○帰還自衛隊員の自殺
3月10日のアサヒ・コムによると、イラク派兵から帰国した陸上自衛隊員(4500人)のうち、幹部を含む3人が自殺していることが分かったそうである。また、自殺だけでなく、強いストレスから職場に順応できなかったり、自殺を図ったりしたケースも報告されている。
現地の自衛隊員は、宿営地にロケット弾などの攻撃を受けたほか、市街地を車両で移動中、米兵から誤射されそうになったこともあったという。また、自殺した隊員の中には、現地ではテロの巻き添えを食わないように、米軍には近づかないように指導を受けたため、帰国後の日米共同訓練では「彼ら(米兵)と一緒にいると殺されてしまう」と訓練中に錯乱したこともあったというから、「戦場」で味わったストレスは相当なものであったというのは想像に難くない。
自衛官全体の自殺者の割合から見ても、派兵された自衛官はおよそその二倍の割合になるというのだから、影響は深刻だろう。また、派兵された隊員の中には自殺未遂で入院したり、不眠症などで職場に復帰できなかったりするケースも報告され、帰国隊員を抱えるある師団では「数十人が似た症状を訴え、2人が職場復帰できていない」(幹部)という。
○サマワは戦場である
自衛官も人間である。とりわけ、建前としては平和憲法を掲げる日本が持つ「自衛のための最小限度の実力」ということになっているのだから、そもそも戦場に派兵されるために自衛隊に入った人はいないはずだろう。サマワが「戦場でない」というのは、小泉首相の辞書にそう書いてあるだけの話で、上記から、サマワの様子を少しでも想像してみれば、戦場であることは明白だ。死の危険は、常に付きまとっているのである。
○サマワ市民の要求〜電気、水、仕事
次に、サマワの人々の立場から考えてみよう。はっきり言って情報はほとんどないので、私の読んでいる雑誌「世界」05年10月号で報告されたアジアプレスの綿井健陽氏の報告からざっと見てみることにする。
綿井氏によると、サマワの街の不安要因は、フセイン政権が崩壊したことによるものではなく、むしろ駐留する自衛隊・英・豪軍の「外国軍」の存在と、それに反対する周辺の地元住民の中から現われ始めているという。
綿貫氏によると、サマワの市民が求めているのは軍隊ではなく「カラバ(電気)、マイ(水)、アマル(仕事)」である。そして、軍隊は、それらの問題を解決する能力を持っていない。
例えば、電気は停電続きで、日中の気温が50度を超えるサマワ市中心部では、暑さに我慢できなくなる市民が自家発電機を手に入れて何とか解決している有り様である。
水は、電気が止まればポンプで水をくみ上げる機械も止まるため、例えば5階建ての団地では、上層部にまで水を引き揚げることができない。
仕事はといえば、「多くの失業者が市内のあちこちで力なく日陰に座り込んで」おり、仕事があっても、道路補修や建設作業を「その場しのぎ」の日雇い労働で行っているような状態だ。
自衛隊の発注で地元のイラク人業者が行う学校・診療所の建物の修復や壁の塗り替え作業がサマワ周辺で行われているが、これはそもそもイラク人でできることであり、「それよりも電気と水の修復を」と訴える市民の批判の声が高まっており、綿貫氏曰く、「今後やればやるほどサマワ市民から逆に反感を買う恐れがある」とのことである。
結局、サマワ市民が待っていたのはインフラを整備し、仕事を確保してくれる日本の民間業者だったのであり、あくまで自衛隊はその「露払い」的なものとして、当初は受け入れられたに過ぎないのである。
○巨額の経費とその「効果」〜完全な失策
その程度の自衛隊にどれほどのお金がつぎ込まれてきたのか。自衛隊のイラク派兵の費用は昨年12月までに、陸海空合わせて600億円を超える規模であり、陸上自衛隊の食料・燃料・施設・人件費などの「駐留維持費」がそのうち9割で、常時600人規模の自衛隊員がサマワに駐留しているため、二年間で一人あたり一億円以上の費用をかけている計算になる。多大なお金を使って現地の人たちの要求にこたえることもできず、むしろ「自衛隊は米軍によって送られた占領軍」という反自衛隊デモまでされているにもかかわらず、これを「人道復興支援」などと説明する政府の詭弁にはあきれるほかはない。
これ以上の派兵は、自衛隊員にとっても、サマワ市民にとっても不幸なだけである。自衛隊を戦場へ送り、隊員を危険にさらし、自殺者やその予備軍まで作り出した挙げ句、現地民の失望と反感を食らった自衛隊のイラク派兵。完全な失策であることは明白だろう。もはや政府に「他国の様子を見ながら」などと呑気に構えていることは許されない。
○道理の通った解決策と声を、3、19集会へ
日本政府は、一刻も早く自衛隊を撤退させ、嘘に基づく戦争が明らかにされ、米国民の批判にさらされつつあるブッシュ大統領へ要請すべきである。「イラク人の秩序はイラク人の手でつくらせ」「違法な戦争をしたことをイラク国民と国際社会に詫び、軍隊を撤退させ」「国連の援助によりイラクの経済社会を立て直すことに全力をあげて協力するように」と。それが道理にかなった道であり、かつこの状態を前向きに解決する有効な方法であると考える。
3月19日(日)には日比谷野音で集会も行われる。この声を大いに上げ、日本政府の固い頭を柔らかくするきっかけにしたいものである。