○チャンス到来
昨年の9月、福田氏が政権運営に行き詰まり、政権を投げ出した。
自民党の総裁選の茶番の末に麻生氏が後を継ぎ、すわ選挙、という状況になったときに、私は今度の選挙は「どのような政権になろうとも、「人間使い捨て」はゴメンだ、労働者雇用を保護する法律を作り、安定した生活を保障しろと、
要求を突きつける「要求実現選挙」にしなければならない」と述べた。
その後、大方の予想を裏切って麻生氏は政権にしがみついた。そしてその間に、自公で衆議院3分の2の多数を得ていることをいいことに、8回もの「再可決」で10本の法案を通した。
その中には、「海賊対処」という名の元に自衛隊が海外での武器使用を可能とする「海賊対処法案」、財源を消費税率の引き上げに求める「国民年金法一部改正案」、そして悪名高く事務費ばかりがかかり、効率悪いことこの上ない税金バラマキである「補正予算関連法」も含まれている。
この間、大不況が日本社会を襲ったが、これに対しても大企業重視の自公の立場は変わることはなかった。
麻生氏は「派遣切り」野放しや、「エコポイント」などのバラマキを起点に、大企業の赤字が減少し、生産が底を打ったことをもって「不況が底を打った」と言い出し、「政策の効果が出始めた」などとべらぼうなことを平然と言ってのけている。
当然ながらこの間も失業率は最悪の水準にまで上がり続け、自殺者は増え続け、従って国民生活は益々貧困化している。
こうした国民無視・国民騙しの政策を平然と行うことで、国民の求心力を失った政権与党は、その後の首長選や都議選で敗れ続ける。
そして、いよいよ政権運営のタイムリミット(9月)が迫り、止む無く麻生氏は衆議院を解散することになった。
追い詰められての解散である。今度こそ、国民不在の茶番劇から政治を国民の手に取り戻すチャンスだ。
○「政権選択選挙」か?
今度の選挙、相も変わらずマスコミは「政権選択選挙」と言っている。
政権選択、というのは、政治変革の手段であって目的ではないはずだが、それが目的の如く語られる状況が続く限り、政治に変革を期待することは困難だろう。
政治に変革をもたらす重要な要素は各党の持つ政策である。
しかし、選挙前だからといって今まで自らのしてきたことを語らず、耳障りのよいことばかりを並び立てる傾向が顕著だ。
例えば自民党は、「安定した雇用制度を」、公明党は「雇用の安心を」などといい始めているが、今まで彼らは一体何をやってきたというのか。
そのことを言う前にまずは違法・無法な首切りを取り締まることができなかった(というか推進すらしてきた)責任を国民の前に詫びるべきだ。不安定雇用を格段に増やしてきた雇用の規制緩和政策も、同様に労働者の収入を減らし続けてきた政策も、率直に詫びたらどうか。
それをせずして今更何を言っているのか。このような虚言は、説得力を持ち得ないし、まったくの論外というべきだろう。
○民主党の変化
ところで、次に政権を担うといわれている民主党は、この問題についてはどうだろうか。
「マニフェスト」を見ると、「製造現場への派遣の原則禁止」、「同一労働同一賃金」、「最低賃金の引き上げ(1000円へ)」など、ところどころに進歩的な政策を打ち出している。
これは、私たちを含む多くの人たちが数々の運動や追及をすることによって、民主党もその世論の「風」を感じているからだろう。
当初よりこれらの政策を打ち上げていたのは共産党だけだと思われるが、最近になって、民主党にここまで言わしめたのは、紛れもなくこの問題でたたかい続けてきた人たちの要求実現への思いが、民主党に伝わっているからに他ならない。
このほかにも、民主党は「子ども手当て」や「社会保障2200億削減廃止」など、自公政権の政治とは打って変わった政策を具体的に打ち出している。
子ども手当ては正直緊急で必要なものかどうかは私には疑問が残るが、社会保障2200億の削減廃止は、政府ですら1年だけでもせざるを得なかったように、国民要求の強いものである。
民主党もとんだ大風呂敷を広げたものだが、
民主党にそれを実行させるのは、やはり要求実現を突きつける私たちの引き続く運動に他ならないだろう。
○消費税増税への蓋然性
しかし結局、これらの政策を実行した後、「お金が足りません」、と言って消費税を増税するようでは、民主党も単なる無能者集団に過ぎなくなる。
なぜなら、消費税は収入をほとんど消費に回すしかない低所得層に一番の負担となり、収入を消費以外にも貯蓄や運用に回せる富裕層には、低所得層に比べてはるかに負担は軽くなる、格差拡大の不公平税制だからである(税制で拡大した格差を縮小し、貧困をなくすという姿勢が民主党に見られない以上、実はこの不公平税制を拡大する可能性が一番高いのではあるが)。
ちなみに民主党は年金財源に消費税を充てることをマニフェストで明言しており、このことも勘案すると、恐らく党首の鳩山氏が言っている4年は持っても、その後には消費税の大増税が待っていると考えて間違えはないだろう。
民主党が「財源」として求めているのが補助金の廃止(具体的には謎が多い)や埋蔵金の活用(これも同様)である以上、そんなに何十兆円も何年にもわたって捻出できるわけもない。
民主党が富裕層へ負担を求めない以上、結局は消費税を上げるしかないだろうことは、自明の理だ。
○危険な「憲法提言」
また、民主党は外交・安保に関しては「マニフェスト工程表」には載っておらず、「二の次」の扱いだ。
本来民主党は日米安保を堅持し、その日米従属同盟を前提に「国連中心主義」を唱えて、米国中心の国連の名の下に自衛隊の海外派兵と戦争参加を導き出そうとしている政策を持っているが、ここについては今回は細かく触れていない。
ただ、民主党の「憲法提言」を元に、「憲法論議」を幅広く行うことを提起していることが気になる。
民主党の「憲法提言」では、自衛隊を認め、海外で活動ができるようにする(つまりは戦争のできるようにする)ことを明確に提言しており、恐らく今後憲法9条第2項を変えるために、時機を見て攻勢に出てくると思われる。
○民主主義に対する反動
更に、民主党は衆院議員の80人削減(比例部分)をでかでかと訴えている。
民主党は「官僚主導の政治をやめさせる」といっているが、そうであれば、例えば天下りの問題があった場合、国会議員が国会の機能を十分に生かして質問をして、資料を出させて、問題を追及することが必要である。
そして、その他、例えば後期高齢者医療制度を廃止し、安心してかかれる医療制度を実現する場合のように、国民要求に関わることでも、一人一人の議員が自覚的に国民の声を国会へ届け、政策を提案する必要がある。
国会議員を減らすことは、当然そうした声・力を減らすことにもなるだろう。
これは、民主党が官僚主導の政治をやめさせる、という政策に矛盾するもので、一体何をしたいのかが分からない。
もし、国会議員にかかる経費(税金)を削減したいのであれば、政党助成金という、政党による税金強奪の仕組みをなくせばよい。
国会議員1人に年間4200万円かかるそうであるが、せいぜい減らせる税金は4200万×80人=34億円弱で、政党助成金の約320億円の10分の1強程度にしかならない。
政党が真に国民から支持されていれば、強制的に税金を強奪して養ってもらうのではなく、個人からカンパをもらい、政治に対して自覚的な国民の多数派を作り、それに依拠すればいい。民主主義と税金のためには、この方が余程効果があるだろう。
しかも、よりによって得票率がほぼそのまま議席に結びつく比例部分を減らすという、民意を国会へ届く仕組みを断ち切るような真似は許されるものではない。
「身を削る」と言って「民意を削る」民主党の姿勢は、民主主義に対する反動でしかない。
○運動の重要性
以上、見てきたように、
今度の選挙は、自公政権は急速に求心力を失っているものの、それに替わる民主党については、積極的な要素と否定的な要素が、かなり極端な形で入り混じっている。
積極的な要素を生かし、否定的な要素を抑える決定的な力は、引き続き要求実現を求める国民の運動の如何にかかってくるところが大きいだろう。
ここで言う運動とはなにか。
それは、問題を生活者の立場に立って分析することであり、書くことであり、伝えることであり、街頭へ出て訴えることであり、直接国会へ要求を突きつけることであり、最終的には多数派を作り上げて要求を実行する政権そのものを作り上げることである。
今度の選挙は、そのための「入り口」に過ぎない。
この「入り口」がそのまま真っ暗なトンネルへの入り口になってしまうのか、それとも明るい展望が開ける光り輝く夜明けの入り口となるのか。
選択の時はまた、この分岐の時でもある。
「政権交代選挙」などという狭い選挙ではなく、「要求実現選挙」へ。私たちの要求を、ぶつけよう。

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