○「辞任」騒動
意味がわからなかった。突然の民主党小沢代表の「辞任」騒動である。
あの記者会見の意味不明な様に、突然「おなかが痛い」と辞任表明した安倍元首相を思い起こした人も多いだろう。
ただ、小沢氏は安倍氏のような「お坊ちゃま」ではない。何か意味があるはずだ。
報道によると、福田首相から要請のあった密室談合で提起された連立政権の樹立を巡って「政治的混乱」が生じたことを受けての辞任表明だという。そこでは極めて重大な提起がなされた。
○危険な密室談合
福田首相との密室談合では、@国連が設立あるいは国連に認められた活動であれば自衛隊の海外派兵を認める。A新テロ特措法案はできれば通してほしいが自民・民主連立が成立するならこだわらない。という2点を確約した。そして、政策協議という名の自民・民主の大連立を行えば、その他の政策も実現できるというわけである。
そしてそのことを民主党に持ち帰ったら総スカンを喰らったというのが経過だ。
小沢氏いわく、民主党はまだ力量不足で、次期総選挙での勝利が厳しいので、政権の一翼を担って政策を実行したほうが民主党政権の実現が早いと判断したとのことである。
しかし、この説明は納得がいかない。
○生活人の立場に立つのなら
民主党が力量不足というのはさておき、要は次期総選挙で3分の2を与党に取られさえしなければ、与党は強引な手法で法律を通すことが不可能になる。そしてハッタリのコイズミ旋風で大勝利した再現を、今の自民党にするだけの力はない。そうすれば、民主党がマニフェストで掲げた世論の示す政策を実現する近道になることは間違いない。
それこそその後は世論を背景に最低賃金を1000円に引き上げるなり、農家の所得を保障するなり、格差と貧困を是正する政策を実現すればよいのだ。そしてそれは「大連立」で果たすことのできる政策ではない。なぜなら貧困と格差を拡大させ続けているのが自公政権なのだから。
また、対テロ戦争は世論をほぼ二分する問題であり、自衛隊の海外派兵を認める恒久法をつくることは平和憲法と真っ向からぶつかる重大事だ。決して密室談合で実現されるべき類の問題ではない。
「政治とは生活である」のなら、生活人の立場に立って、大局的に物事を見るべきだ。参院選で示された「自公政治NO」の勢いを弱める理由は何もない。
○再び「敵に塩を送る」のか
第一、自民党と大連立を組んで、民主党は次の選挙でなにを語るというのか。自民党と何も変わらない、もしくはある意味もっと訳のわからないことをするということを告白するようなものではないのか。小沢氏の説明はとにかく意味不明なのである。
自民党はこの騒動で息を吹き返した。小沢氏は「メール問題」で敵に塩を送った前原前代表の跡継ぎに相応しい民主党代表ということか。
結局、小沢氏は辞任表明後、責任を一切問わないということで幹部らに懇願されて党首に戻ったが、戻すほうもどうかと思う。小沢氏は自らが自民党と何も変わらないことを表明したのだから。
○幸か不幸か
今総選挙があったとしよう。国民は、今度は民主党に果たして「自公政治NO」の思いを託せるのかどうなのか。何せ、参院選では8割以上の民主党への票が「自公政治NO」だったのだ。当事者の自民党との大連立を不問に付す政党に、国民は正常な神経で政治転換の思いを託して一票を投じることはできないだろう。
民主党が真剣に国民の立場に立って、生活人の立場に立って物事を判断するのであれば、小沢氏を幹部から降ろし、国民の声を代表するに相応しい新たな指導者を選ぶべきだった。それができない民主党は、再び「対決路線」に戻ったところで、総選挙の後、政権が取れなくても自民と「歩み寄り」をすればよいという話になってしまうだろう。
勿論、政治の世界は「一寸先は闇」で、断言することはできないが、一つ言えることは福田首相が「阿吽の呼吸」で小沢氏と大連立という話になった、というように、
彼らは結局は同じ穴のムジナということだ。
今回の「辞任騒動劇」で、余りにも早く民主党はその本質を国民の前に晒してしまった。これは国民にとって「幸か不幸か」となるのかは、国民がこの様をどう判断するのかによるだろう。
幸いすることを強く望む。