二一 人待つ梅
梅のやうやく盛りに向かふ頃ほひ待てど來ぬを侘び居て
君のため手折らまく得し枝にもなほ願ぎ合はせゐんあへぬ我ゆゑ
峰色ゆ千重續ける世空路知り思ふ世恐れふせ末射ん情け
うめのやうやくさかりにむかはむとするころほひまてとこぬをわひゐてきみのためたをらまくえしえにもなほねきあはせゐんあへぬわれゆゑみねいろゆちへつつけるよそらちしりおもふよおそれふせすゑいんなさけ
二二 こまち
小町老ゆらむ日を過ごせしと聞けるもむなし縁
奧ふかきいはほの山の洞にゐてありつる眉目を描く朝夜べ
常得ねば渡す夢さへ濡れ馴れぬ立ち居に醉ふ頬分けん八十瀬よ
諸袖の色占生み
こまちおゆらむひをすこせしときけるもむなしえんおくふかきいはほのやまのほらにゐてありつるみめをゑかくあさよへつねえねはわたすゆめさへぬれなれぬたちゐにゑふほわけんやそせよもろそてのいろうらうみ
二三 ことのね
琴搖し按ずる面にみぐしみだれかくるもいとなまめきておぼゆれ
うつろ世にねびまさりけむ末をさへ眺め褪せぬをのこりゐむ世や
胸あてつ笛和せ童や宴醉そぞろ洞ぬき野へゐん父は
面癒えぬ
ことゆしあんするおもにみくしみたれかくるもいとなまめきておほゆれうつろよにるねひまさりけむすゑをさへなかめあせぬをのこりゐむよやむねあてつふえわせわらへやうたけゑひそそろほらぬきのへゐんちちはおもいえぬ
二四 とりくもに
鳥雲に入れば芽吹きの進む野に君がかげをばたづねさまよふ
妻失へるをとこ詠むこゑなほ侘びぬ
大空路諸音湧く色見居て得ん絶えぬ嵐へ和ゆる日や照り
祖眼ぞ照りゐん瀬ゆゑうち消され
とりくもにいれはめふきのすすむのにきみかかけをはたつねさまよふつまうしなへるをとこよむこゑなほわひぬおほそらちもろねわくいろみゐてえんたえぬあらしへあゆるひやてりおやめそゐんせせゆゑうちけされ
二五 やまとうた
いくさ敗れし世のみだれに付け入りてやまとうたのもとゐ歪めらるるも
大海を越えてひろめむ聲若くおほはむ天路願ぎ寄せん繪ぞ
萎えぬ根を結ばせ明日へ結ふ名貫け理路さわぎゐし日地空邊に
いくさやふれしよのみたれにつけいりてやまとうたのもとゐゆかめらるるもおほうみをこえてひろめむこゑわわかくおほはむあまちへねきよせんゑそなえぬねをむすはせんあすへゆふなぬけりろさわきゐしひつちそらま
二六 わかなつむ
若菜摘む野邊降る露に濡れし袖君が袂を待ちて干さなむ
と契り置ける娘便りあれば
彌生空越えひろめみん美し聲朧浮けいや藍末映えぬ
丹船練らせ涌井の瀬を家草燃ゆ
わかなつむのへふるつゆにぬれしそてきみかたもとをまちてほさなむとちきりおけるむすめたよりあれはやよひそらこえひろめみんうましこゑおほろうけいやあゐすゑはえぬにふねねらせわくゐのせをいへくさもゆ
二七 伴天連
いとたふとき伴天連の長老い病み歸天の期迫れば
羅馬なる廣路を埋めつこひねがふ繪ぞ海渡り嘆かへる空
潮騒も萌え進む地に告げ居むやゆゆし世和せり和えぬ世に笑め
洞明く音拭へ
いとたふときはてれんのをさおいやみきてんのこせまれはろおまなるひろちをうめつこひねかふゑそうみわたりなけかへるそらしほさゐももえすすむちにつけゐむやゆゆしよわせりあえぬよにゑめほらあくねぬくへ
* ローマ法王ヨハネパウロ二世2005/4/2歸天
二八 雉子
雉子ほろほろと馬堤に鳴けばありしおもかげおもひ涙をあらためり
うちこらへ呼びかふ命常得ねど聲寄せ傳てん我誘ふ堰に
水沼瀬のやうやく温む冴え添へん末ゆゆしまめ我くるむ井を
ききすほろほろとはていになけはありしおもかけおもひなみたをあらためりうちこらへよひかふいのちつねえねとこゑよせつてんわれさそふゐにみぬませのやうやくぬるむさえそへんすゑゆゆしまめわれくるむゐを
二九 歌比丘尼
歌比丘尼と契りしどけなきさまにゐる筵をやをらあばかれさても
結縁の行なひはめて抉らせつそぞろ罪負ふ我や水沼へ
去ぬる世々委ね臥す頬故わが庵もうねり居む眼の越えん明日瀬へ
うたひくにとちきりしとけなきさまにゐるむしろをやをらあはかれさてもけちえんのおこなひはめてゑくらせつそそろつみおふわれやみぬまへいぬるよよゆたねふすほゆゑわかいほもうねりゐむめのこえんあすせへ
三〇 やきうち
唐にてわか國の商人燒き打ちせらる繪送り越せば
妬む聲襲ひ居むはてすさびあふまなじり燃えつ世々すさめ破れ
わたつみへけふをゆゆしみ解けぬ謎色倦まぬ野へほぼ芽も折れ居め
色得ん地
からにてわかくにのあきんとやきうちせらるるゑおくりこせはねたむこゑおそひゐむはてすさひあふまなしりもえつよよすさめやれわたつみへけふをゆゆしみとけぬなそいろすまぬのへほほねもをりゐめいろえんち