四一 あだしをとこ
馴染みかよふをんなの家にあだしをとこが氣配あれば
うち絶えて寝よともえせぬ空色へせきつゐぬるや思ほゆる末
君待ちて頬笑まふ胸の憂さ辛く我にぞ降り居夢頃分けり
品くさす眼病む
なしみかよふをんなのいへにあたしをとこかけはひあれはうちたえてねよともえせぬそらいろへせきつゐぬるやおもほゆるすゑきみまちてほゑまふむねのうさつらくわれにそおりゐゆめころわけりひんくさすめやむ
四二 かくしふみ
薄縁にしのばす書を見とがめてあなうき世ぞと燕さへづる
さても迷ひ深む縁に嫉ませし聲
面色の理得ぬ頃や掘らぬ井朽ち煙らせ居ん繪搖れくねる我
彩たゆむ大池日向路を
うすへりにしのはすふみをみとかめてあなうきよそとつはめさへつるさてもまよひふかきえんにそねませしこゑおもふいろわりえぬころやほらぬゐくちけむらせゐむゑゆれくねるわれあやたゆむおほいけひなたちを
四三 はなみづき
辛夷過ぎ花水木咲く街空を便りも得ねば日にのがす夢
と乙女詠み送るに
合歡燃えん空合ふ我をわたり居る紫陽花笑まんなほ色受けて
うつろひゆかしむ野邊家痩せぬ八百瀬聲拔け照れ
こふしすきはなみつきさくまちそらをたよりもえねはひにのかすゆめとおとめよみおくるにねむもえんそらわれわれをわたりゐるあちさゐゑまんなほいろうけてうつろひゆかしむのへいへやせぬやほせこゑぬけてれ
四四 いぬづれ
犬連れの人妻と逢ふ理無さよ女さげすみ經し身にも似ず
かくうろたへ迷ひ決めかねて保養地の空色仰ぐ
おもほえぬ契りゆゑ聲絶えゐるや分けし音醉はせ空音經ん果て
群れを超え押せ
いぬつれのひとつまとあふわりなさよをんなさけすみへしみにもにすかくうろたへまよひきめかねてほやうのちのそらいろあふくおもほえぬちきりゆゑこゑたえゐるやわけしねゑはせそらねへんはて
四五 くびわ
少女を首輪につなぎ飼へる男捕はれて
露の世に怯え寝なんも思ほえず夢魔忘れせぬ室邊鎖し居て
笑み招く聲ぞただ夢うち拔きのあやめあばらけかざし居ん身や
色殺げ屠りいふ理路
せうちよをくひわにつなきかへるをとことらはれてつゆのよにおひえねなんもおもほえすむまわすれせぬむろとさしゐてゑみまねくこゑそたたゆめうちぬきのあやめあはらけかさしゐんみやいろそけほふりいふりろ
四六 ほととぎす
女戀ひ待ちゐて詠める
いつの間にほととぎす聞く空の下行方知られぬおもひをぞする
藤棚へ影負ふ頃に本讀みゐめ癒えぬ胸故うつろさわがせ
絢植ゑむ峰映えてあはれ森蒸せさわやげり
をんなこひまちゐてよめるいつのまにほとときすきくそらのしたゆくへしられぬおもひをそするふちたなへかけおふころにほんよみゐめいえぬむねゆゑうつろさわかせあやうゑむねはえてもりむせあはれさわやけり
四七 おちぐし
蘇芳咲く道に落ち櫛ひろひもつわれ故あやな齋垣掛け居ん
と忘れごろ便りして女より杣へ聲
身も空に局胸憂き部屋ゆ今日癒えぬ間噎せぬ沙汰おぼえ果て
逢ふを責めぬ野の眼らゐるを
すはうさくみちにおちくしひろひもつわれゆゑあやないかきかけゐんとわすれころたよりしてをんなよりそまへこゑみもそらにつほねむねうきへやゆけふいえぬまむせんさたおほえはてあふをせめぬののめらゐるを
四八 逃避行
四方山空路貫く地を宛得ぬ瀬へ歩ませつ
國境ふ湖を夜漕ぎ逃げ入りし孕める妹は産み得ずて死す
誰が爲の響きとどむや院院へ聲告げ眠れ滅ぶ我ゆゑ
朧名乘りに名捺さね
よもやまそらちぬくちをあてえぬせへあゆませつくにさかふうみをよるこきわけいりしはらめるいもはうみえすてしすたかためのひひきととむやゐんゐんへこゑつけねむれほろふわれゆゑおほあなのりなにそおろさね
四九 はまなす
濱茄子の咲ける砂地に越せし書そとかくしゐておもひわづらふ
と姫より便り得ぬれば菖蒲寝憂き地へやをら手桶汲ませ搖る日本
思ほえぬ災こそ到れ君故の常ゐむ室へ文色植ゑんか
はまなすのさけるすなちにこせしふみそとかくしゐておもひわつらふとひめよりたよりえぬれはあやめねうきちへやをらてをけくませゆるにほんおもほえぬわさこそいたれきみゆゑのつねゐむむろへあいろうゑんか
五〇 おもひで
少年の日遠きに胸とよむ聲咲くらん 今にその夢結ふげ爲す詩
愛だれし面汗ばみてみつめゐし夏高原へかぎろへる雲
越え拔けて笛醉ひ寄れる大山路輪をなす谷地を割りゐさす洞
せうねんのひとほきにむねとよむこゑさくらんいまにそのゆめゆふけなすしあいたれしおもあせはみてみつめゐしなつたかはらにかきろへるくもこえぬけてふえゑひよれるおほやまちわをなすやちをわりゐさすうろ

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