五一 尋問
怖氣蒸す罪呼び居(ゐ)て驚ける音を踏む威や逢ふ血へ底搖れぬ世
皇太子尋問せられたまへると報ぜりかつての妃がゆゑに
巴里路地の朝を何罠めぐらすや微笑み今も越え得ぬ音祕め
おそけむすつみよひゐておとろけるねをふむゐやあふちへそこゆれぬよくわうたいししんもんせられたまへるとはうせりかつてのきさきかゆゑにはりろちのあさをなにわなめくらすやほほゑみいまもこええぬねひめ
五二 年の瀬
あとさきも見ぬ間に年の瀬を迎へいづべに君はゆかん世の間を
愛飢ゑ聲干割れる空立居袖嬲り親なく結ふ似非睨め
潮騒も凍れる果やたむろ透く襟分け負ひつよろけ寝ぬらめ
あとさきもみぬまにとしのせをむかへいつへにきみはゆかんよのまをあいうゑこゑひわれるそらたちゐそてなふりおやなくゆふうんすちえせねめしほさゐもこほれるはてやたむろすくえりわけおひつよろけねぬらめ
五三 地下街
地下街を鳩の安らに遊びゐてテロルおそれん兆しだになき
冬ほの寒く明けはづみゐる地へ拔けゆく我らを割り棲む眼靄り笑め
心寄せ歌ひ問ふ常笑まん音も癒えぬ身おほへ似非世生まじな
ちかかいをはとのやすらにあそひゐててろるおそれんきさしたになきふゆほのさむくあけはつみゐるちへぬけゆくわれらをわりすむめもやりゑめこころよせうたひとふつねゑまんねもいえぬみおほへえせようましな
五四 寵姫 カトリーヌ・ド・メディシス
妬み狂はせ在す國母威に渇ける末に堪へ拔かん八重夢魔醒め
褥より轉げ落ちなほむつみあふ寵姫と王をさし覗き居て
愛冷えて呪ひ映えぬれ搖り搖られおもふ空瀬をなほ止めん繪圖
ねたみくるはせいますこくもゐにかわけるすゑにたへぬかんやへむまさめしとねよりころけおちなほむつみあふちようきとわうをさしのそきゐてあいひえてのろひはえぬれゆりゆられおもふそらせをなほやめんゑつ
五五 青髭
ユディット怖れ越え得ぬ朝寝間に弱り充たせぬ本音やうべやゐん世
青髭の渡せる鍵にひらかれしめくるめく室血糊綺ふを
花々も血ゆゑ咲き笑む洞底へ湖も縅して臥す魔告げゐず
ゆていつとおそれこええぬあさねまによわりみたせぬほんねやうへやゐんよあをひけのわたせるかきにひらかれしめくるめくむろちのりいろふをはなはなもちゆゑさきゑむほらそこへうみもおとしてふすまつけゐす
五六 みづからを
みづからをいやしめやまぬ國歩み棹差す時にものむなしめる
くつろぎて所以ぞ据ゑん凍りたる池へうち越え迷ふたむろも
泡瀬這ひ遊びゐて侘ぶれば智慧練られ威失せ唱へ置けぬおほよその理
みつからをいやしめやまぬくにあゆみさをさすときにものむなしめるくつろきてゆえんそすゑんこほりたるいけへうちこえまよふたむろもあわせはひあそひゐてわふれはちゑねられゐうせとなへおけぬおほよそのり
五七 つきぬよ
盡きぬ世の憂ひひろげて聲もなく死にゆくかげをいろどれる夢
銀杏葉の散り埋む地も團欒過ぎ聲あやまたぬ空居追はせん
似非業を寝押す音撰り笑へ耳に觸るあやかし細め經ん穗よ定むな
つきぬよのうれひひろけてこゑもなくしにゆくかけをいろとれるゆめいてふはのちりうつむちもまとゐすきこゑあやまたぬそらゐおはせんえせわさをねおすねえりわらへみみにふるあやかしほそめへんほよさたむな
五八 街影
街影にくちづけあへる若きらをたまゆらにみて過ぎむ一生ぞ
われもやうやく老いしれなんとしてねもころたぬしみゐる眼夕日よ音失せり
映え冴えつ愛醉ふ頬を据ゑん頃名のり添はせむおさへゐぬ瞳の
まちかけにくちつけあへるわかきらをたくゆらにみてすきむひとよそわれもやうやくおいしれなんとしてねもころたぬしみゐるめゆふひよねうせりはえさえつあいゑふほほをすゑんころなのりそはせむおさへゐぬめの
五九 返り咲き
返り咲く櫻の花を見んとして小春の中をそぞろ歩める
聲もせで滅びゐむ世へ杖曳けや忘れ得ぬ夢撰らせ縫ふ泡
憂き意思優に道恩重れ、眞帆に妬む千船宿り便り枉げずゐつ
かへりさくさくらのはなをみんとしてこはるのなかをそそろあゆめるこゑもせてほろひゐむよへつゑひけやわすれえぬゆめえらせぬふあわうきいしいうにみちおんおもれまほにねたむちふねやとりたよりまけすゐつ
六〇 にぎたま
和魂を炭櫃に寝せて痴れあそぶ聲醒め得ねばなほさまよへる
盈虧けのともすれば行方も見えぬ位置取り呪ふ池凍りゐぬ
描き褪せたる空湧く同じ夢うやむや帶び紡む世を異論割らん腕
にきたまをすひつにねせてしれあそふこゑさめえねはなほさまよへるみちかけのともすれはゆくへもみえぬゐちとりのろふいけこほりゐぬゑかきあせたるそらわくおなしゆめうやむやおひつむよをいろんわらんうて