○反省を知らない自公「マニフェスト」
いよいよ明日、衆議院選挙が公示される。
各党のマニフェストを見てみた。
政権与党だった自公は、これまでやりもしなかった子育て支援政策(児童手当拡充)や雇用対策をにわかに叫びだし、削減し続けてきた社会保障も充実させるようなそぶりを見せている。
これまで彼らは、格差の拡大と貧困層の増大を、「新自由主義」(市場に任せればうまくいく)という名の政策として進めてきた。
子どもを生み、育てることのできないような、おびただしいほどの若年層の「ワーキングプア」を生み出した。
また、不況下では「派遣切り」を放置し、更には分断医療の後期高齢者医療制度に象徴される「お年寄りの切り捨て」など行って来た。
これは彼らの棄民政策のほんの一部であるが、彼らは、例えばこれらのことに対して、どう説明するつもりなのか。
格差は益々広がり、貧困層が喘ぎ、自殺者が溢れている現状をどう総括するのか。
彼らの認識はこの出発点に立っておらず、従ってマニフェストを読んでも到底現状の深刻さから発するメッセージは見えてこない。
○二面性の民主党「マニフェスト」
民主党のマニフェストは、これまでのブログでも述べたように、先進的な側面(生活保護の母子加算復活や児童扶養手当、後期高齢者医療制度の廃止など)がある一方で、格差の是正に基づかない「財源論」に陥り、謎の多い霞が関の埋蔵金やら「無駄遣いの是正」に財源を求めており、いずれは消費税の大増税を実施し、格差の拡大に結びつかざるを得ない限界を持つものだ。
また、
後期高齢者医療制度の廃止の次に来るのは「国保の一元的運用」(つまりは広域化)であり、広域化の問題は必ずや中・低所得層の保険料を格段に増加させることになる (カモブログ「貧困化する社会D」参照)。
更に言うと、私は、国保を一元化した次に来るのは、道州制を見据えた更なる市町村の再編・統合で、そうした政策は、住民から地方自治を益々遠ざける道に突き進むことになるだろうと推察する。
○橋下「首長連合」の主張
大阪府知事の橋下氏が、首長連合というものを率い、マスコミを走り回っている。
橋下氏によると、地方は国の犠牲になっており、自治体に自由と権限と金をよこせ、という主張をしている。
一見彼の言っていることももっともだが、額面どおり受け取るわけには行かないだろう。
前鳥取県知事の片山氏によると、知事の権限は、例えば東京都の「新銀行東京」が放漫経営でも更に追加出資が許されたり、知事提案の議案の是認率はほぼ100パーセントであること、建設業者や経済団体、マスコミとの癒着の事例を上げ、「知事の権限は既に強大である」と述べている(「世界」09年9月号)。
片山氏の言うように、今、自治体に求められているのは、「権限の強化」以前に、住民を自治体の政治に参加させる仕組みや意見を反映させる仕組みをつくることであり、住民投票の活用や、議会のチェック機能の強化が必要だろう。
そのことを放置したまま、「地方の権限強化」をお題目に、知事の権限を強化することは百害あって一理なしだ。
しかし、その問題を追及するだけでは、まだ本質を突いているとはいえないだろう。
○橋下・御手洗「連合」
私が問題だと考えるのは、橋下氏が、経団連と一緒になって「道州制」の議論を進めよ、と自民・公明・民主に迫っていることである。
道州制とは、日本の自治体を合併・再編し、現在1800程度ある自治体を半減させ、その上に全国で10程度の「道州」を作り(例えば南関東州や関西州など)、「道州」に巨大な権限を集中させるという構想であり、「究極の構造改革」と銘打たれている(「経団連ビジョン 希望の国、日本」)。
「日本経団連の御手洗冨士夫会長と大阪府の橋下徹知事が7月25日対談し、道州制について議論した。
地方活性化や行政システムの効率化のために道州制は有力な手段で、実現に向けて国民の理解を深める必要があるとの認識で一致した。
御手洗氏は、「(道州制の導入で)削減した人件費を新たな投資に回せば地域で新産業が興る」と住民へのメリットを強調し、「草の根運動で理解を広めたい」と述べた。橋下氏は「道州制を争点にしなければ選挙に通らないというぐらい、政治家に圧力をかける国民の後押しが必要だ」と述べた。 」(アサヒ・コム 7月25日付より)
○「道州制」という「究極の棄民政策」
道州制に先立つ国保の広域化は、実はこの「人件費の削減」が一つのポイントだ。
この先、各市町村に散らばる国保を一元化することで、人件費を削減し、同時にサービスも削減する。
実際、大きくなった国保にとっては、例えば保険料を払いたくても払えない世帯に対し、きめ細かな相談に乗るようなことは考えにくい。
バッサリと資格証明書を発行して10割に落とすか、無理やり車でも土地でも差し押さえ、売り払って保険税の徴収率を上げるのが関の山だろう。
その上で保険税への税金投入をやめ、保険税が高いのは医療費の高い自堕落な人間がいたり、滞納する連中がいるからだと、敵愾心を民衆同士に求める。
目に見えるようだ。
結局、そうした構造を国保のみならず自治体行政一般へ広げるのが「道州制」であろう。
経済界にとっては、削減された税金が自分たちの企業が進出するためのインフラ整備や補助金に結びつけば言うことは無い。
そのようにして興った「新産業」とやらも、結局は「派遣切り」と同様に、人間を使い捨てにする労働へ落とし込むのだろう。
住民は、自分たちの意見を自治体に反映させたいと思っても、再編された自治体は遠く、道州は更に遠い。
住民を政治から完全に分断し、税金を、知事や、それを金の力でコントロールする財界が握る、というのが最終的な彼らの望む姿だろう。
「橋下徹・大阪府知事が7月8日、民主党本部を訪問し、同党の原口一博「次の内閣」総務相と意見交換した。・・・橋下氏は会談で、民主党が国と300基礎自治体の「2層構造」構想を棚上げしたことについて「2層構造はおかしいと述べたら、素早く対応してくれた」と謝意を表明。「国と地方のあり方が根源的に変わる、統治機構のあり方をマニフェストに入れてほしい」などと求めた。
原口氏は会談後、記者団に「涙が出るくらい感激した。真剣に考えて具体的に提案し、戦略的にやっている」と激賞。
鳩山代表も記者団に「非常に民主党に近い。私どもの地域主権の考え方を、道州制という方向で協力点を見いだしていけるのではないか。連携を取り合っていきたい」と秋波を送った。
その後、橋下氏は公明党にも同じ提案をした。北側一雄幹事長は「党のマニフェストの中にもしっかり反映できるようにしていきたい」と前向きな姿勢を示した。 」(アサヒ・コム 7月8日付より)
○上からの革命
道州制は、共産党・社民党は反対しているものの、自・公・民・国と、ほとんどの政党は賛成しており、民主と連立を組む予定の社民は、結局一元化→合併→道州制と、徐々に押し切られるのではないか、と私は危惧している。
民主党は同時に、自民党と共に衆院定数の比例区の削減を公約に上げている。
小選挙区ではなく比例というのがミソだろう。選挙において過半数に達しない多様な意見を排除し、結局は民意をマスコミに取り上げられるようなタレント知事レベルに貶め、政治と社会の貧困化を益々進めていくようにしか思えない。
国政において民意を削り、地方においても民意を引き離す。
この選挙、私には、「政権交代」と浮かれるような選挙では決してないと考えている。
結局、「政権交代」に乗せられた国民の一票が、国民の声を遠ざける一票になってしまうのではないか。しかし、今、国民にとっては、引くも地獄、進むも危険な棄民の道だ。
私には、今度の選挙が小選挙区比例代表並立制の導入や地方の統合再編といった、これまで着々と進んできた上からの革命が、いよいよ完成に向かって大きな一歩を踏み出すきっかけになるように思えてならない。
私は既に暗澹たる気分になりつつも、それを通り越して、最終的に必ずやってくるであろう国民主権と平和主義の最後の砦である「日本国憲法」の改定に対する闘争の準備をしておかなければならない、と考えている。

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