六一 鳩に寄する戀
獨り撒く豆のめぐりに鳩寄せて寄らぬ面わぞなほし思ほゆ
ねぢけ住む身の憂きつれづれを見据ゑ居て若き日らを文色褪せ得ぬ日や
音倦む聲たそがるる邊に乳房搖し頃得んなさけ塔へいや居ん
ねちけすむみのうきつれつれみすゑゐてわかきひらをあいろあせえぬひはやひとりまくまめのめくりにはとよせてよらぬおもわそなほしおもほゆねすむこゑたそかるるへにちふさゆしころえんなさけたふへいやゐん
六二 うぶやたて
國のゆく末うれへ詠むこころ
産屋立てはかどらぬ世を喪屋つとめいがみ爭ひなほ眼にあまる
大君の日嗣おもへば忘れ得ぬ災招ける地癒えて居させん
思惟眠氣理路伏せ智慧を灘損じ
くにのゆくすゑうれへよむこころうふやたてはかとらぬよをもやつとめいかみあらそひなほめにあまるおほきみのひつきおもへはわすれえぬわさまねけるちいえてゐさせんしゆゐねむりろふせちゑをなたそんし
六三 無罪 マイケルジャクソン氏
少年虐待疑惑の歌手無罪獲ち得ぬれど
負債なほ數へ得ぬまま世の人をもてなさん歌聲は弱むや
あけすけに遊べる空居笑みゆるめ懲りず誑れる身(罪醉ふ諸路
胃を手おほへねぱ
せうねんきやくたいきわくのかしゆむさいかちえぬれとおひめなほかそへえぬままよのひとをもてなさんたこゑはよわむやあけすけにあそへるそらゐゑみゆるめこりすふれるめつみゑふもろちゐをておほへねは
六四 「裸身の月」
まつぶさに眺めてかなし月こそはまたき裸身と思ひいたりぬ
あはれ氣ほの匂へる音へ和せんと我あふぐ峰末を夜雲消居て
うち越えむ身ぞいや冴えぬ廣世野良を降り居澄む故夢せる有漏路や
まつふさになかめてかなしつきこそはまたきらしんとおもひいたりぬあはれけほのにほへるねへわせんとわれあふくみねすゑをよくもけゐてうちこえむみそいやさえぬひろよのらをおりゐすむゆゑゆめせるうろちや
有漏路 漏泄ある路 漏は煩悩の義世俗の凡夫の称 対語 無漏路 出家者の道
* 裸身の月一首は水原紫苑氏の作
六五 くづれ
浦上四番崩れおもふ
世に祕めつ護る宗旨の露はれて流刑(になりぬ一ト里なべて
今や主を讃ふ聲聲掻き消えぬ峰路分け居む夢のロザリオ
巣組む有爲路秀褪せ得ず そぞろ八百音和せ
うらかみよんはんくつれおもふよにひめつまもるをしへのあらはれてるけいになりぬひとさとなへていまやしゆをたたふこゑこゑかききえぬみねちわけゐむゆめのろさりおすくむうゐちほあせえすそそろやほねわせ
六六 あめたひらぎ
五衰の氣あらはなりし世へ
天平らぎ地成る世やや倦める氣の日を癒えしむと歌ごゑ送れ
ほほ笑みも常得ぬ峰ゆ色騒げ枯れぬ和を添へかすむ手おぼろ
國間袖漏り舞ふ戸に韻結はさせんよ
こすゐのきあらはなりしちへあめたひらきつちなるよややうめるけのひをいえしむとうたこゑおくれほほゑみもつねえぬみねゆいろさわけかれぬわをそへかすむておほろくにまそてもりまふせとにゐんゆはさせんよ
六七 めをとわかれ
おほよそ祕めぬ空もうなぢ搖りて縁失せおほはせなほや露寄りすずろ
夫婦今別れんとしてさしむかふさ青き罫の書載る机
君や我にくむにあらね立ち居醉ひ招ける心居も耐へ得ねば
おほよそひめぬそらもうなちゆりてえんうせおほはせなほやつゆよりすすろめをといまわかれんとしてさしむかふさあをきけいのふみのるつくゑきみやわれにくむにあらねたちゐゑひまねけるこころゐもたへえねは
六八 倫敦塔 ジェーン グレイ
女王にてゐし九日も夢なれや今首打たす倫敦塔に
と君詠めば刑吏和し
ゆるされて斧振り下ろす刹那さへ護らせ神や胸抉る威を
榮えおほへぬ杖ぞ嗚呼骨拔け冷えむ地
ちよわうにてゐしここのかもゆめなれやいまくひうたすろんとんたふにときみよめはけいりわしゆるされてをのふりおろすせつなさへまもらせかみやむねゑくるゐをはえおほへぬつゑああほねぬけひえむち
六九 斷頭臺
ああ自由その名の下に首を猶刈りをさむるや斷頭臺に
ロラン女史が聲は大鼓もて消(け)され、テロ行く巴里、空邊冷え居ぬ。
招き醉ふ血や饐え忘れせぬ音寄せおめき分け居む御前戀ふる夢
ああしいうそのなのもとにくひをなほかりをさむるやたんとうたいにろらんちよしかこゑはおほつつみもてけされてろゆくはりそらへひえゐぬまねきゑふちやすえわすれせぬねよせおめきわけゐむみまへこふるゆめ
* ロラン夫人(1754-1794) 「自由よ、汝の名のもとでなんと多くの罪が犯されたことか」
七〇 ハメルン
笛吹きに魅かれて子等の居なくなれる街に夜は來て色めく鼠
忘らえぬ夢魔常の世を差し越ゆや寺院へ路地へ杖曳けど見ぬ瀬
童話歌はむ瞳も大方本を漁り、愛重げ故そそり痩せ
ふえふきにひかれてこらのゐなくなれるまちによるはきていろめくねすみわすらえぬむまつねのよをさしこゆやしゐんへろちへつゑひけとみぬせとうわうたはむめもおほかたほんをあさりあいおもけゆゑそそりやせ