟国26カ国分より多い」 2006年2月21日 しんぶん赤旗)、朝鮮半島の緊張緩和で在韓米軍を縮小すれば米国予算をより効率的に配分できるだろう。トランプ政権の「アメリカファースト」の考え方とも整合する。

 「朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか」(五味洋治著 創元社)では、「平和協定ができれば、まちがいなく国連軍司令部は解体されるでしょう」(p241)と予想している。日本にも朝鮮国連軍基地として、横田基地(東京都)、キャンプ座間、横須賀基地(神奈川県)、佐世保基地(長崎県)、嘉手納基地、普天間基地、ホワイトビーチ(沖縄県)が指定されているが、国連軍基地としては役割を終えるだろう。平和協定の締結に伴い在日米軍基地の役割が低下するのか、在韓米軍の縮小のために兵站基地等としての重要性が増すのかはわからない。パキスタンやインドの例を見ると核保有国を非核化するのは難しく、朝鮮半島情勢は予断を許さないが、緊張緩和のケースのことも考えた方がよいのではないかと思う。
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2018/4/16  5:55

投資家の目線667(日米経済対話と重商主義)  政治
 日本政府が新しい経済対話を米国に提案するという(「日米、通商で新対話 首脳会談で政府提案へ」 2018年4月14日日本経済新聞)。日米経済対話は昨年4月から始まったばかりで今まで昨年4月と10月の2回しか開かれていない。わずか2回しか開かれていない会合で新対話を提案するなんて交渉の引き延ばしを図っているとしか思えない。

 「世界経済の成長期にあって、保護貿易の立場に立ち、輸出産業を育成し、貿易差額によって国富を増大させようとした近世国家の管理経済」を重商主義という(三省堂大辞林第三版)。対米貿易黒字で国富を積み上げる東アジア諸国は、米国には重商主義政策とみなされているようだ。植民地時代の米国は印紙法など英国の重商主義政策に苦しめられ、それが米国独立戦争(独立革命)につながっている。米国にとって、重商主義は嫌悪の対象ではないだろうか。

 箱根駅伝でも有名な小田原の鈴廣かまぼこの鈴木悌介副社長は、「仮に小田原の費用の1割を、省エネや地元でエネルギーをつくることに充てれば、毎年30億円が市内に蓄積できる。そのお金を雇用対策や医療福祉に使えば、地域の活性化につながります。地元で事業している中小企業も元気になります」(再生エネの伝道師(1)鈴廣かまぼこ副社長鈴木悌介氏―地産地消で地域再生(仕事人秘録)2018/4/11 日経産業新聞)と言っている。以下の資料では小水力の発電コストは19.1円〜22.0円/kWhとされ、そのうち運転維持費は12.8円〜14.1円/kWhとされる(p.57)。運転維持費には人件費も含まれる。小水力発電の推進は地方に仕事を創出することになるのではないだろうか。地方に雇用が発生し、東京一極集中化のリスクが避けられるなら、小水力電力に税金を使って補助しても「リスクに備えた保険料」として正当化できるのではないだろうか。

コスト等検証委員会報告書 平成 23 年 12 月 19 日 エネルギー・環境会議 コスト等検証委員会
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_problem_committee/008/pdf/8-3.pdf

 対米輸出で外貨を稼ぐのは難しくなってきたのだから、エネルギーを自給して地方に雇用を増やすことは望ましいと思う。
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2018/4/9  7:36

投資家の目線666(ザ・コールデスト・ウインター)  
 「ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争」(デイヴィッド・ハルバースタム著、山田耕介・山田侑平訳 文藝春秋)は、朝鮮戦争を描いたもので、当時の米国政府と東京のマッカーサー司令部の関係、米軍の内部の様子がふんだんに記述されている。問題点は以下のようなものである。

・マッカーサー元帥の虚栄心が初期に国連軍の苦戦を招き、仁川上陸の成功が傲慢を生み、夏装備のまま冬に向かう朝鮮半島北部への進軍を続ける原因となった。
・ウィロビーをはじめとするマッカーサー司令部は、中国軍参戦の可能性を様々な情報から指摘されていたにもかかわらず、そのような彼らに都合の悪い情報は無視するか、過小評価した。アーモンド第十軍団長は中国軍を「洗濯屋」と呼ぶなど、人種差別主義の要素が相手を過小評価する原因となっているとの指摘もある。
・「東京の命令に戦場の現実をあわせる」という章があるように、アーモンドなどほとんど戦場に出ることはないマッカーサー側の将官の栄達のため、下からの要請はほとんど顧みられなかった。東京の司令部はこれから進軍するコースの地形も把握していなかったようだ。
・マッカーサー司令官は政府の意向を無視したり逆らったりする傾向にあったが、神格化された彼を米国政府も参謀本部も解任することに躊躇した。彼を諫める部下もいなかった。

 最終的には空輸によって改善されるが、貧弱な道路網は兵站や進軍に負の影響を及ぼした。それもあり、朝鮮国連軍は、空軍の掩護はないながらも人海戦術を駆使する中国軍に鴨緑江から押し戻された(兵站の問題は南下するに従い中国軍にも影響した)。当時と比べると半島内の道路網は格段に整備されているだろうが、地形そのものはそれほど変わるわけではない。本書に書かれている米兵の戦場体験はひどいもので、再び地上戦となった場合、おなじようなことが繰り返されるのではないだろうか。この記憶がある限り、できれば米朝全面戦争などしたくないだろう。

 金正恩氏の訪中について、中国は韓国に事前通知(「金正恩氏の訪中 中国が事前通知=韓国大統領府」 2018年3月28日 聯合ニュース)、同氏の訪中と時を同じくして米国連邦議会の代表団が訪中している(「李克強総理、米議員訪中団と会談」 中国網日本語版(チャイナネット)2018年3月28日)。またロシアは訪中直前に代表団が訪朝し、3月21日に朝露政府間で貿易、経済・科学技術協力委員会第8回会議の議定書を調印している(「朝露政府間貿易、経済・科学技術協力委員会第8回会議の議定書を調印」 2018年3月22日 朝鮮中央通信 (Naenaraより))。一方、日本の安倍首相は訪中をテレビで知ったというから6か国会議参加国の中で日本だけが知らされていないのだろう。中国政府としては、日本に伝えてせっかくの訪中をぶち壊しにされても困るのだろう。

 今年1月、既に中国の王毅外相が朝鮮半島の緊張緩和の動きを歓迎していた(『中国外相、朝鮮半島の緊張緩和を歓迎も「破壊者」出現に警戒―米華字メディア』 2018年1月17日 Record china)。3月初めにはロシアのプーチン大統領が『ロシアまたはその同盟国に核兵器が使用されれば、「速やかな反応」に直面することになるだろうとけん制した』(「プーチン大統領が米国を強く警告、年次教書演説で最新鋭核兵器を紹介」 2018年3月2日 bloomberg)と、同盟国へ核の傘を提供する可能性を表明していた。朝鮮半島で、「力の均衡」による緊張緩和が起こりつつあるのではないだろうかと思う。
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2018/4/1  11:03

投資家の目線665(JRのダイヤ改正)  ニュース
 3月17日のダイヤ改正で、阪和線羽衣支線から103系が撤退した。103系が多く運転されていた奈良線にも205系1000番台が配置され、営業運転が開始された(「205系1000番台,奈良線で営業運転を開始」鉄道ファンrailf.jp 2018年3月18日)。「奈良線第2期複線化事業(JR藤森〜宇治・新田〜城陽・山城多賀〜玉水間複線化)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)」において、「103系車両からの代替による低騒音型機器搭載車両の導入推進」が言われているので、103系からの置き換えは進むと思われる。

奈良線第2期複線化事業(JR藤森〜宇治・新田〜城陽・山城多賀〜玉水間複線化)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ) 平成27年12月18日 環境省HP
https://www.env.go.jp/press/101807.html

 関西地区では、和歌山線・桜井線(+紀勢線の一部)でも、2019年春から2020年春にかけて新しく227系56両が投入され、旧国鉄車両の105系・117系を置き換える予定だ。

和歌山線・桜井線への新型車両導入と車載型IC改札機を使用したICOCAエリア拡大について 2018年3月7日 JR西日本HP
https://www.westjr.co.jp/press/article/2018/03/page_12012.html

 21日にはJR東日本の高崎支社から115系が引退した。数年で「踊り子」に使用されている185系特急電車が退役し、E257系に代わると報じられている(「特急の国鉄車両消滅へ JR東、老朽化で数年内」2017.4.8 産経フォト)。新しい車両は、概して旧型車両より電力消費が少ない。輸出による外貨獲得が難しくなっていく中、省エネは外貨を効率的に使用するのに役立つのではないだろうか?

 4月15日には新潟駅高架第一期工事が完成する。その割には都内の駅で乗り継ぎがラクになる庄内地方の観光ポスターを見かけないが…。
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2018/3/25  9:07

投資家の目線664(米国の鉄鋼・アルミ製品輸入制限)  政治
 米国の鉄鋼・アルミ製品輸入制限の対象国に日本が含まれることとなった。『「日本の安倍首相らは『こんなに長い間、米国をうまくだませたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」。トランプ氏は22日、こう強調した』(『対日圧力再び、輸入制限発動、トランプ氏「もうだまされない」、FTA交渉にらむ。』 2018/3/24 日本経済新聞 朝刊)という。昨年から始まった日米経済対話について『日本にとって同対話は「結論を先送りする仕組み」(政府関係者)だった』(同前)ということなので、トランプ大統領の先の指摘は間違っていない。昨年9月には、北朝鮮情勢を口実に日米経済対話の準備会合に向けた麻生副総理の訪米を延期したこともあり、もう先送りは許されない。

 今回の輸入制限措置にオ−ストラリアや大韓民国は含まれなかったが、オーストラリアは米国インフラ投資に協力(「トランプ米大統領のインフラ計画、オーストラリアの年金が後押しへ」 2018年2月22日 Bloomberg)、大韓民国は自動車分野での譲歩(「韓国政府、米鉄鋼関税避けるため車で譲歩か」 2018年3月22日 朝鮮日報 )という取引が利いているのだろう。先日、ペンシルベニア州であった下院の補選では民主党の候補が勝利したが、「民主党のラム氏は鉄鋼とアルミニウムの輸入制限が労働者保護につながるとみて支持した」(「米共和、牙城でも傷、下院補選、中間選暗雲、政権と距離も、民主、白人労働者取り込む。」2018/3/19 日本経済新聞 朝刊)と、輸入制限措置については民主党も共和党と変わらない。

 安倍首相が昨年2月の訪米時に表明したように米国インフラ投資に協力するか、日系企業の現地生産を増やすか、対米輸出自主規制をするか、あるいはそれらの組み合わせか。投資の失敗、日本の雇用の減少など、これらの施策は日本にとってリスクがあるが、このリスクを引き受けなければ米国による日本への輸入制限措置は今後も拡大するだろう。どちらにしても日本の景気後退要因で、安倍政権には痛手だろうが…。









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2018/3/18  9:18

投資家の目線663(地方金融機関の取り組み)  金融
 昨年のクリスマス、岐阜県大垣市で大垣中央銀行が開発したチョコレートが販売された(「それぞれの3年目(上)地銀、預金が「お荷物」、脱・金融、チョコ開発の奇策(検証マイナス金利)」 2018/2/27 日本経済新聞 朝刊)。同記事によれば、大垣共立銀行はワインや米も販売したという。

 また、山梨県の都留信用組合は行政や建設会社、小売業者などと連携して農業法人を設立し、夏イチゴを生産する方向だという。地域活性化の狙いはあるのだろう(↓)。

貸出金・年金シェア1位『郷土と共に発展する』甲斐の国の信組その躍進の根源と未来像を探る 2017年5月3日 ビッグライフ21
http://www.biglife21.com/society/13155/

富士北麓の自然生かし特産品 都留信組が地域活性化へ試験販売 /山梨 毎日新聞2017年7月21日 地方版


 しかし、これら地方金融機関の取り組みの結果、特定の事業会社や個人の資金調達を目的に預金を集める機関銀行化する懸念がある。金融機関のメンツのために、損失が膨らんでも撤退を渋るかもしれない。それを防ぐためには、あらかじめ撤退のルールを決めておく必要があるだろう。

 「こうして銀行はつぶれた 米国S&Lの崩壊 The Greatest-ever Bank Robbery」(マーティン・メイヤー著 篠原成子訳 日本経済新聞社 1991年)には、米国のS&Lが規制緩和で不動産に直接投資していたことが書かれている。この直接投資に反対したのがケント・コルソン全米住宅建設業者協会常務理事で、「コルソンは、市場から資金を調達しなくてはならない建設業者に、保険付き預金を建設会社の運転資金に転換するだけでいいS&L所有者と競争させるなんておかしい、と主張したという」(「こうして銀行はつぶれた」p211)。地元企業から地域金融機関の商品開発に異論が出ないのは、それだけ地域産業が疲弊しているということだろうか?
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2018/3/11  8:53

投資家の目線662(日米間の通商問題)  政治
 米国が鉄鋼・アルミの輸入制限をする。製品価格の値上げによる消費者負担増を懸念する声もあるが、『米国鉄鋼協会のギブソン会長は1日「米国内の鉄鋼生産設備は約4分の1が稼働していない」と指摘』(「関税上げ、米与党も批判、政権と不協和音拡大、経済界には賛否の声。」2018/3/4 日本経済新聞 朝刊)するなど、稼働率を上げれば国内消費に必要な量は確保できそうだ。共和党の地方組織のネットワークを使えば、米国経済に大きな影響が出るかどうか判断する情報が手に入るのだろう。

 なお、輸入制限された鉄鋼やアルミは米国インフラ投資をなかなか履行しない安倍首相の元勤務先、神戸製鋼所がデータ不正事件を起こした製品だ。安倍首相は4月初旬に訪米するというが、担当者の麻生財務相を森友事件でクビにして、また日米経済対話を先送りするつもりなのだろうか?オーストラリアは輸入制限を逃れたが(「米輸入制限、豪を除外へ、発動前、他国にも可能性。」2018/3/10 日本経済新聞 夕刊)、年金基金からの米国インフラ投資への出資で、ある程度の合意ができたのだろうか?


 リニア新幹線建設では、談合容疑でゼネコン関係者に逮捕者が出た。「これが談合といわれるなら、もうリニアには手を出しづらくなる。大成と鹿島が徹底抗戦したくなる気持ちは分かる」(『【リニア入札談合】ゼネコンに衝撃「これが談合ならリニアできない」』 2018年3月2日 産経新聞)という発言も出ているが、その言い分が海外でも通じるだろうか?TPP等の経済協定は取引ルールを統一し、貿易をしやすくすることにある。そのとき日本独自の取引慣行は通用しない。経済団体は、それが分っていてTPP等の推進を後押ししているのだろうか?

 3月5日、6日の両日、日本産業新聞に「米カルテル摘発再起動 日本人、投獄の悪夢、「情報交換程度」危ない橋(CONFIDENTIAL)」が連載された。5日の記事には、『モリソン・フォースター法律事務所弁護士の渡辺泰秀によると「近年は米司法省も厳しく、司法取引の条件として収監者が元のポストに戻らないように求めている」という。他社への見せしめの効果がなくなるからだ。』という指摘もあった。カルテルに関わると社会的地位を失うなど、ロクなことがない時代になってきている。
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2018/3/4  9:37

投資家の目線661(新日鐵住金の東京地区閉鎖)  都市再開発
 板橋区舟渡にある、新日鐵住金の小径シームレス鋼管の製造工場が2020年5月をめどに休止される(2018年3月2日 新日鐵住金グループの中期経営計画について)。効率を高めるため和歌山に集約するようだ(「鋼管の製造を集約、新日鉄住金、東京地区閉鎖へ。」2018/3/1 日本経済新聞 朝刊)。最寄りの都営三田線西台駅からは徒歩約11分の場所になる。
 
 近隣には高砂鐵工本社工場、日本金属板橋工場、隅田川を下った北区神谷町には大同特殊鋼王子工場(東京メトロ南北線志茂駅、徒歩8分)という新日鐵住金グループが大株主となっている企業の工場がある。各社のHPによると、高砂鉄工はみがき帯鋼・みがき特殊帯鋼やステンレス製品など、日本金属は冷間圧延ステンレス鋼帯やみがき特殊帯鋼など、大同特殊鋼は焼入鋼帯や帯鋸の工場で、必ずしも板橋の新日鐵住金の工場に関わるものではないように見えるが、それらの企業の生産体制に影響はないのだろうか。

 東京都から大手企業の製造拠点撤退により、町工場も減少するのではないだろうか?「下町ボブスレー」なんていう物語を作っているヒマなどないだろうと思う。
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2018/2/25  9:49

投資家の目線660(年金基金と米国インフラ投資)  ファンド
 オーストラリアが、年金基金の一部をトランプ政権の米国インフラ投資に充てるようだ。同国のターンブル首相の訪米時には年金基金のファンドマネジャーも同行するという(↓)。

トランプ米大統領のインフラ計画、オーストラリアの年金が後押しへ (2018年2月22日 Bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-02-22/P4J3336S972801


 昨年2月の訪米時に、安倍首相は米国インフラ投資に10年間で1,500億ドル(約17兆円)出資することを表明した。次の記事のように、同投資に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金を使用するという一部で報道されたことに対し、安倍首相は「政府として検討しているわけではない」、「そもそも私に指図する権限はないので、パッケージとしてあり得ない」と昨年2月3日の衆議院予算委員会で答弁している(↓)。

GPIF活用した米インフラ投資、検討してない=安倍首相 (2017年2月3日 ロイター)
http://reut.rs/2kyXTVQ

 
 GPIFの2017年度の第3四半期の運用資産額は162兆円である(↓)。

平成29年度第3四半期運用状況  年金積立金管理運用独立行政法人
http://www.gpif.go.jp/operation/state/pdf/h29_q3.pdf


 17兆円は資産額全体の1割以上に当たる額で、10年間かけてとはいえ、それだけの金額を米国インフラ投資に集中させるのはアセットアロケーション上、リスクが大きすぎると思う。


 今回のオーストラリア政府の動きは安倍政権にプレッシャーになるだろう。GPIFが、政権に最近はやりの「忖度」をする可能性は否定できない。公益社団法人日本証券アナリスト協会の職業行為基準には、顧客等の信任関係にある者の最善の利益を図ることに専念し、自己や第三者の利益を顧客の利益に優先させてはならないとする忠実義務がある。年金基金とその理事も信任関係として代表的なものである。GPIFの理事が年金加入者の利益を顧みず、安倍政権の利益のために資金の一部を米国インフラ投資に充当するなら、忠実義務に違反することになるだろう。
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2018/2/18  10:31

投資家の目線659(ちばぎん証券兜町本社の移転)  都市再開発
 2月13日、ちばぎん証券兜町本社/東京支店が茅場町に仮移転した。SMBC日興証券は1月のSMBCフレンド証券との合併を機に、旧SMBCフレンド証券本社ビルを閉鎖し、兜町第1平和ビルに兜町支店を開設している。これで平和不動産の兜町プロジェクトの区画からテナントがいなくなった。両証券のビル以外の区画ではすでにビルが解体され、ほとんど更地になっている。

 なお、兜町では兜町第5平和ビルも大規模改装を行っていた。
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2018/2/11  9:37

投資家の目線658(東京23区内で大学の定員増禁止)  政治
 6日の閣議で、政府は東京23区内で大学の定員増を原則10年間禁止する法案を決定した。「人口の東京一極集中を是正するための施策を盛り込んだ新たな法案」(「23区大学、定員増10年禁止、法案決定、人口の一極集中是正。」2018/2/6 日本経済新聞 夕刊)だという。中華人民共和国も大都市への人口集中を抑制しようとしており(「中国、大都市人口を抑制、昨年末、北京・上海とも減少、違法建築取り壊し、出稼ぎ追い出し、渋滞・地価高騰、緩和へ。」2018/2/3 日本経済新聞 朝刊)、両国とも大都市への人口集中化のリスクを回避しようとしている。ブッシュ米大統領が「主食をよその国に依存しているような国家は独立国家とはいえない」と言ったという(菅沼光弘著「この国の不都合な真実 日本はなぜここまで劣化したのか?」 徳間書店)。他から聞くところによると、このブッシュ発言も、米国を人口が都市に集中するような国にしたくないという文脈からきたようだ。

 政府が盛んにミサイルの脅威を強調するなら、空襲で大きな被害の出る人口集中化を避けようとするのは当然だ。また、人口密集地帯で大地震のような災害が起きれば大きな被害が発生する。首都圏に若年人口が集中し、それ以外の地方が高齢者だけになれば、体力の衰えた地方の老人たちに救援活動を期待することもできない。都心部ではガソリンスタンドが閉鎖・解体されるが、災害時の給油はどうするのだろう?「東京都の歴史 県史13」(山川出版社 竹内誠、古泉弘、池上裕子、加藤貴、藤野敦)を読むと、江戸幕府は農村から江戸への人口流入による治安の悪化を懸念していたことが分る。寛政期の旧里帰農奨励令は江戸下層社会に流入した貧農を減らし、打ちこわしの前提条件をなくすことを目的としていたようだ。人口の都市集中化は社会的リスクが大きいと思う。

 都会に出ず、自宅から通える地元の大学に行くようになったら仕送りもなくなり、家計も少しは楽になるだろう。地元に住み続ければ、昨年11月に報じられた、大分のようなUターン組への「村八分」事件もなくなる。また、長く同じ場所に住んでいる人々の方が、信頼関係も地域社会への関心も強くなり、民主主義も実現しやすいだろうと思う。
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2018/2/4  9:14

投資家の目線657(森永乳業東京工場生産中止へ)  都市再開発
 森永乳業が近畿工場、東京工場での生産を中止する(2018年2月1日発表 森永乳業HP)。時期は、近畿工場は2019年12月、東京工場は2021年3月を予定している。東京工場は葛飾区奥戸にあり、最寄り駅は京成押上線の京成立石で、徒歩で10分少々かかる。近所にはスーパーライフやホームセンタービバホームがあり、駅前には商店街とイトーヨーカ堂がある。

 京成押上線は高架化され、京成立石駅前では南口が2021年度に、2022年度には北口の再開発ビルが竣工する予定である。森永乳業の生産中止も再開発による近隣の土地利用の変化をにらんだ動きかもしれない。


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2018/1/28  10:12

投資家の目線656(トランプ米大統領誕生から1周年)  政治
 米国でトランプ大統領が誕生してから1周年が立った。トランプ政権ができてからよく米国の分断がひどくなったと言われるが、それは疑問だ。パトリック・J・ブキャナン著「超大国の自殺 アメリカは2025年まで生き延びるか?」(河内隆弥訳、幻冬舎)には、オバマ大統領のことを『「わが国は、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ人、ヒンズー教徒、そして無信心の国である」。はじめて、アメリカにおけるキリスト教の優位を否定した大統領となった』と書かれている。

 また、アメリカンセンターJAPANのHP「米国社会 多様性と移民 概要」部分には、「過去、多くの米国の作家はメルティングポット(人種と文化の坩堝)という考え方、新たな移民は故国の習慣を放棄し米国のやり方に順応していくというイメージを強調してきた。典型的な例をあげるなら、移民の子供たちは両親の第一言語ではなく、英語を学んだ。しかしながら、米国人は近年、多様性により大きな価値を置くようになり、少数民族の集団は自分たちの文化的遺産を復活させ、祝うようになり、移民の子供たちはバイリンガルとして育つことも多くなった。」という。この、様々な地域から来た移民の「多様性」を認めることが米国の分断の根本原因ではないかと思う。移民の中でも、「故国の慣習を放棄し米国のやり方に順応」した側はトランプ政権支持になるだろうし、順応できなかった移民層は反トランプ政権になるだろう。同じ移民でも、前者にとって後者は秩序を乱す厄介者に過ぎない。

 トクヴィル著「アメリカのデモクラシー 第一巻(上)」(松本礼二訳 岩波文庫)に「合衆国には、連邦政府の存在を驚くほど容易にする事実がある。さまざまな州がほとんど同じ利害、起源、言語を有するだけでなく、同じ程度の文明の段にあることである。」と書かれている。それであれば、多様化により、連邦政府を維持することが厳しくなるだろう。米国の英語公用語化運動も、連邦を維持するための動きのひとつと考えられる。

 ゴードン・S・ウッド著「アメリカ独立革命」(岩波書店 中野勝郎訳)には、「アメリカ人の一般的な白人男性は、自分自身の耕作された農地を所有しているという観点から自由を捉えたのにたいし、インディアンの男性は意志の赴くままに放浪し狩りができることが自由であると考えていた」と書かれている。両者の自由を両立させることはできない。耕作の自由を認めれば狩場は制限されるし、狩りの自由を認めれば耕作地が荒らされてしまう。

 「米国は自由の国」といわれるが、あるのは制限された自由でしかない。連邦を維持するために米国のやり方に順応できなかった移民を強制退去させる方向に行くか、ミニ国家のように故国別に人々を分けて緩やかな連合体にする方向に行くかどちらかではないだろうか?
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2018/1/21  23:02

投資家の目線655(トヨタとマツダの米国現地生産)  ビジネス
 トヨタとマツダが共同で、米国アラバマ州で現地生産することが発表された。トランプ政権が重視する対日貿易赤字の緩和に役立つだろう。安倍政権も米国のインフラ投資にカネを出す気がないのなら、民間投資の金額も含めてもらえばいいのに。

 週刊エコノミスト2017年7月25日号土方細秩子氏の記事によれば、米国カリフォルニア州ロサンゼルス郡で2LDKを借りて生活するために最低必要な時給は30ドルだという。米国の平均労働時間は年間1783時間(2016年 OECDデータ)なので、年収にすると5万3490ドル(1ドル=110円で換算すると約588万円)になる。2016年の米国中間層の所得が約650万円と過去最高になったと報じられたが(「米中間層の所得、過去最高を記録 2016年」2017/9/13 日本経済新聞)、ロサンゼルス郡で2LDKを借りて生活するにはそれほど余裕がある水準の所得ではない。もし何かあればすぐにホームレスに転落しかねないだろう。より時給の高い企業が米国に増えることは米国人民にとって利益になる。

 日本は、どこでも作れるような製品の輸出で稼ぐことはますます難しくなるだろう。そのため、政府が、日本でしか取れない農産物の輸出や観光に力を入れようとするのは理にはかなっている。神奈川県横須賀市を舞台(母港)とするアニメ「ハイスクール・フリート」と横須賀の昨年12月9日のコラボイベント「明乃とましろのハイスクールフリートラジオ 横須賀市×ハイスクール・フリート 福引でハッピー!」(響ラジオステーション 2017年12月29日配信)に、上地横須賀市長とともに登場した小泉進次郎衆議院議員は「これから国も実は、観光を今すごく力を入れているんだけど、新しい分野としてアニメツーリズム、これをすごく力を入れているんで…」と発言していた。サブカルを使って小銭を稼いでいくこともひとつの方法だと思う。佐賀県はストリートファイター2とコラボしたり(『「スト2」とコラボ佐賀PR、県、ゲーム風のサイト開設、銀座にアンテナショップ。』2018/1/15 日経産業新聞)、静岡県沼津市はマンホールをラブライブ!サンシャイン‼仕様にして観光資源化しようとしたりしている(『「ラブライブ」マンホールに 整備資金、2日で目標達成、ソニー系・沼津市、ネットで。』2018/1/19 日本経済新聞 地方経済面 静岡)。墨田区の高木神社には「高木」つながりのためか、今季アニメ化された「からかい上手の高木さん」の立て看板がある。

 ジョン・W・ダワー著「容赦なき戦争 太平洋戦争における人種差別」(平凡社、猿谷要監修、斎藤元一訳)によれば、戦時中ウィリアム・ヘンリー・チェンバレンが『日本の貢献は「取るに足りない文化的業績のいくつか」、たとえば版画、漆塗り、造園、俳句に見出される。しかし日本は、インド、中国に比肩できる偉大な哲学上、宗教上の思想家を一人も生み出していないし、ギリシャ・ローマやヨーロッパの伝統の最上のものに匹敵する文学作品も作り出していない』と小冊子に書いているという。昔から日本は「サブカル」文化については評価されているようだから。

追記:アニメツーリズムについては、石川県の「湯涌温泉」×「花咲くいろは」、富山県「南砺市」×「サクラクエスト」のPA Works(本社は富山県南砺市)作品とのコラボが、2017年11月22日のJETRO Global Eyeで紹介されていた。
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2018/1/14  13:42

投資家の目線654(こうして銀行はつぶれた)  金融
 「こうして銀行はつぶれた 米国S&Lの崩壊 The Greatest-ever Bank Robbery」(マーティン・メイヤー著 篠原成子訳 日本経済新聞社 1991年)は、1980年代に起こった米国のS&L(Savings & Loan 貯蓄貸付銀行)の経営破たんに関する本である。

 1980年代、規制緩和を受けてS&Lは地域住民等への貸出しよりも、ジャンクボンドを購入したり、ディベロッパーとして直接投資したりするようになった。しかし、土地価格の崩壊などの影響で経営が悪化した。大手会計事務所は十分な手数料が得られれば資産価値の水増しに協力し、S&L所有者から多額の政治献金をもらっている政治家は規制当局に圧力をかけた。S&L所有者にもひどいものがおり、直接投資が多い南カリフォルニアのノース・アメリカンS&Lの資産の多くは、彼らが偽造した銀行預金証書だったという。

 無茶苦茶な経営の例として、同書ではチャールズ・キーティングが所有するカリフォルニア州のリンカーンS&Lが挙げられていた。役員には子供たちなど縁者を起用し、ジョン・マケインら後にキーティング五人組と呼ばれる上院議員たちに旅行をプレゼントしたり、献金をしたりして規制当局へ圧力をかけさせるのに役立てている。まるで安倍政権のお友達と監督官庁の関係のようだ。

 S&Lは、日本では相互扶助を目的とする信用金庫や信用組合に類似するものだろう。年初には北海道で3信金が合併した。今月中には宮崎県で宮崎信用金庫と都城信用金庫が、長崎県では長崎県民信用組合と佐世保中央信用組合の合併がある。昨年は静岡県で3組の信用金庫の合併が明らかになった。11日には三重県の桑名信用金庫と三重信用金庫の合併が正式発表された。これらの合併には、低金利に加え、地元の中小・零細企業の休廃業を背景とする取引先の減少にも原因があるようだ(「始動2018静岡の針路(1)信金再編、さあ本番――地域越え協調、着々、専門ノウハウ、どう獲得。」 2018/1/5 日本経済新聞 地方経済面 静岡)。融資などの低迷から、投資信託や保険販売の手数料で収益を上げようとしている(「北関東の22信金・信組 投信・保険販売 6割が強化、来期、本社調べ 手数料で収益確保。」 2018/1/10 日本経済新聞 地方経済面 北関東)。融資の低迷で投信や保険販売の手数料という新規事業で稼ごうとする信金・信組の姿は、当時の米国S&Lに似ているように思う。

 同書には、ロサンゼルス郊外にあるグレンフェッドという1983年に相互組合から株式組織に転換したS&Lの理事長の、「私を雇ったゴードン・クレットという男は、われわれが株式組織になった時、われわれが住宅にコミットしなくなるだろうということに気づき、彼はそうなってほしくないと思いました。相互主義というのは、地域へのサービスを第一と考えることでした」という言葉が記されている。投信や保険の販売への傾斜は、どこまで地域サービスに役立つか疑問である。地域へのサービス第一というやり方では金持ちにはなれないとも書かれていたが…。


 なお、キーティングのS&L経営には問題はなく、S&L産業を救おうとしている新しいS&L経営者の代表者と喝采を送った人物として、後にFRB議長となるアラン・グリーンスパンの名が挙げられている。もっともグリーンスパン自身は自著「波乱の時代 わが半生とFRB 上」(山岡洋一、高遠裕子訳 日本経済新聞出版社)で、キーティングが借入を危険なほど増やす前のことで、その時点の財務基盤には十分な流動性があり、不動産への直接投資を行っても安全だと結論づけたと書いているが。
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