四一 新冬
鈴懸の葉やたゆたひつ落ち積めるものあらそはぬ新冬にゐて
無理なく愛縁おさへゐん身嘆く眼や。音群れ得し地へ失せし身頬笑ませて
若き世も遠去りぬるを君と我心音色を植ゑ迷ふ空
すすかけのはやたゆたひつおちつめるものあらそはぬにひふゆにゐてむりなくあいえんおさへゐんみなけくめやねむれえしちへほゑませてわかきよもとほさりぬるをきみとわれこころねいろをうゑまよふそら
四二 決まりごと
絡みつく遠つ代よりの決まりごと狎れ嬲れる日冬に入る喪屋
論果てぬ位置故に眼褪せず枝あやせ 有無背け置く削げし王墓等
魂を嵌めて末の地値ごろおもへ癒えぬ渇きを支へ居ん峰
からみつくとほつよよりのきまりことなれなふれるひふゆにいるもやろんはてぬゐちゆゑにめあせすえたあやせうむそむけおくそけしわうほらたましひをはめてすゑのちねころおもへいえぬかわきをささへゐんみね
四三 發禁 湯浅眞砂子氏「秘帳」再刊に寄せ
發禁の語も今更に笑まはしく肉愛詠みて折り目正しき
朧世世話負ひ打ち消せど捨てぬ室有爲路寝ぬ夕鮎舐め反れり
閨聲を洩らすさへ罪なへる世の遠そけるかや艶枯れ冷えむ面
はつきんのこもいまさらにゑまはしくにくあいよみてをりめたたしきおほろせわおひうちけらせとすてぬむろうゐちねぬゆふあゆなめそれりねやこゑをもらすさへつみなへるよのとほそけるかやえんかれひえむおも
四四 模倣犯
模倣犯いたいけし女兒殺め棄つ手口の巧を競ふがごとく
やりきれぬ世故に反吐する朝。見えぬ情けを割る非違。まだら褒め頃
似非眞似の揃ひ踏む音も見ん寺居杖へ無理むり)押せ大搖れ罠に
もはうはんいたいけしちよしあやめすつてくちのかうをきそふかことくやりきれぬよゆゑにへとするあさみえぬなさけをわるひゐまたらほめころえせまねのそろひふむねもみんてらゐつゑへむりおせおほゆれわなに
四五 ふるさとの
ふるさとの空を離れて襟寒き今の身故に聲かすれつつ
と侘び居て詠めば女眸寄せ潮靄浮き得ぬ寝頃へあやせる胸
ぬくめりし明日邊行く空面おほひ色形わけ今日に立ちゐん
ふるさとのそらをはなれていろさむきいまのみゆゑにこゑかすれつつとわひゐてよめはをんなまみよせうしほもやうきえぬねころへあやせるむねぬくめりしあすへゆくそらおもおほひいろかたちわけけふにたちゐん
四六 燠火
燠火掻く女の頬照り暮れゆかむ年にえ堪へで抱き寝ぬるや
圍炉裏に寄れる聲小さ氣の過ち侘ぶらんなほも現し瀬へ見つゐめ
虚音受け冴え搖す聲を迷ふ色見ぬ目おもはむ問はす泡瀬ぞ
おきひかくをみなのほてりくれゆかむとしにえたへていたきねぬるやゐろりによれるこゑちひさけのあやまちわふらんなほもうつしせへみつゐめそらねうけさえゆすこゑをまよふいろみぬめおもはむとはすあわせそ
四七 襟巻に寄する戀
襟巻をなぶらす風に後れ毛のはつかに見えて愛ぐし娘ろはも
思ひ出のみ甘きを射ん世や年經ぬる空居寄せん聲やなほ憂けれ
尋ね添ふ路地忘る夢笑む頬訪ひい寝ぬ憂さ堪へ搖りゐむ幸泡
えりまきをなふらせすかせにおくれけのはつかにみえてめくしころはもおもひてのみあまきをいんよやとしへぬるそらゐよせんこゑやなほうけれたつねそふろちわするゆめゑむほとひいねぬうさたへゆりゐむさちあわ
四八 納經
金泥の經を傳へて根絶やされし一族をおもふ炉開きの頃
娘粥煮る朝餉、涅槃思はする藍染襟ゆゑ馴れ拔く罪
なほ癒えぬ血沸く一生へ細り笑む道に團欒し瀬瀬分け迷ふ
こんていのきやうをつたへてねたやされしうからをおもふろひらきのころむすめかゆにるあさけねはんおもはするあゐそめえりゆゑなれぬくつみなほいえぬちわくひとよへほそりゑむみちにまとゐしせせわけまよふ
四九 發注ミス
聲せず見ゆる夢魔同じ繪を誘はせ御世や袖ほぼ消入り居て無知負ひ
入れ違ふ數と値段にふためける相場笑へど籤賣の前
泡の世を切れ得ぬ縁に繋ぎ合ひ居づらくこねぬ夢や諸々
こゑせすみゆるむまおなしゑをさそはせみよやそてほほけいりゐてむちおひいれちかふかすとねたんにふためけるさうはわらへとくしうりのまへあわのよをきれえぬえんにつなきあひゐつらくこねぬゆめやもろもろ
五〇 歌聲
生きゐん我々悩み治せで働ける故萎えぬ願ひを添へてるや
驛路地の寒さにめげぬ歌聲へ拍手送りつものこほしむも
夜すがらを明眸色うつりよそほふ眼褪せねど惑ひ追ふ明日に居ん
いきゐるわれわれなやみちせてはたらけるゆゑなえぬねかひをそへてんやえきろちのさむさにめけぬうたこゑへはくしゆおくりつものこほしむもよすからをまみいろうつりよそほふめあせねとまとひおふあすにゐん