もう15年以上昔の話ですが、”手書き vs CAD”論争というのがありました。いや本当にあったのかどうか確信が持てませんが、少なくとも私の昔勤めていた社内、若しくは建築設計者仲間ではそーいう議論が少なからずありました。
まだCADの出力機はペンプロッター
(機械の腕がペンを握って、縦横無尽に線やテキストをトレーシングペーパーに描く伝説?のプロッターで、その描くスピードは手書きの20倍くらいあったと思う。芯の減りは尋常じゃなく、芯替えだけでプロッター見張り役のため徹夜したものだ。)の時代で、しかもペンシル出力だったので一枚の出力に20〜30分(特記仕様書ともなると1時間近くかかった)くらいかかったものです。従って一旦出力してしまえば、そのあとはプロッター出力図が成果品として手書きで引き継がれていきました。だって出力に30分もかけたものを、ちょっと線が1箇所抜けてるとか、室名が間違っているっていう程度でCAD上で修正し、再出力というワケにもいかず、CADというツールの役目は出力と同時に終わらざるおえないんだもん。
そーいう時代だったので、まずは手書きとCADとの論争の争点はスピードに絞られることになりました。多くの意見を集約すれば、
「手書きの方が作図スピードが早く味わいのある図面が描けるじゃないか!」
というものだった。
当時の私も同意見で、CADに未来はあるのか疑問を感じた一人でした。
その後もCADは進化を続け、いつしか、”手書き vs CAD”論争すら聞かれなくなり、社内ではCADオペレータの争奪戦になりました。手書きでそこそこ図面を描く設計者より、優秀なCADオペレータの方が重宝されていたような気がします。更に設計者はCADで設計するとは何事ぞ!と私などは偏見の眼差しで見られ、その当時からコチョコチョと始めていた3D設計をしようものなら、上司に、
「お前、何CADを使って遊んでんねん!仕事せんか、おんどりゃー!」
と叱られたものです。
設計者はまずCADオペレータにインプットするための詳細な図面を起こし、それをCADオペレータにAutoCADで清書してもらうといった流れが一般的になりました。
そういう時代が数年続きましたが、遂に設計者のドラフターはCADに変わり、いつの間にかドラフターで実施図を書く所員はいなくなりました。当たり前ですが、設計者がCADでスケッチ(もちろん手書きでも可ですよ)を起こし、そのスケッチを肉付けし実施図へと昇華させるという具合に仕事の流れが変わりました。まぁ、その頃には私は独立しAutoCADベースで図面作成にいそしんでいましたが。。。

【桂離宮の入り口付近:私の散歩コースから】
さて、久々に長い前振りで、話の脈略と関係ない写真も盛り込んでみましたが、よーやく今日の本題、”CAD vs BIM”というお題へと話は進みます。
数日前、急に某ITソリューション販売会社より営業マンが来られて、BIMのセミナーがあるんで来て欲しいと誘われました。まっ、ちょっと仕事も煮詰まっていたし気分転換に京都駅前のホテルで行われたセミナーに参加してみることにしました。参会者は10人にも満たず寂しいものでしたが、そのセミナーの講師である女性、あれ?どこかで見覚えがあるぞと思い最後まで拝聴していましたが、セミナーが終わるやいなや、講師の方から私の方へ駆け寄ってきて、
「もしや、ChiChiさんでは?」
「あれっ、やっぱりIさんですか?お久しぶりですね。」
「大変ご無沙汰しております。いつ依頼でしたっけ?」
「確か、私がviz
(Autodesk 3ds Max Designの前身である建築パース作成CGソフト)を導入してIさんにサポートして頂いたにも関わらず、私のふがいなさで挫折して以来じゃないでしょうか?」
みたいな話で盛り上がったのでした。
”BIMってなんだろう?”みたいなタイトルのセミナーでしたが、聞いていて感じたこと、まず率直に言って、”あの頃”すなわち”手書き vs CAD”論争の時代を思い出しました。
図面作図スピード云々ではなく、あの頃勤めていた会社で使っていたCADがあまりに精度
(いろんなところで何度か書いていますが、そのCADは4の倍数しか受け付けず、例えば壁の厚みが150とすれば148か152で入力していました。当時私の頭には4の倍数が飛び交っていましたが、今や0.ミリ単位で入力できるのが当たり前です。)が悪く、しかもメジャーじゃなかったので、会社要請として次世代CADを検討するように使命を受け、様々なCADセミナーを見て比較検討しました。
多くの建築専用CADはどれも同じような印象で、見た目はキャッチーで凄いと感じさせられましたが、作図自由度がなさそうな気がして疑問ばかりが増幅していきました。
どのCADも、まず通り芯を描いて、柱を配置し、パッとX方向とY方向に複写しましょう。続いて壁とドア、窓を作図します。。。みたいな、通り一辺倒な説明の連続だったのです。
一部のCADは3D化されたデータを日影検討へデータ渡しし、そのデータを元に”かごかけ”
(逆日影で出力される建築ボリュームの目安)なるものを作成し、大まかな建物ボリュームを作りましょうね、的な説明が続き、でも実務設計の中で”かごかけ図”なるものを作った憶えがなく、大まかなプランニングが先行し、一旦日影チェックをかけ、NGが出たら局所的にチャート図でちまちまチェックしながら日影図を起こしていたものです。
私はどこかでハイテクIT技術を使いながら、頭の中ではアナログ的発想しかできず、例えば図面作成においても、壁なら通り芯からRC壁の厚みをオフセットして、内装は断熱材+GL石膏ボード貼の厚みを作図という流れを踏まないと前に進めないんです。
だからBIM的な感性で設計はできないだろうなって直感的に感じました。
Iさんは『BIMは概念です』とおっしゃったが、まさにその通りだとは思うんですが、BIM的なCADはもう20年くらい前から出てきているし、AutoCADでもBIM的なスタイルで仕事できると思う。だって概念がBIMであれば、ツールはどんなCADでもできるんじゃないかと。。。BIMは単に商品イメージ戦略で出てきたキーワードに過ぎないのでは??
(とここまで書いてしまった私に対して、それは違うぞという意見を是非聞きたいです。)
BIMは4次元、5次元をはらんでいるという説明を聞いてももはや人間の思考がついていかないし、所詮人間の脳はアナログ的回路で成り立っているんだもん。
もちろんBIMを全否定しているのではなく、もう一度書きますが、既にBIM的アプローチは20年前からあったんだし、今更CADが消費期限が切れそうになってきたからって、また一から大型投資してBIMなるものを買うのは我々設計者には負担が大きすぎるってもんじゃないだろうか。
できればAutoCADは汎用ベースで持続し、その上にBIMなる概念をのしるアプリケーションをアドインしてほしい。そのための投資なら可能な範囲でできるし、様々な設計事務所で全てに共通にBIM機能が欲しいワケじゃないと思う。
とは言うものの、AutoCADのように、所詮データ形式がDWGだの、DXFだのベクターデータじゃ、まったく違う概念の属性を持たすことがシステム上しんどいのだろうということも分からないではない。じゃあ思い切ってベクターデータからBIM形式のフォーマットにどこかの段階で移行すればいい。もちろんその時に大混乱が予想されるが、このままAutoCADの膨大な資産やスキルをなげうつ気にはなれないし。。。。
と書くと、今度は新しいスキルを随時勉強していくのがお前の使命だ!と叱られそうだが、CADの寿命がきたから次はBIMだというメーカー本意の考えに素直に応じたくないわけ。まるで地デジ化戦略のように見えるが、まっ地デジ化ほど荒っぽくはなく、CADが風化することはあっても、2011年までにCADをやめなさいと言われているワケではないから、まだ許せる。
さて、実はまだ話は続くんだが、ちょっと疲れたから続きはまた今度。。。。

【右は桂離宮、左は桂川。うちのオフィスから徒歩8分のところ】
(最近、続きはまたって書くことがあっても続かないことが多い。でも誰も突っ込まないから万が一続かなくてもいいだろうと、最近開き直ってくるようになった。)

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