2011.12.31 ベートーヴェン弦楽四重奏曲8曲演奏会(東京文化会館 小ホール)
年末にベートーヴェンの第九を取り上げることは、日本では日常の風景となっています。
日本人の人生観とベートーヴェンの作品には相通じるものがあるのでしょうか、この傾向はまだまだ続くものだと思われます。
私自身も11月に女子高校生だけの40名による第九を上演して、特別な作曲家としての認識が深まりました。
そして、長く弦楽四重奏曲の分野にも関心を深めていっています。
今年は東日本大震災があって、これを機に音楽の力とは何なのか、いや、私たちの生き方とは何なのか、
そんなことを考えていくと、ベートーヴェンに行き着いてしまうのです。
そこで、この度、東京まで出向いて、この演奏会を見てみようと思いました。
ベートーヴェン:
弦楽四重奏曲第7番 ヘ長調 op.59-1「ラズモフスキーNo.1」
弦楽四重奏曲第8番 ホ短調 op.59-2「ラズモフスキーNo.2」
弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 op.59-3「ラズモフスキーNo.3」
クァルテット・エクセルシオ〈西野ゆか(Vn)、山田百合(Vn)、吉田有紀子(Va)、大友肇(Vc)〉
弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 op.127
弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 op.130「大フーガ」つき
古典四重奏団〈川原千秋(Vn)、花崎淳生(Vn)、三輪真樹(Va)、田崎瑞博(Vc)〉
弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 op.131
弦楽四重奏曲第15番 イ短調 op.132
弦楽四重奏曲第16番 ヘ長調 op.135
ルートヴィヒ弦楽四重奏団〈小森谷巧(Vn)、長原幸太(Vn)、鈴木康浩(Va)、山本祐ノ介(Vc)〉
16曲あるベートーヴェンの弦楽四重奏曲、さすがに全曲を1日でこなすことは難しいのか(だって、12時間ぐらいは必要でしょうからねえ)、初期の6曲とハープ、セリオーソの合計8曲は取り上げられませんでした。
それでも、膨大な演奏時間の長さに私は耐えることが出来るのか、聴衆もある意味気合を入れないといけない環境です。
開始したのが14時、いきなりベートーヴェン中期の傑作、ラズモフスキーセットの3曲が演奏。
これはもう凄い曲の連発、聞いていてテンションが上がっていきます。
ラズモフスキー第3番になると、もう興奮が抑えられなくなり、フィナーレの第4楽章では感激の心境。
演奏者からも気合が感じられる熱い演奏だったので、この時点で私の満足度はかなり上がっていました。
クァルテット・エクセルシオの演奏が聞けたことも喜びのひとつ。
昨年、ショパンのピアノコンチェルトの室内楽版で演奏は聞いていたのですが、クァルテットとしての演奏を聞くのは初めて。
好感の持てる、いいクァルテットだなあと思いまして、これからも機会があれば聞き続けてみたいものです。
中期と後期の橋渡し的な存在のハープとセリオーソの2曲は取り上げられなかったので、このあとは後期の作品にいきなり入りました。
古典四重奏団の後期ベートーヴェン、とっても興味がありました。
以前、第14番を2度聞いて、とっても感動したのを記憶していましたので、今度も期待を持っていました。
やはり、彼らならではの知的で斬新なアプローチにはおもしろく思いましたし、あの複雑な曲を暗譜で演奏するのですから、驚愕してしまいます。
第12番を演奏終了の時点で、すでに辺りは暗くなっていました。
そう、17時を超えていたのです。
古典四重奏団の哲学に深く感銘を受けたのが第13番。
初演の際、あの大フーガが不評だったこともあり、後にベートーヴェン自身の手によって、最終楽章の第6楽章が書き換えられるという作品。
今日の演奏では、第6楽章が大フーガでした。
聞いて思ったのは、「やっぱり最終楽章は大フーガでないと」と確信したこと。
だって、第九でも美しい第3楽章の後に、あの長大なスケールの第4楽章があって、楽曲が成立するのです。
第5楽章のカヴァティーナの比類なき美しさを味わった後、15分を越える大フーガは感動ものです。
この日の演奏、特に大フーガはとにかく凄い演奏でした。
感動のあまり、涙腺が緩んでいた私。
ブラボーが連発して、メンバーは何度もステージに呼び戻されていたのも納得です。
ここで30分の休憩だったので、気分良くしていた私はビールとサンドイッチを戴いたのですが、これが裏目に。
残りの3曲の最中、睡魔が襲ってきたのです。
椅子にずっと座っていたから、お尻も痛くなっていたのに、まさか寝てしまうとは!
なので、第14番と第15番の記憶が薄いのです。
これはいけない、休憩時間の際、水を飲んで眠気を取り除いたのです。
ということで、一連の弦楽四重奏曲の最後に位置する不思議な曲の第16番は、しっかりと聞けました。
簡潔なスタイルで書かれたこの曲、でもなんだか意味深げなものも臭い、私のツボにはまっている曲なので、これは満足でした。
終演した時刻は21時をかるく越えていまして、7時間以上も聞いていたことになります。
思ったのは、大晦日にいろんなことを思い巡らしながらベートーヴェンを味わうことには意味があるということです。
どうやら、私にとってのベートーヴェン、特別な存在となりそうです。

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