○「人間らしく」働くことを拒まれた青年たち
5月16日に明治公園で行われた「全国青年大集会」に、自分の周りの青年を誘い、参加してきた。
この大集会は「人間らしく働きたい」「まともに生活できる仕事を」をスローガンに行われたもので、全国から5,200人の青年が集った。
「人間らしく働きたい」・・・現代の青年は、「人間らしく」働くことを社会から拒まれている。
・非正規雇用のさらされる現状
いつ首になるか分からない不安の元で、「自分の代わりはいくらでもいる」という前提で配置される職場。賃金もきわめて低く、人並みに暮らすことすらかなわない。
現代の日本では、女性や若者の半分がこのような非正規雇用の下で働かされている。
おととし10月以降に仕事を失った非正規雇用労働者は、厚労省がつかんでいるだけで27万7千人に達するそうだ。景気のいいときにはこき使われたかと思いきや、不景気となればあっという間に切られる。
しかも、切られるほうは労働者の権利や法律などの知識に乏しく、また、団結するといった連帯の経験をほとんど持ったことの無い人たちだ。学校ではよく言うことを聞く「おりこうさん」だったかもしれないが、社会の荒波にさらされるととたんに難破してしまう。
企業から見てこれほど使い勝手のいい労働者はかつていなかったろう。
労働者を機械と同様、「取り外し自在」に扱った結果、大企業の内部留保は拡大し続け、10年前に比べて倍の200兆円を超えるまでに増大した。
・正規雇用のさらされる現状
正規雇用はどうか。
正社員を目指せば職場からは「即戦力」が求められ、使えないと見られるや嫌がらせなどの「追い込み」が始まる・・・朝日新聞に「「新卒切り」に気をつけて」という記事が載っていた(5月24日付朝刊)。
「今春、京都市の私大大学院を卒業した男性(25)は、入社9日目で「自主退職」した。
神戸市に本社を置くITコンサルタント会社に内々定が決まったのは昨年5月。東京に配属されたため都内に引っ越し、4月1日に入社した。
初日。少し早めの15分前に出社した。いきなり上司から「他の人はもっと早く来ている。意欲が足りない」と叱責(しっせき)された。その後も、電話の応対や退社時間をとがめられ、「落ちこぼれ」「分をわきまえろ」「君が劇的に変わらなければ一切仕事はさせない」と怒鳴られ続けた。
出社3日目からは、連日反省文を書かされた。
そして4月9日の夜。上司から会議室に呼び出され「もうしんどいやろ?」と退職を迫られた。「まだまだ頑張れます」と反論したが、上司は「給料だけもらって居座るのか」とたたみかける。2時間近くたって疲れ果てた頃、退職届が目の前に差し出された。ぼうぜんとしたまま「自己都合」としてサインした。 ・・・」
この男性は、その後考えてみたところ「納得できない」ということで、退職届の無効を求めて労働審判を申し立てたそうだ。
朝日新聞は、NPO法人「労働相談センター」(東京都葛飾区)の相談員の須田光照さんの
「(即戦力にならず)目算が狂ったと簡単に切り捨てる企業が増えている。人材を育てる意識が薄い」と指摘する 」というコメントを載せている。
記事はまだ続く。
・人間扱いしない現場
「・・・内定学生が入社直前に、辞退に追い込まれるケースも。都内の私大女子学生(23)は昨秋、人材派遣会社の内定式で突然「3月に入社して下さい」と言われた。
卒業旅行の日程を変えて「入社」。特別に休暇がもらえた卒業式の日と土日以外、毎日午前9時から午後6時まで、パソコンの使い方を覚えるというメニューだけで拘束された。大学に相談すると「あまりに異常」。悩んだが内定辞退した。
同期120人の5分の1が辞めていくことを後で知った。
「人を育てる姿勢がなかった。多く辞めることを見込んで採用しているとしか思えない」
留年し、元後輩たちに交じって就職活動を続けている。
都内の私大の元女子学生(24)の場合は、「内定切り」に遭い、昨年度留年して就職活動をした。
内定していた都内のITコンサルタント会社からメールが来たのは一昨年10月。「入社前に取得して下さい」と四つの民間資格が示されていた。年明けの2月には直接呼び出され、いきなりIT知識を問うテストがあった。結果を見た執行役員から「君の大学では一生上に上がれない」「クズと同じだ」と面罵(めんば)された。涙が出た。
卒業式前日、「情報を一切漏らしません」と署名し、内定を辞退した。大学のキャリアセンターは「内定取り消しと同様の悪質な事例」と判断し、会社に正式に抗議してくれた。1年間10万円で在籍できる特例措置も認められた。・・・」
通底しているのは、「人を使い捨てにする」ということ、これに尽きる。
その人の背景にある家庭や、これまで背負ってきた人生、そしてこれからの人生を、全く考慮することなく、「使えない」と見るや即刻切り捨ててくる。
そのようなことを規制すべき法律も、それを守るべき政府も、そしてそれを守らせるための労働組合も、全てがほとんど機能していない。
人を使い捨てにして、育てたり、社会へ希望を持って働かせる姿勢を放棄してきた結果、頂点に立つ大企業の決算は繕え、役員報酬や株主配当は維持できたかもしれないが、結果として今、日本社会はズタズタに切り裂かれ、将来への衰退・衰亡しか見通せない状態まで来ているのではないか。
1970年代生まれの「ロストジェネレーション」(就職氷河期・非正規雇用・低賃金労働の世代)などという言葉が使われていた時期もあったが、今はもう、その後の80年代だろうが、そしてじきに90年代の若者たちも同様の扱いを受けることがほとんど「保証」されていると言っても過言ではない。
○全国青年大集会〜希望難き時代に
最初の話に戻ろう。
5.16全国青年大集会は、多くの全国の青年を集め、現在の「人を使い捨てにする」社会への告発を分科会、全大会で行った。
そして、そのような社会に生まれ出なければならなかった困難を抱えつつも、共に声を上げる仲間、つながりを持つことが大切であることを、改めて確認しあった。
私は、この集会に身を置き、これほど困難を抱えている中でも、ほとんど消えかかっている将来への「希望」の、最後の灯を見たような気がした。
この、実態を告発し、使い捨ての状況がおかしいと確認しあえる、そして、ともに声を上げる、そういうこと自体が、今日では貴重な経験だ。
若者を育てず、使い捨てにする社会は確実に衰退へ向かう。こんな分かりきったことを、しかし、政府も財界も、無反省に繰り返そうとしている。
いや、むしろそれを強化しようと奔走している人たちが、「成長戦略」などという言葉とともに政界に跋扈している様をみていると、暗澹とする。
日本社会は、これから更にその衰退の度合いを増していかざるを得ないだろう。
それは、経済成長が何%であるとか、中国に追い抜かれるとか、そういう次元の話ではない。
「人間らしく」生き、働くことのできない社会に、どのような希望があるというのだろうか。
その基本すら成しえなくなってしまった日本社会に、この希望難き時代の危機を私は見る。
集会の様子
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