九一 蛇齒 カドモス
浮雲に失せぬる娘の行方尋めて根無き宿りも定め得ぬ末
忘れ經し空越え居ん地を搖りあげて我なほ笑む世そを落ち居寝ん
大蛇の齒蒔けば生ひ出る鎧武者いがみあふ間にみづから滅ぶ瀬
うきくもにうせぬるこのゆくへとめてねなきやとりもさためえぬすゑわすれへしそらこえゐんちをゆりあけてわれなほゑむよそをおちゐねんたいしやのはまけはおひつるよろひむさいかみあふまにみつからほろふせ
九二 テロ後
テロ後平和の夢醒め今や覺えあまねく踏む罠避けん智慧綾得ぬ
人集ふそこかしくにてその姿見張られつゐる世になれるらし
倦む炉負ひ浮世束ねん域据ゑぬ道を競りゆけ百瀬を濠へ
てろこへいわのゆめさめいまやおほえあまねくふむわなさけんちゑあやえぬひとつとふそこかしくにてそのすかたみはられつゐるよになれるらしうむろおひうきよたはねんゐきすゑぬみちをせりゆけももせをほりへ
九三 肌へ
帶解けて息づく肌へ眞おもにしあなかなしよと身をかさねつる
心もそらに分け入れば娘枕へ身寄せ絢笑む
たぎりゆる船ゆゑ炎えぞ冷えぬ有漏路魚濡れ責めゐん淵洲の
弱照りゐん鞘
おひとけていきつくはたへまおもにしあなかなしよとみをかさねつるこころもそらにわけいれはむすめまくらへみよせあやゑむたきりゆるふねゆゑほのほえそひえぬうろちをぬれせめゐんふちすのよわてりゐんさや
九四 默示
もとほれる世のさま語りかへらんとせしをいななきさへぐ蒼馬
天の火に炭櫃籠めけむけむりだち罪赦し得ぬ世ぞ燃え行く炉
聲貫き襲ふ寺居に忘れ色おほふ屋根は身泡醉はせ閨撃ちゐめ
もとほれるよのさまかたりかへらむとせしをいななきさへくあをうまてんのひにすひつこめけむけむりたちつみゆるしえぬよそもえゆくろこゑぬきおそふてらゐにわすれいろおほふやねはみあわゑはせねやうちゐめ
九五 看取り
たらちねの寝息安らに獨り添ふ看取りの筵風ぞ越えゆく
絶えぬ苦負はされ何よきも見ぬ世ゆゑせめて別れ路笑まふ名を醒め居ん
朧經し今へもつるる綾合ひて分け植う蓮を鉾向け居ん津
たらちねのねいきやすらにひとりそふみとりのむしろかせそこえゆくたえぬくおはされなによきもみぬよゆゑせめてわかれちゑまふなをさめゐんおほろへしいまをもつるるあやあひてわけううはすをほこむけゐんつ
九六 別れ * 法名「蓮室清涼信女」
痴れ疼き身悶え居ぬる日に植ゑやらん音も血を與(へておどけ細み氣
幸つひに縁なく經しを赦せ母今や別れの空根責め居て
飽かぬ夢むさぼりなぶり弱む聲厭ふ世過ぎの幕降ろす頃
しれうつきみもたえゐぬるねにうゑやらんねもちをあたへておとけほそみけさちつひにえんなくへしをゆるせははいまやわかれのそらねせめゐてあかぬゆめむさほりなふりよわむこゑいとふよすきのまくおろすころ