「企業を高めるブランド戦略」
ブランドがマーケティングの世界で重要な問題になったのは1980年代の終わりごろのアメリカで、マーケティングや経営の問題としてブ
ランドと向き合い正面から取り上げていこうという動きが始まったのは、このころからである。
日本でも90年代の後半に、広告主からの要請でブランドを広告代理店が取り上げるようになった。
ここで言うブランドとは、ルイ・ヴィトンやエルメスのような「ファッションブランド」のことを指しているわけではない。
強いブランドはM&Aの対象
80年代の終わりになって、アメリカではブランドへの関心が急速に高まった。直接な
原因は、消費財企業の多くが行ったM&Aである。強いブランドをもった企業を買収すれば長期的に安定した売り上げが見込めるし、強い
ブランドを一から立ち上げるには時間と費用がかかりすぎる。企業がブランドを買うことによって時間を買ったとも言える。
ブランドと消費者
企業のブランドマネージメントとは別に、消費者の立場からすれば、「ブランドとは、市場で売られているモノ
やサービスを、買い手である消費者が『特定の主体によって売られているモノやサービスだ』と認識すること」とみることができる。つ
まり、「消費者の認識のあり方」が消費者にとってのブランドの意味なのだ。たとえば,
自動車に「メルセデス」という名前がついてあるから、その車が「メルセレスベンツ」問いブランドに変容するわけではない。道を歩い
ている人が駐車している車を見て、「あ、メルセレスベンツだ」と認識すること、それがブランドという「事態」なのだ。車に何の関心
ももたず、また知識もない人にとって、駐車している車は邪魔なモノとしか映らないはずである。ブランドとは、消費者が商品世界うぃ
お認識する一つのありかたを指している。
ブランド戦略とはなにか
短期的売り上げよりもブランド価値を優先する。「企業戦略レベルのブランド戦略とは、他のマーケティング目標よりも、ブランドを高
める目標を優先させてマーケティング活動を計画・実行することである。そしてブランド価値増大の結果として、自己の事業活動をより
有利に推し進めようと意図する企業戦略である」
企業は事業を有利に導くために、さまざまな活動を行っている。たとえば、優秀な製品を開発して他社に先駆けたり、あるいは流通にた
いして影響力を保持することによって優位に立とうとしたりする。ブランド戦略とは、こうしたいくつかの企業戦略のうちで、特にブラ
ンド価値を高めることに力点をおいて、さまざまなマーケティング施策を計画し、実行していく過程のことである。
事業タイプとブランド戦略
パッケージ型ブランド…パッケージ型商品の特徴は、消費者が自由に手に取って多くの競合品のなかから自分で選択できる状況にあるこ
とである。パッケージ型商品のブランドでは、商品が「手に取って」選択されるために、店員などの助けを借りなくても、ブランドそれ
自体で商品がうれるような仕掛けもとめられている。
成分型ブランド…「成分型商品」とは産業財のような、それ自体は一般の消費者が購入しない商品である。なぜ「成分型」と呼ばれるか
と言えば、一般の消費者にとって産業財商品は「その製品に含まれている成分」にすぎないからである。こうした分野では、ブランドよ
りもむしろ商品の機能や価値が重要な要素と考えられている。製造プラントのような資本財の価格は一般的に高価だし、購入する前に、
その機能が専門家によって入念にチェックされることも多い。また、顧客に対する日常的な営業活動が欠かせない。したがって成分型商
品のブランド戦略は、製品開
発や生産の「企業理念」そのものをブランドに込めてコミュニケーションを行い、事業をより円滑に進めるための環境つくりをすること
である。つまり、どのような理念をもってその事業にあたるかを、直接の購入者と関係者によく理解してもらうことが成分型ブランドで
は必要なのである。
顧客接点型ブランド…顧客接点型ブランドのコミュニケーションのターゲット層は、まず顧客であり、同時に従業員である。提供される
サービスの質を顧客がより高く受け止められるように情報をインプットすることが必要であるとともに、従業員にそのブランドの理念が
浸透するように広告や社内教育を通じた活動が欠かせない。
これからのブランド価値管理に必要なのは、こうした自社に合ったブランド尺度の開発と、データを組み合わせて分析し、それを実践に
反映していくためのノウハウであり、そうしたノウハウを育成する企業だけがブランド力を伸ばしていくことができるだろう。

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