期待したような話ではなかったが面白かった
原題はPoint Of Impact。1993年に原書刊行され、和訳が出たのは平成11年。現在12刷でした。映画化されて今年公開されたようですが、それは見てません。ではどうして今頃この本を読んだのかというと、紹介されていたブログがあったのと、それからタイトル故です。原題を直訳すれば「衝突地点」とでもなるんでしょうか。ですが、この邦題はいかにも不可能に挑むというイメージがあり、惹きつけられるものがあります。
もともと翻訳小説はあまり読まないのですが、それは日本の小説と海外の小説では時間の経ち方が違っているような気がするからです。とても抽象的な言い方なので、御理解して頂きにくいとは思いますが、日本人の作家の多くは、物語の構成を比較的早めに提示してくれる傾向があり、それに慣れているとなかなか全貌が見えない翻訳作品はリズムに乗れるまで集中力がもたなかったりします。逆に私が日本の映画をほとんど見ないのも同様で、邦画で時々目にする「ため」のような場面が、どうも無駄にしか思えなくていらいらするというのがあるでしょう。
この本においても、何が行われようとしているかがわかってくるのは、上巻の半分近く進んでからなので、多少つらい点はあったものの、なんとか乗り切ることができました。そこから先は比較的展開が早く、山場も数回設定されているのでかなり読書速度も上がりました。後半は先を読むために多少読み飛ばしたところもあるかも知れません。
ストーリーです。主人公ボブ・リー・スワガーはベトナム戦争で活躍したスナイパーですが、相棒の観測手と共に狙撃されて退役、以後はアーカンソーの山中でライフルを共に生活しています。彼の元に「新たに開発された銃弾のテストをしてほしい」という男が来訪し、これに応じたスワガーですが、自らが狙撃されたシチュエーションの裏返しでの射撃(つまり自分と仲間を撃つという状況)をさせられます。からくりに気付いたスワガーに語られた依頼は、「ベトナムで彼を狙ったロシア人の狙撃手がアメリカ大統領を狙っている。それを阻止するために手を貸してほしい」というものでした。因縁の相手の出現にこの依頼を受諾したものの、さらに巧妙な罠が仕組まれていました。一方、以前に狙撃に失敗して出世街道からはずされたFBIの捜査員ニックは、ニューオリンズ空港近くのモーテルで、彼に連絡を取ろうとした情報屋が惨殺されているのを発見します。彼は宿泊する時に、「コーラの自販機に近い場所の部屋がいい」という謎の依頼をしています。スワガーとニックのふたりの軌跡がいかにして交わり、そしてどのように反撃に転じるかというお話。
ええ、面白かったと思います。人物が上手に配置されていて、終わってみれば無駄な登場人物はほとんどいません。ストーリー展開も結構強引ですが、まあアクセプタブルです。銃器についての基本知識は、さほど要求されないと思います(いや、拳銃で100メートル先の的が狙えるとか思われると困りますが)。ただ、「極大射程」というタイトルからは、狙撃の常識をはるかに超えた距離でいかにヒットさせるかというなんだかんだを期待していたのですが、スワガーも、他に登場する狙撃手も、1000ヤード以上、あるいは1マイルくらいの距離でも思ったところにほぼ狙い撃てるくらいの腕前で(それはとてつもなく素晴らしいことなのでしょうし、実際難事なのでしょうが、小説内でびしばし命中させると簡単なことに見えてしまいます)、彼らの腕をもってしても不可能と思えるような距離に挑戦するわけではなかったのが残念でした。
しばらくネタバレするので反転します。
小説としての粗がないわけではなく、たとえば伏線の張り方はかなりわざとらしいと思えます。最後の最後に用意されている仕掛けは、とても親切な提示がなされていたので、ちっともびっくりしませんでした。タクシーの運転手にしても同様。山中でのニックの行動も読めてしまって・・・ 多分作者はかなり親切な人なんだろうなと思いました。さらに、上巻で「スワガーの敵は、かれを狙撃したというロシア人ではなかった」という最大のサプライズが、裏表紙の内容紹介でほぼ明かされていたのももったいない。
さて、原作が面白かったのなら映画を見たいのかどうかなのですが、この内容を2時間程度で映像化できるんだろうかという疑問を抱きました。後半は流れのままで構わないにせよ、前半はきちんと語っておかないとサプライズをもたらせないのは確かで、しかしそこを丁寧にやっていると間延びしそうで。ただ、映画のトレイラーを見たところでは原作のシーンは結構そのまま描写しているようなので、本当に尺が足りているのか、盛り込みすぎて寸詰まりになっていないのか、という疑問を持ちました。まあ、DVDになるかテレビ放映されれば見るでしょう。

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