特に新規な要素はないが、依然としてフットボールシミュレーションの極限点
既に数ヶ月前に現在のv2.5は公開されていたのですが、レジストレーションができないままで、今回ようやく登録が可能になったので動かしてみました。
以下、PMFBと略しますが、このソフトは、フットボールチームを選手のドラフトからプレイメイク、プレイコールまでを行い、勝敗を決するというフットボールシミュレータです。
私が購入したのはMacintosh版ですが、Windows版も存在します。レジストレーションフィーは25ドル。
購入先
もともとこのソフトがどのようなバージョンの変遷を辿ったのか、いい資料がなかったのでよくわからないのですが、多分このグラフィックスからすればApple IIの頃に開発されたのではないでしょうか。私が初めてこのソフトを知ったのは、PC9801RAを使っていた頃であり、今から15-20年ほど前ではないかと思います。付属チームがいくつかあって、Badmanというチームが一番弱いのですが、まずはこのチームに勝つのが最初の目標。あとは適当にプレイを作って遊んでいたのですが、その後多摩豊氏による解説書が発売され、この本でかなり奥行きを広げることができました。
その後(?)、最初はブローダーバンドかどこかから出ていたゲームがPlayMaker Software Inc.からオンラインで販売されるようになり、v2.1.4を登録。日本語のメーリングリストもできたので、数回リーグ戦に参加しました。ひたすら中央部のランプレイとショートスクリーンでちまちま攻める作戦で、なんとか2-3位にはつけられるのですが、優勝するチームは「なんで?」と思うくらい強いチームでした。
さらにバージョンは2.2、2.3、2.4と上がっていったのですが、この頃になるとプレイしている人が減ったのか、クローズドでやるようになったのか、日本でのコーチ募集は見かけなくなり、私もチーム作りはお休みしてしまいました。そうするうちに今回v2.5が公開されたという流れです。
順番に紹介していきましょう。このゲームはフットボールを題材にしているものの、アクションの要素は全くありません。プレイヤが担当するのはチームのヘッドコーチで、一定の条件の元に少しでも強いチームを作り上げ、それを他のプレイヤのチームと対戦させて遊びます。試合が始まった場合、いちいちプレイコールを出すことも可能ですが、最もスタンダードな楽しみ方は、一度フィニッシュさせてしまったプレイブックを全てコンピュータに任せてしまい、純然たるプレイブック同士の勝負をさせるということになります。
最近では、家庭用ゲーム機のフットボールゲームなどでも、プレイをデザインできるような機能がついていますが、このソフトにおけるプレイメイクの自由度は半端じゃありません。何度も何度もテストを重ねたあげく、QBからピッチされたボールが、HBにスピードを落とさせることなく渡り、オフェンスラインがこじ開けた穴につっこみ、迫り来るディフェンダーをWRが見事にダウンフィールドブロックでぶちかましてHBが独走・・・というのが決まるとこたえられませんし、「ここで来る筈」の4th downギャンブルを見事に見破ってトリックプレイを潰しきるのも耐えられない快感です。

まず実施しなければならないのはチームのドラフトです。各選手には名前、ナンバー、ポジションといった属性と、スピード、ストレングス、アジリティ、インテリジェンス、ディシプリンの5種類の能力値が設定されます。一般にはこれらを(ルールの範囲内で)どのように配分するかはヘッドコーチたるプレイヤの自由です。ただ、所属するリーグによって配分制限が異なるので、その範囲で一点豪華主義にするのか、全体に能力を高めるのか、出場選手を絞るのか、多彩なメンバー交代を可能にするのか、オフェンス偏重かディフェンス偏重か、といった裁量が許されます。

次にプレイデザイン。これが最も時間を費やすところです。オフェンスでいえば、オフェンスラインのアライメントを決め、バックスの配置を決定。QBはアンダーセンターかショットガンか。スナップを受けたQBはボールをHBにハンドオフするのかピッチするのか、ドロップバックしてホットレシーバーにタイミングパスを投げるのか、ロールアウトして時間を稼いでディープゾーンに走り込んだレシーバーにロングパスを投げ込むのか、あるいは浅いゾーンに出たHBにスクリーンパスを投げるのか、などの様々なチョイスをチョークボードエディタ上でデザインします。もちろんブロッキングスキームもきっちり決めておかないと、超人的なHBといえども走り込む穴が開かないと宝の持ち腐れになります。
一方ディフェンスではディフェンスラインがどのようにオフェンスラインに対峙し、パスシチュエーションではQBめがけて殺到するのか。ラインバッカーはオフェンスのどのような動きをキーにして反応し、パスカバーに回るのかランストップに出るのかブリッツをかけてQBをしとめるのか。セカンダリーは快足自慢のWRといかに勝負してパスを妨害し、あわよくばインターセプトを狙うのか、をいちいち決めていきます。
ちなみに提示してある画像は私が適当に選手を並べただけで、しっかり検証もできていないのですが、オフェンスは オフセットIフォーメーションから右のオフガードにFBのリードブロックに続いてHBが突っ込むプレイ。ディフェンスはスタンダードな4-3ディフェンスで浅いゾーンを3人のラインバッカー、深いゾーンをふたりのセイフティが守り、CBはそれぞれWRをマンツーマンでマークするというプレイです。ただ、これだとオフガードの穴がしっかり開かないせいか、HBは毎回オフタックルに流れてしまい、思ったホールに突っ込んでくれません。
用意するプレイは10や20ではきかず、中央部のランプレイ、オフタックルをつくプレイ、オープンに展開するプレイなどランプレイだけでも10種類くらいは作っておかなければなりませんし、パスプレイも成功率の高いショートパス、相手が対応していないとわかるや連発可能なスクリーンパス、一発逆転を狙ったロングパスなどを作っておきます。キックシチュエーションでは、普通にフィールドゴールやパントを蹴るプレイを用意するのは当然ですが、トリックプレイで奇襲をかけるプレイもひとつは混ぜておかないと、いざという時に困ります。

そして、これらプレイデザインが重要なことは当然なんですが、作ったプレイに命を吹き込むために重要なのがAIの設定。いくつめのダウンで、フィールドポジションがどこで、得点差が何点で、試合の残り時間がいくらというので選択されるプレイを絞り、さらにプレイに優先順位を与えます。この優先順位は試合中に自動調整することが可能で、つまり相手に対して有効なプレイは反復して使用することが可能となります。ディフェンスも同様。相手の攻め手を予想して、有効と思われるプレイを選択するように調節しなければなりません。

ある程度プレイが準備できれば、練習場へ。自軍のオフェンスとディフェンスが相対し、プレイのタイミング、カバーに穴が開いていないか、ペナルティが出ないかなどをテストして、プレイを練り込みます。
そうして実際の試合に赴くわけですが、この試合の演出はとてもそっけないものです。画面上での動きは練習場のそれと変わらず。同じマークで描かれた選手達がコマ送りで動くのを見ているだけ。プレイが止まるたびにアナウンサーがプレイのレポートをしてくれますが、これもテキストのみ。観客はビッグプレイが決まれば歓声を上げるし、ボーンヘッドが出るとブーイングしますが、パターンはそんなものです。それなのに、ゲインした、ロスしたの数ヤードごとに一喜一憂できる、なんとも変わったゲームなのです。
このようなゲームが成立するというのも、サイドラインのプレイコール(さらには試合前に立てられたゲームプランと、試合中のアジャストメント)が大きく試合を左右するフットボールという競技の特徴(もちろんプレイごとに試合が止められて、そのたびに作戦を考えることができるというゲームシステム)があってのことでしょうが、その要請に見事に応えた名作シミュレーションです。ただ、重要なことはフットボールの基本的なルールはちゃんと知っておかないと、ベーシックなプレイをでざいんすることすらできません。そういう意味ではハードルの高いゲームともいえるでしょう。
バージョンアップにも関わらず実現されていないことが数点。スナップ前のモーション、シフト、選手の疲労などです。また、これが入るとゲームそのものが変わってしまいますが、怪我の要素が導入されることもありませんでした。特に、一人の選手は一回の攻撃で一度しかボールを持つアサインメントを与えられないという制限もそのままで、ここが緩和されればフリーフリッカーなどの派手なスペシャルプレイを実現させることができるのですが。