「ジム・ジャームッシュ『Broken Flowers』(2005)[☆☆☆]」
映画
カンヌで審査員グランプリを獲ったジャームッシュの新作。ビル・マーレー主演の過去への追悼を描いたロード・ムービー。恋人が出て行った日に届いたピンクの手紙を鍵にして、20年前の恋人たちを訪ね歩く物語は、ジャン・ユスターシュよりもフランソワ・トリュフォーに捧げられるべきものなのかも知れない。ジャームッシュがここまで女優を前面に押し出したのは初めてのことだろう。実際、シャロン・ストーン、ジェシカ・ラングはもちろん、ジュリー・デルピー、クロエ・セヴィニーといった脇役の女優までもが悉く素晴らしい。それは『三つ数えろ』を彷彿とさせるほどの見事さなのだ。
ビル・マーレーを一人称の主役に据え、彼のメランコリックな佇まいと共に展開していく物語のリズムは絶妙だ。そして、多くのロード・ムービー同様、結末は悲劇でも喜劇でも無い。何か深い虚無に陥るような結末に、ジャームッシュの「成熟」さえも見た気がした。だが、これを彼の到達点として評価する事は慎むべきだと思う。結局、今年のカンヌを征したダルデンヌ、ジャームッシュ、ハネケはどれも「作家の集大成」的な作品で(しかも全て父性がテーマだ)、映画の可能性に挑むようなフィルムは皆無であったことになる。例えばカラックスや青山真治のような映画作家が評価されにくくなっているような気がするのだが。


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