今日は、とうとうチンボラソにアタックする日です。
チンボラソとは、チンボ=三つ網、ラソ=アイス。つまり、「氷が編みこまれた山」という様な意味だと思います。
23:00に起床する。何度もトイレに起きてしまったのであまり眠れなかったが、それでも一寝入りした後は、下痢も治り、高山の症状も無くなっていた。しかし、外は風が強いらしく、ビュービュー音がする。
アタックに不要な荷物(寝袋や多すぎるお菓子の余り、スペイン語の辞書など)を大きな袋にまとめ、寝室の隅に置いた。
1階に下りて紅茶を飲む。お菓子類は寝る前に食べ過ぎて、とても口に入らなかった。
今回出発直前に2000円位で新調した1ℓのポットにお湯を入れてもらい、紅茶のティーバック2袋と砂糖を7〜8杯で、特性の超甘い紅茶を作る。
それと、ガイドがくれた500mℓのジュース1本と自分で持ってきた500mℓの水1本。
服装上は、タイツ、Tシャツ、毛シャツ、雨具。下はタイツ、フリースズボン、雨具。手袋はインナー手袋の上に5本指のオーバー手袋。足はインナー靴下の上に厚手のロング靴下、靴の上にロングスパッツ。
そのうちの、厚手のロング靴下と雨具だけは出発直前に新調した。雨具は上下で9800円の激安セール品。見るからに薄くて6000mを越えるのに相応しいカッパには見えないが、安さに負けて買ってしまった。
厚手の手袋2組と厚手のフリースの上着を予備でザックに入れておく。
目出帽、ヘルメット、ヘッドライト、ハーネスをつけ、カラビナ4枚と長スリング1本、エイト環、あとは真ん中に安全環つきカラビナ。(今回は、安全環つきカラビナ以外は不使用だった。)ストック2本を持つ。
0:00に出発。ガイドが、びっくりする程遅いペースで歩くので、僕は時々写真を撮りながらゆっくり付いていく。(しかし、このペースはマシーンの様に最後まで変わらず、後でガイドの凄さを思い知らされた。。。)
0:30、5100m付近で雪が多くなり傾斜も出てきた所でクランポンを付ける。フランス人達と抜きつ抜かれつ進む。
更に少し登ったところ5200m付近で、コンテにし、ストックからアックスに変える。
長い長いトラバースが始まる。「我が永遠のトラバース」と言うタイトルで、自叙伝が1冊書けそうな程長い。剣合宿での雪訓が頭を過ぎる。
1:20、この辺りで単独のスペイン人に抜かれる。驚異的な速さで行ってしまった。
だんだんと傾斜が増して行き、途中で大きく左折したら、今度はもっと長いトラバース。上から小石やアイスの小さな塊がパラパラ落ちている。しっかり足をおけば問題の無いところが大部分であるが、傾斜がきつい所は部分的に、冬の富士山の上部の様な硬いアイス又は岩とアイスのミックスになっていて、若干緊張する。
やがて西稜にでて、2:20頃5550m付近で小休止。フランス人達。
左はガイドで、右は今の所余裕の私。
しばらく部分的にミックス状のところを登ると、ガイドが「ストックに変えていいよ。」と言い、西稜の上に近づいてきたのだと思った。しかし、まだあと700mの高度さがある。
ここいら辺で寒さと風が更に強くなってきたので、上着のフリースと厚手の手袋を追加する。
小さなクレバスを幾つも越えるので、足元は慎重に。
ここからが長い。高山病の症状は出ないが、空気が薄いので速く動くと息は苦しい。少し休めば治る。
遅れている理由は、はっきり言っておっちゃんの運動不足だ。
時々ガイドに立ち止まってもらうので、遅々として進まない。
「ウン モメント ポルファボール」
「エスパシオ ポルファボール」
見かねたガイドが、私のザックから紅茶を出し、蓋のコップについでくれる。
「ぺルドン、グラシアス」
動けないほど体力を消耗していた訳ではないが、ガイドがそうしてくれるという事は、自分は全然ダメだと見られているということであり、なんとも情けない気持ちになる。がしかし、暖かくて甘い紅茶は五臓六腑に染み渡る。
レーションはチョコと飴しか口に入れる気にならない。スニッカーズやせんべい、柿の種は食べたいと思わなかった。
登るに連れて風は更に強くなり、手足の指先がジンジン痛くなってくる。ほっといたら凍傷になりそうなので、グーチョキパーに動かしたり、ドレミ運動をしたり、丸めたり、脇に挟んだり、噛んでみたり、ぐるぐるまわしたり。。。
頂上直下、ガイドが「ここから風に気をつけて」と言った直後から、突風が吹きすさぶ。
前は殆ど見えず、繋いだロープは真横に空中を舞い、立っているのがやっと。ガイドも私もたまにバランスを崩す。
6:00、Veintimilla 6267mピーク(ベインティミジャ峰)に到着。
ガイドと握手して抱き合う。感動して涙がでる。
写真を撮ろうとして立つが、突風に飛ばされる。
気を取り直してハイチーズ、やったね。
ここまで通常のタイムは9〜10時間と書いてあったから、6時間で付いたならまだまだ時間的な余裕はある。高山病の症状は全く出ていない。Wymper 6310m(ウィンパー峰)まで晴天なら30分足らずでいけるが、この悪天で行ったら生きて帰ってこれるか解らない。
あっちの方にWymper 6310m(ウィンパー峰)があるはず。
単独の最強スペイン人男もさっき戻って行ったし、フランス人達も即まわれ右して戻っていった。僕らも当然の様に下山を開始した。
風が収まってきた所まで下り小休止。チョコや飴を食べ、出発前にガイドにもらったペットボトルのジュースをがぶがぶ飲む。冬山や高所ではいつも凍ってしまうが、今回は袋に入れておいたので、全然凍っていなかった。ガイドにも「チョコラテ?」と言って2個くらい渡すと、喜んで食べてくれた。
周りはこんな感じの、30cm位の筍状の氷がぼこぼこ出ている。今回はトレースがばっちり付いていたから良かったが、ない時は歩きにくくて大変だそうな。
登っている時を再現して撮ってもらいました。
だいぶ降りてきて、振り返る。
下りの途中、涙が出てきた。チンボラソに一応登れた感動。去年のアコン騒ぎで塞いでいた殻を少し破れた喜び。
(Mさんが、「チンボラソの方がアコンより技術的には難しい。」とおっしゃっていた。アコンは一人で行こうとしていたし、今回の場合はガイドに付いて登ったから一概には比較出来ないが、その台詞は、自分の消沈していた気持ちにとってとても励みになった。)
しかし、それとは別に新たにウィンパーピークにいけなかった悔しさが涙になって出てきた。体調は良かった、時間も十分にあった、しかし天気に耐えられなかった。
全ては自分に力が無かったのだ。
言い訳をするならば、7〜8月はもともと風が強くて登山適期ではない。ベストシーズンは12〜1月。
その時、「生き抜くことは冒険だよ。」という言葉が頭をよぎった。偉大な登山家、長谷川恒夫が言った言葉。
「そういうことか。」少し気持ちの切り替えができた。これから無事日本に帰って、妻と娘に会って、そして働かなければ。
そうすれば、また新しい”ぼうけん”ができるかも。
ガイドに気付かれない様に、また少し泣いた。
だいぶ降りてくると風は収まり、視界も開けてきた。小さなアイスや小石がパラパラ落ちてきて、たまにげん骨くらいの小石が転がって行くので、注意が必要です。
さよなら、チンボラソ。グラシアス。
休み休みちんたら写真を撮りながら降りたので、安全な所まで降りるとガイドは痺れを切らして先に行ってしまった。
8:30ウィンパー小屋に到着。スペイン人とフランス人と握手をする。
それからパッキングをして9:00出発。もう一度振り返って最後の写真を撮る。
9:30にカレル小屋に着き、お茶を一杯飲んでから車に乗ってリオバンバへ向かう。
車の中で、ガイドが「リャマス!」と叫んで車を止めてくれた。
たぶんこれがラマとかリャマと呼ばれているものだ。表情が可愛い。
アンデスの町にはポンチョを着た人たちが沢山いる。
昼ごはん、ガイドの勧めでコメダ エクアドリアーナの店に入る。
水とジュースで「サルー!」と言って乾杯する。
ユカと言うジャングルで取れるジャガイモと、ビーフの入った美味いスープ。
ライスとビーフとそしてバナナ。
正午頃ホテルに到着。ガイドは「これから実家に息子を迎えに行くから、また後で。」といって別れる。ガイドの超人的な体力にはつくづく驚かされる。
ホテルで隣の部屋にいた、スペイン語を話す20歳くらいの可愛い女の子に「コングラチュレイション!」と言われる。その笑顔につられてこっちもにっこり笑いながら、「グラシアス!」と答えた。
まずシャワーを浴び、それから部屋中に塗れた物を全部広げた。そして、スペイン語版のドラゴンボールを見る。
喉が渇いたので、ホテルを出てぶらぶら歩き、雑貨屋のような所で500mℓのペットボトルを3本買った。90セント。キトーよりリオバンバの方が物価がやすいのか。それから部屋に戻って昼寝をした。
19:00にガイドとR君に再会。ポンチョが欲しいと言ったら、現地の人向けの店に3店くらい連れて行ってくれたが、良いのが無かった。
「何が食べたい?」と聞かれたので、「エクアドル料理の屋台に行きたい!」と言った。
屋台街に行き、ぶらぶら店を探して目にとまったのがこれ、めちゃ大きい肉!
店はこんな感じ。
「セルベッサを飲みたい。」と言ったらその店には無かったが、店員が近くの店に買いに行ってくれた。
じゃーん。ちょっと硬くて食べにくかったけど。
ガイドと大瓶のビールをコップに注いで乾杯!
しかし、後ろで小さな女の子が大きなポリバケツに溜めた水でコップや皿を洗っている。このビール、もしかして飲んだら危険かなと思うが、誘惑に負けてがぶがぶ飲む。結局アタックの日を除いて毎日飲んでいた。
念のため、ホテルに帰る途中で下痢の薬を買った。3回分で1.4$。案の定、この薬は必要になりました(笑)
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