6月13日「リヤード」
オレはどうやら寝相がよくない。
シッポは夜中に度々オレの足を引っ掻いたりするけれど、それもオレが寝返りを打った拍子にシッポを蹴っ飛ばしたり押しつぶしたりしたりしている所為だということが研究者筋から明らかにされている。今回その犠牲になったのは
EPAの同僚リヤード。夜中に何度か裏拳やローキックを浴びせてしまった。すまぬリヤード。
エコハウスはジャルート村のはずれの島の先っぽに位置している。
全部で5棟からなるバンガローサイトだ。一棟が二部屋からなり、それぞれが4畳ほどの広さがある。壁から天井、床から窓に至るまで全てが天然素材で出来ている。骨組みのみが木材でそれ以外はパンダナスの葉を編んで作ってある。立地条件からか風通しが良く、エアコンなどなくてもまったく快適に眠る事が出来る。というか、そもそもジャルート・ジャルートには電気がないので仮に熱帯夜でも我慢するしかない。
意外と快適で涼しいエコハウス、隣にインド系の大男が寝ていてもオレは快適に生活する事が出来た。が、彼が快適だったかどうかは定かではない。すまぬリヤード。
2日目はそんなリヤードが一日のプログラムを担当する。彼の担当パートは「生物多様性」。マングローブがあり、サンゴが発達しているジャルート・ジャルートはまさにうってつけだ。かと言って、単にリーフやマングローブを歩いてもあまり意味はなく、やはりここは子供達の感性を触発してやることに意義がある。そこでリヤード考えた。
1.ジャルートの地図を描かせよう。
2.友達の似顔絵を描かせよう。
3.1と2でイマジネーションと観察感を養って、リーフに出て生物の観察記録をつけさせよう。
4.イマジネーションと観察眼をもってマングローブに行こう。
ふむ。いいね。いいプログラムだと思う。子供達も出会って間もなくて硬いからそうやってプログラムの中でアイスブレイクを図るのはうまいやり方だね。
レロジ隊員のナイスアシストもあり、プログラム1と2はスムーズに進んだ。子供達も楽しそうだった。自分の生活する島の地図を描くという作業は殆どの子供達にとって初めての経験だったようだ。
問題点はプログラム3から見え始めた。
リーフウォーク。
子供達を三人ごとのグループに分けてそれぞれに発見者、解説者、記録者という具合に役割を与える。子供達はグループ内の各役割に従って発見した珊瑚礁の生物を観察、記録するのだ。本来ならばこのアクティビティーはスノーケルをしながら泳いでやる予定だった。しかし準備不足と不手際でスノーケリングマスクを手配する事ができなかった。このリーフウォークは苦肉の策だったのである。
ここでこの苦肉の代替案が思いっきり凶と出る。
子供達、リーフを歩いての生物観察記録に
まったく興味を示さない。
さんさんと太陽の照りつける遠浅のリーフには魚は居なくともカニやら貝やらがいるのに子供達はどこ吹く風。彼らにしてみたらまったく珍しくも面白くもないのだ。しかも彼らにとって貝やカニは観察するものではなくて捕まえて食べるもの。観察して記録をつけることに興味を抱かないのはしょうがないことなのかもしれない。実際、これにはちょっとまいった。オレも幾つかのグループを率いてリーフに立って、啓発を促しながら試しはしたが、なかなか子供達の興味をひきつけることはできなかった。それでも子供達をノセながらプログラムを進行して、エコハウスに戻った時にはいち早く戻った男の子達が早々とバレーボールに興じていた。リヤードとオレが落胆したのは言うまでも無い。
午後は
マングローブウォーク。
オレが以前にコラ息子や板長とマングローブサイトに来た時は地面からニョキニョキ突き出す根っこを目の当たりにし、なんともいえぬ感動を感じたものだがやはりローカルの子供の反応は薄かった。自然に対する関心をなんとか引き出そうと試みるも反応はイマイチ。
確かに、自然豊かな土地に育った子供に自然について興味を持て、というのはある意味では釈迦に説法なのかもしれない。マングローブどうのこうのではなくても取り敢えず子供達が楽しそうだったことだけが唯一の救い。
マングローブサイトを後にしてエコハウスに戻り、子供達はウクレレで遊んだりバレーボールをしたり思い思いに遊んでいる。なんとも楽しそうだ。そんな子供達を見てリヤードはまた独り言ちるのだった。
リ:「何が生物多様性だ。オレが今日のアクティビティーで生物多様性について何を説明できたって言うんだ・・・。」
そう嘆くなリヤードよ、少なくとも彼らは物を観察するという事を試みる事が出来たんだ。貴重な体験をお前が与えた事は紛れも無い事実だよ。
↓すまぬリヤード。リヤード仕事は出来るし、頭はきれる。が、いかんせん愚痴と皮肉と文句が多すぎる。でもやっぱり仕事はできる。
↓なんちゃってインタープリター。子供の反応はいまいち。
↓マングローブウォーク。感動してるのはオレとレロジ隊員だけ。
今日の単語
untidy sleeper 寝相が悪い I’m an untidy sleeper….
Observant eye 観察眼 He sharpened their observant eyes.
Last resort 苦肉の策、最後の手段 He decided to go reef observation as his last resort.

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