「No Rewind by The Orchestra」
レビュー(ELO関連)
ELO云々を抜きにすれば、素晴らしいポップアルバムだと思います

またも古いアルバムについて書いております。ここをごらんの方の多くは既にお持ちだと思いますし、このバンドについて語るのも時間とスペースの無駄遣いかも知れませんが、もしご存知でない方がおられたらいけないので、この機会にご紹介しておきます。
ELOが解散した後、Bev Bevanが名称を継承してELO Part 2を結成したのですが、結局Bevは1999年に「同じ曲を繰り返し演奏するのに飽きた」などといったステートメントを残してELO Part 2の消滅を宣言しました。ELOという名称の所有権はJeff LynneとBevにあり、BevがPart 2を結成するのにあたっても、Jeffとの交渉の後に名称の使用が許されたものの、Part 2であることを明記することとともに、Bevがいるバンドについてのみ使用が認められるという条件がつきました。
今から考えると、JeffがELOを復活させるためにBevから名義を完全に買い取ったということ、BevがMove再結成のアイデアを温めていたこと、などがこの背景に存在するのではないかとも思えます。ただ、Bevが抜けてしまったことでバンド名が使えなくなってしまい、残されたメンバーは新たな名義の元に活動を続ける道を選びました。そこで選ばれた名称がThe Orchestraでした。当時もファンからは「インターネットサーチにかかりにくい」と不評だったものです。メンバーは、Eric Troyer (vo/key)、Parthenon Huxley (vo/g)、Kelly Groucutt (vo/b)、Mik Kaminski (violin)、Louis Clark (orchestral arrangement/key)、Gordon Townsend (d)です。
そうして彼らが初めて発表したアルバムが、2001年発表のこのアルバムNo Rewindでした。とはいえ、レーベルとの契約はなされておらず、スピンドルにもLimited Editionと記されただけ。配布はFace The Music経由またはギグ会場での直販という形でした。さらに付言するならば、現在もなおレコード契約はなされておらず、しかもイニシャルプレスが完売してしまって入手不可能状態です。昨年には南米ツアーに際して再プレスしてジャケットも差し替えて会場販売することになったのですが、音質に問題があったなどで販売は中断しているはずです。
とすれば、これは契約すらもらえない駄作アルバムなのでしょうか。いえいえ、そんなことはありません。このアルバムは極めてポテンシャルの高い傑作アルバムなのです。では内容に触れていきましょう。まずプロデュースですが、Eric Troyer、Parthenon HuxleyのふたりとEelsのJim Jacobsenによって行われ、録音はニューヨークやLAなど、製作に要した期間は2年半とのことです。トラックリストとクレジットは以下の通りです。
Jewel and Johnny (P. Huxley)
Say Goodbye (E. Troyer)
No Rewind (E. Troyer)
Over London Skies (P. Huxley/B. Bevan)
Twist & Shout (Medley/Russell)
Can't Wait To See You (P. Huxley)
If Only (E. Troyer)
I Could Write A Book (E. Troyer)
Let Me Dream (E. Troyer/M. Kaminski)
Before We Go (K. Groucutt/E. Troyer/P. Huxley)
大ざっぱにまとめると、Ericの曲が5曲、P. Huxが3曲、Kellyが1曲でカバーが1曲という構成です。そうなると音楽的な中心はEricということになるのでしょうが、このアルバムで光っているのはP. Huxの曲です。Jewell & JohnnyはMr. Blue SkyかThe Diary Of Horace WimpかというベースラインとLouisの十八番とも言える跳ねるようなストリングスが印象的なアップリフティングな曲です。この一曲だけでELOファンはぐいぐい引き込まれてしまうことでしょう。それからOver London Skiesはクレジットでお分かりの通りBevとの共作曲です。恐らくBevは作詞だけをしているのだと思われます。この曲はPart 2時代からステージで何度も演奏され、ファンにも親しまれていたこともあって収録されたのだと思われます。この曲はスローな展開のバラードですが、やはりLouisのアレンジが秀逸で、チェロをメインにフィーチャーしたストリングスがバンドの演奏と見事に溶け合っています。Can't Wait To See Youも非常にまっとうなポップソングなんですが、やはりストリングスが効果的なのに加えて、ところどころに挟まれたコーラスなどの小技が冴えています。このアルバムでのP. Hux曲の弱点といえば、エンディングがあっさりしすぎていることくらいでしょうか。
一方、Ericの曲は悪くはないのですが、全体的に地味な印象が強いです。ただ、MikのバイオリンはEricの曲で光っており、ギターソロのかわりにバイオリンソロが入っているような妙な縛り感すら覚えます。彼の曲の中でのベストはタイトルチューンのNo Rewindでしょうか。皆様予想された通り、テープの逆回転が多用された曲ですが、恐らく妙なメッセージは入っていないように思います(いえ、逆回転で聴いたことはないのですが)。まあ、Parthenonの曲の方がいいというのは単に私の独断ですから、人によっては感想が違うかも知れないですし、あまり信じ込まないでください。それから、Twist & ShoutもリードはEricですが、非常にゆったりとした導入から後半ストリングスを絡めて盛り上げます。
さて、敢えて文句をつけるとすればKellyの存在感が希薄なことです。ライブでは3人のボーカリストはほぼイーブンにボーカルをシェアしていますし、聴衆もKellyを期待して聴きに来ている人が多いでしょう。実際、彼のボーカルは極めて特徴的ですし、アルバムでも是非その声を聞かせてほしいところなのですが・・・このアルバムでのKellyがリードを歌う曲は1曲だけなのです。Kellyは彼なりに朗々と歌っているので、そういう意味では好感は持てますが、ただまあ、普通の曲ですね。この1曲もKellyだけでなくEricやParthenonの名前がクレジットされているので、Kellyが自分では完成させることができなかったのでしょうが、誰かの曲をKellyに歌わせるという選択肢もあったように思います。たとえば、Let Me Dreamなんかだと、Ericが歌うよりKellyが歌った方がしっくりくるような気がします。
総じて言って、The Orchestraのアルバムだからなんだかんだといろいろ意見を付けるものの、これが全然関係ないバンドのアルバムだったら両手をあげて大推薦しているでしょう。ELOかといえば確かにELOではないのですが、しかしELOを非常によく感じさせてくれるアルバムです。気になる人は
オフィシャルサイトでサンプルクリップを聴いてみてください。
なお、最後についている隠しトラックは、MikのバイオリンとEricのピアノが掛け合いをしている小品です。

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